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近年イギリスで造られるスパークリングワインが
世界的に注目を集めるようになりました。
その要因となったのが、地球温暖化による気候変動。
南部の産地はフランスのシャンパーニュ地方に似た土壌と気候を持つことから、
2000年以降に優れたスパークリングワインの生産が続き、
イギリスで生産されるワインの約7割がスパークリングワインとなっています。
そこで、本日はイギリスワインについてお話します。
イギリスワインの歴史
イギリスは、ヨーロッパはおろか世界各地のワイン産業の発展に貢献してきた歴史があります。
中でもフランス・ボルドーとの歴史的な関係は深く、
ボルドーの周辺地方アキテーヌは12世紀半ばから約300年間イギリス領となり、
イギリスへのワインの供給が拡大したことで、
ボルドーワインの産業が大きく発展しました。
その後、イギリスとフランスが対立したことにより、
イギリスは、スペインやポルトガルなどからワインを調達することになり、
そうした背景から、各地のワイン産業が発展していきます。
とくにポルトガルのポートワインは、
イギリスへワインを輸出する際に風味の劣化をおさえるため、
ワインにブランデーを加えたのが始まりという説もあります。
18世紀には、アーサー・フィリップ初代総督が率いる
イギリスの入植者がオーストラリアへ最初のブドウ樹が持ち込んだのが、
オーストラリアワインの始まりで、19世紀に入ってイギリスから渡った
ジェームズ・バズビーがオーストリアのハンター・ヴァレーでワイン造りを始め、
オーストラリアのワイン産業が発展していきました。
このように、イギリスは、世界のワイン産業の発展に大きな貢献をしており、
今日のワイン文化もワインの一大消費国であるイギリスがあってこそなのでしょう。
そんなイギリスですが、自国のワインの生産に関しては、
2018年の生産量は計1320万本と、世界的に見てかなり少量生産。
しかしながら、ワイン造りの歴史は古く、
11世紀にヨーロッパ大陸からワイン造りにたけた聖職者たちが移住してきたことで、
修道院でワイン造りがはじまりました。
その後、16世紀の宗教革命によってカトリックの修道院や教会が解体され、
それにともないワイン造りも廃れていきました。
また、イギリスはブドウが育ちにくい寒冷な気候ということも、
ワイン産業が発展しなかった要因の1つでした。
ところが近年、地球温暖化による影響で夏の昼夜の気温が上昇し、
イギリス南部でブドウの栽培可能地域が広がり、
1952年のころからはじまった商業用のブドウが一気に成長して、
現在は、ブドウ農家が500以上あり、ワイナリーも150か所あります。
イギリスワインの特徴
もともとフランスのシャンパーニュ地方に似た石灰質の土壌を持つことから、
2000年以降に優れたスパークリングワインの生産が続き、
イギリスで生産されるワインの約7割がスパークリングワインとなっています。
イギリスのスパークリングワインで使われているブドウ品種は、
1980年代までは、ミュラー・トゥルガウやバッカスなど寒冷地でも栽培できる
ドイツの交配品種がおもに使われていましたが、
現在は、シャンパーニュ地方のシャンパンと同じく、
シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエのブレンドがほとんどで、
製法も瓶内二次発酵で行なわれています。
イギリスのスパークリングワインの大きな特徴の1つが長期熟成で、
瓶内二次発酵のシャンパーニュ製法で造られたスパークリングワインを
本場のシャンパーニュではノンヴィンテージのものであれば、
15か月以上は熟成しなければいけないと法律で義務付けられていますが、
イギリスでは5年間熟成させる銘柄もあるほど、
少量生産で高品質なスパークリングワイン造りが行われています。
1997年に開催されたワインの国際コンクールで、
1988年にウエスト・サセックス州でアメリカ人の夫婦が設立したワイナリーの
スパークリングワインが金賞を受賞し、
イギリスワインが世界から脚光を浴びることとなりました。
そして翌年にも金賞を受賞し、
さらにインターナショナル・スパークリングワイン大賞も受賞するなど、
イギリスはスパークリングワインの高級産地として、一目を置かれるようになりました。
産地・ブドウ品種
もともとイギリスの中でも比較的温暖だった南部のケント州、
ウェスト・サセックス州などを中心にブドウ畑が広がっており、
土壌はシャンパーニュ地方に似た石灰質の土壌で形成されており、
スパークリングワインを造るのに適した産地です。
なかでも、ウエスト・サセックス州は、イギリスワインが世界的に注目を集める
きっかけとなったアメリカ人夫婦が経営するナイティンバーの畑がある所です。
フランスのシャンパーニュ地方と同じように、キンメリジャンという石灰質、
白亜質の土壌から成っており、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエなど
シャンパーニュ地方と同じ品種のブドウが栽培されています。
また、ロンドンの南東に位置するケント州も、石灰質土壌でシャンパーニュ地方と
似たような気候から、良質なスパークリングワインが造られており、
ワインコンテストでは金賞を受賞するなど、イギリスのワイン産地の中でも
評価の高いワインを造る優良な産地です。
おすすめワイン
ハッティングレイ・ヴァレー クラシック・レゼルヴ ブリュット
ハッティングレイ・ヴァレーは、イギリスのスパークリングワインメーカーとして
最大の契約数を持つワイナリーです。
弁護士として活躍したサイモン・ロビンソン氏が1999年にウィールドの地に
11ヘクタールの畑を購入し5年に及ぶ土壌研究を重ねた後、
2010年には醸造家のエマ・ライス氏とともに環境に配慮したワイナリー設立しました。
最新技術と設備や最先端のごみ処理施設を持ち、
イギリスのワイナリーとして初めて太陽光発電を取り入れています。
ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー受賞の女性醸造家が手掛ける
イングリッシュ・スパークリング。
平均樹齢10年のシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、ピノ・グリをブレンド。
心地よいイースト香をまとう熟成感漂うアロマに魅了されます。
産地:ウエストサセックス州
ボルニー・ブラン・ド・ブラン・ブリュット
ボルニー・ワイン・エステイトは、40年以上前から
イングランドのワイン造りに取り組んできたパイオニア的存在のワイナリーです。
畑は小石混じりの砂質土壌で南向きの斜面に広がり、
ブドウ造りに最適な環境で、バッカス、シャルドネ、ピノ・グリ、
ミュラー・トゥルガウ、ヴュルツァー、シェーンブルガーなどの品種を栽培しています。
気候がより温暖になったおかげで、黒ブドウ品種のピノ・ノワールや
メルローからも高品質な赤ワインが造られるようになりました。
イギリスワインのパイオニアとも言える醸造家サム・リンター氏が手掛けるワインは、
インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティションで最高位の賞に輝くなど、
多くの評価を得ています。
シャルドネ100%で造られるブラン・ド・ブランは、
フローラルなアロマをもち、流れるようなきめ細かい泡と美しい果実の余韻が楽しめます。
産地:ウエストサセックス州