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ボルドーにはメドックやグラーヴを含む5つの代表的な地区がありますが、ポムロ―ルはその中でも一番小さな地区となっています。
ドルドーニュ川の右岸に位置し、ブドウ畑の面積は約800haと他の地区に比べて小さいことが特徴です。
一方で、その面積の小ささに反して数多くの著名なシャトーを有しており、フランス最高峰のワイン銘醸地の一つとして知られています。

(※シャトーとは、ブドウ栽培から瓶詰に至るまでを一貫して行う生産者のことです。)

ポムロール地区の中で一番著名なシャトーといえば、「シャトー・ペトリュス」でしょう。
シャトー・ペトリュスはメドック格付けで格付けされていないシャトーであるものの、ボルドーにおいて最高価格のワインを造るシャトーです。
約11haという小さめの畑で丁寧に造られたメルローは熟成向けの複雑なワインに仕上がり、その絹のような果実味は極上の逸品として知られています。
ファーストラベルのみを生産しており生産量自体が少ないため、メドック格付け1級である5大シャトーのワインよりも高値で取引されており、新しいヴィンテージでも1本数十万円は下りません。
入手は争奪戦で市場に出る事は少なく気軽に購入できるワインではありませんが、ワイン通であれば一生に一度は飲んでみたいと願う垂涎の品です。

(※メドック格付けとは、1855年に実施されたメドックのワインの格付けのことです。
ナポレオン3世の要請によってパリ万国博覧会で行われ、著名なシャトーが第1級～第5級の5段階に格付けされました。)

そして、もう一つ外せないのが「シャトー・ル・パン」でしょう。
シャトー・ル・パンは、ポムロールの丘の中心に位置するシャトーです。
ファーストヴィンテージが1979年と歴史が浅いにも関わらず、有名ワイン評論家ロバート・パーカーから満点の評価を獲得したことで一躍人気を集めました。
年間生産量がわずか7000～8000本ということも相まって希少価値が高まり、シャトー・ペトリュスと同じく価格が高騰しているワインです。

このように、世界的な著名シャトーを擁するポムロ―ルですが、実はメドック格付けシャトーが一つもありません。
なぜなら格付け当時、ポムロールは小さな地域ということもあってあまり評価されていなかったからです。
ですが現在においては、偉大なボルドーワインを生産するボルドーきっての銘醸地として、世界的に評価が高まっています。

次に、土地的な特徴について見ていきましょう。
ポムロールはボルドーの他の地区と同じく、海洋性気候です。
冬は穏やかですが、夏は暑くて湿度が高くなるという特徴を持っています。
ボルドーの中では温暖なエリアということもあり、早熟タイプのメルローの栽培に適していると言えるでしょう。

また、ポムロールは粘土質、砂利質、砂質と多様な土壌が特徴です。
東側のサン・テミリオンに近づくに連れて粘土質が多くなり、さらにその下には「クラス・ド・フェール(酸化鉄)」が広がっています。
小さな地区であってもこのように異なる土壌があるため、様々な個性を持つワインが生産されているのです。
さらにボルドーの他地域とは土壌だけでなく歴史的背景も異なるため、同じボルドーワインでも明確な違いが見られます。

そんな多様な土壌を持つポムロールで有名なのは、やはりメルロー主体の赤ワインでしょう。
メルローをメインにカベルネ・フランがブレンドされることで、口当たりの柔らかいコクのある味わいが生まれます。
さらにアルコール分が高いことから熟成にも向いており、特に良質のものになると30年は耐えられる長寿タイプのワインもあります。
ポムロールにあるシャトーは規模が小さく生産量も少なめですが、全体的な品質水準では極めて高い評価を受けているのです。

ポムロール地区の隣にある「ラランド・ド・ポムロール」も見逃せません。
ラランド・ド・ポムロール地区はポムロールと傾向が似ており、弟のような存在です。
ネアック村と合わせてAOCラランド・ド・ポムロールを形成しています。
こちらで造られるワインはポムロールと同じくメルローが主体で、しなやかでコクのある味わいが特徴です。
ポムロールで言うところのシャトー・ペトリュスのような著名なシャトーがないため、知名度が低いエリアと言えます。
しかし、価格は比較的お手頃でコストパフォーマンスが高いワインを生産しているので、今後より評価が高まることが予想されるエリアです。

ポムロールのワインに主に使用されているブドウ品種は、「メルロー」、「カベルネ・フラン」です。
こちらでは、それぞれの品種の特徴をご説明いたします。

メルロー

ポムロールのワインの主体となるメルローは、世界的に人気の高い黒ブドウ品種の一つです。
早熟タイプであることから糖が上がりやすく、豊かな果実味とまろやかなコクをもたらします。
酸味、タンニンともに穏やかでソフトな印象があり、豊満で親しみやすい味わいのワインに仕上がります。

メルローは環境への適応力が高い品種ということもあって広く栽培されていますが、中でも栽培に適しているのはポムロールのテロワール(土壌や気候など、ブドウ畑を取り巻く環境のこと)です。
温暖な気候を好み、水分を定期的に必要とする品種のため、夏は暑く高湿で、粘土質の土壌を持つポムロールはまさに最適の産地。
栽培面積の約80％と大部分を占める主要品種であり、ポムロールはメルローの天国として知られています。

メルロー主体のワインは果実味が豊富で飲みやすさがあり、飲み頃も4～7年ほどと早めです。
上質なものでは30年も耐えると言われていますが、早い段階から楽しめる点もポムロールの魅力と言えるでしょう。

カベルネ・フラン

カベルネ・フランは世界中で広く栽培されている黒ブドウ品種ですが、栽培面積の約7割をフランスが占めています。
ポムロールでは栽培比率がメルロー約80％で、カベルネ・フランは残りのほとんどを占めています。
砂利質や粘土質の土壌を好むため、ポムロールのテロワールはカベルネ・フランの栽培に最適です。

メルローが主体ということもあり、カベルネ・フランは補助的な役割を持つ品種です。
ブドウ自体の特徴としては程よいタンニンと酸味があり、繊細な味わいが特徴で、しっかりとした骨格を与えます。
同じくフランスのロワール地方ではカベルネ・フラン100％のワインが造られていますが、ポムロールでは主にブレンド用として使用されています。

その他のブドウ品種

上記のブドウの他に、ポムロールでは「カベルネ・ソーヴィニヨン」も栽培されています。
栽培比率の大部分をメルローが占めており、その残りのほとんどがカベルネ・フランなので、カベルネ・ソーヴィニヨンの比率はほんのわずかです。

こちらでは、ポムロールのワインの購入を検討されているお客様に向けて、通販での選び方をご紹介いたします。
楽しみ方も併せてご紹介しますので、購入された際は是非お試しください。

ポムロールのワインの選び方

ポムロールはボルドーの中で最も小さい地区ですが、有名シャトーがいくつも存在します。
一つの選び方として、それぞれのシャトーの特徴を比較し、お好みの味わいのワインを選ぶと良いでしょう。
代表的なシャトーをいくつかご紹介しますので、是非こちらを参考にお選びください。

シャトー・デュ・ドメーヌ・ド・レグリーズ

まず一つ目は「シャトー・デュ・ドメーヌ・ド・レグリーズ」です。こちらは、メドック格付け5級のシャトー・バタイエなどを有するカステジャ家が所有しています。7haほどのブドウ畑を持つ歴史のあるシャトーです。
地下にある古い熟成庫が特徴で、地下にあることから常に温度を一定に保つことができるメリットがあります。
栽培品種はメルロー95％、カベルネ・フラン5％となっており、ポムロールの特徴であるメルロー主体の栽培比率です。

ブレンド比率はヴィンテージによって多少異なりますが、平均的にメルローが90％台、カベルネ・フランは数％程度。
こちらで造られているワインは、深いルビー色の外観を持ち、豊かな果実味とまろやかな味わいが特徴的です。

ヴィンテージについてはどうでしょうか。
ポムロール地区のワインは有名ワイン評論家ロバート・パーカーから「1990年代から目に見えて良くなっている」と評価されていることもあり、実力を重視するのであれば1990年以降のヴィンテージをおすすめします。
また、高品質でありながら5,000円以内で購入できるお手頃なところが魅力ですので、ポムロールのワインを気軽に試してみたいという方にもおすすめです。
ワインショップソムリエではポムロールの中から厳選したワインだけを取り扱っておりますので、ラインナップの中から安心してお選びいただけます。

シャトー・グランジュ・ヌーヴ

二つ目は「シャトー・グランジュ・ヌーヴ」。
こちらのシャトーは、19世紀の終わり頃からワイン造りを始めました。
1956年にブドウ畑を開拓しはじめ、徐々に拡大して現在所有している畑は7haです。

シャトー・グランジュ・ヌーヴが生産するワインの特徴は、メルロー100％だということ。
ポムロールはメルロー主体ではあるもののカベルネ・フランとブレンドされていることが多いのですが、こちらではほとんどのヴィンテージがメルロー100％で造られています。
また、シャトー・グランジュ・ヌーヴはクラス・ド・フェール(酸化鉄)混じりの粘土質で、メルローの栽培に適した土壌です。
上質なブドウで造られるワインは、力強くリッチな味わいで、エレガントさも感じられます。

ポムロールのテロワールを最大限に表現した味わいが、1万円以下の価格で購入できる点が魅力的と言えるでしょう。
メルロー100％のワインをお探しの方には是非おすすめしたいシャトーです。

シャトー・ネナン

三つ目は「シャトー・ネナン」。こちらは格付け2級シャトーとして有名な「レオヴィル・ラス・カーズ」を所有するデュロン家が経営しています。

ブドウ畑は25haとポムロールでトップクラスの広さを誇り、著名ワインコンサルタントのミッシェル・ローランのアドバイスを受けてからは品質が確実に向上したとの評判です。
栽培されているブドウ品種はメルロー80％、カベルネ・フラン20％となっています。

シャトー・ネナンのワインは、エレガントさを兼ね備えた力強い味わいが特徴です。
1997年にデュロン家が所有者となってから評価が格段に上がったとされているため、より高品質な味わいを求める方は、1997年以降のヴィンテージをおすすめします。

シャトー・ル・ゲイ

四つ目は「シャトー・ル・ゲイ」。こちらは、あのシャトー・ペトリュスに隣接する小さなシャトーです。
名門ペレ・ヴェルジェ家が所有しており、著名ワインコンサルタントのミッシェル・ローランや農学者のクジニエの協力のもと、丁寧なワイン造りが行われています。

砂利質と粘土質の土壌のブドウ畑では、80％のメルローと20％のカベルネ・フランが植えられています。
上質なブドウから造られるワインは、しなやかさと力強さのバランスが良く、凝縮感のある味わいです。

ポムロールのワインの楽しみ方

ポムロールはシャトー・ペトリュスなど著名なシャトーもありますが、その他にも素晴らしいワインを生産するシャトーがいくつもあります。
そのため、シャトー同士で飲み比べて味わいの比較をしてみても良いですし、ボルドー地方の他の地区のワインと飲み比べてみるのも面白いでしょう。

メルローが主体となっていることから飲み頃が4～7年と早めですので、是非飲み頃に合わせてお楽しみください。
その一方で、この地域の上質なメルローは30年ほどの熟成にも耐え熟成で真価を発揮すると言われていますので、高価格帯のワインはお好みの熟成度合いになるまで寝かせておくのもおすすめです。

力強くエレガントな味わいは、お料理と合わせることでお楽しみいただけるでしょう。
例えば、赤身肉のステーキや鶏の照り焼きなどの肉料理との相性が良好です。
また、チョコレートブラウニーにも合いますので、是非食後のデザートとして一緒にお楽しみください。

ボルドーの中で最も小さい地区でありながら、偉大なワインを生みだす醸造地として知られるポムロール。
メルロー主体のボルドーワインを好まれる方には、非常におすすめの地域となっています。
ポムロールならではの上品さと力強さを併せ持つリッチな味わいのワインを、是非この機会にご堪能ください。