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以前このソムリエ手帳で、ポルトガルの酒精強化ワインのポートワイン、
スペインの酒精強化ワインのシェリーをご紹介しましたが、
今回は、イタリアの酒精強化ワインのマルサラワインについてお話します。
マルサラワインについて
マルサラワインは、イタリアのシチリア島で1770年頃から造られる酒精強化ワインで、
1969年にDOCに認定されました。
酒精強化ワインとは「フォーティファイドワイン(アルコールで強化したワイン)」とも言い、
ワインを醸造する際に、アルコール発酵中にアルコール度数が高い蒸留酒を添加することで
糖分がアルコールに変換されるのが中断され、
ブドウ果汁の甘みをそのまま残しているため、
甘口ながらアルコール度数が15~22度にまで高めたワインのことです。
ポルトガルのポートワインとマデイラワイン、スペインのシェリーが世界3大酒精強化ワインと呼ばれ、
イタリアのマルサラワインを含めたものが世界4大酒精強化ワインと呼ばれています。
マルサラワインは1773年、イギリス人貿易商ジョンウッドハウスが、
シチリア西岸部の街マルサラでワインを飲んだ際、
当時イギリスですでに流行していたポートワインやマデイラワインに風味が似ていたため、
イギリスで売れるのではないかと考え、数ヶ月の航海でも腐らないようアルコール度数を高めたのが、
現在のマルサラワインの始まりとされています。
その後、しばらくはマルサラワインの市場はイギリス人によって独占されていましたが、
イタリア人の富豪ヴィンツェンツォ・フローリオ氏が1833年にフローリオ社を起業し、
マルサラワインに参入したことで、イタリア国内外にマルサラワインの知名度が広がり、
世界にも広まっていきました。
現在もフローリオ社はマルサラワインの造り手として第一線で活躍しています。
マルサラのテロワールについて
マルサラはシチリア島西部のトラーパニ県に位置しており、
溶岩土壌の豊富な日照量がある土地で、シチリア島内でも最もワインの生産量が多い地域です。
太陽の熱がとても強いため、しっかりとしたミネラル感のある糖度が高いブドウが出来上がります。
マルサラで栽培されるブドウ品種
マルサラでは、カタラットやグリッロといった品種が最も人気で、
芳香性の高いインツォリアなど、シチリアの固有品種が多く栽培されています。
マルサラワインの特徴
マルサラワインのもっとも大きな特徴は、木樽で熟成させた際におこる、
アミノカルボニル反応で出てくるアーモンドやカラメル、バニラ、
そして、強い木の香りなどの、豊かなアロマです。
また、種類も豊富で甘口から辛口、熟成年数によって呼び名が変わります。
ワインを醸造する上で起こるアルコール発酵をどの段階で止めるかにより、
甘口・辛口の違いが生まれます。
早い段階でアルコール発酵を止めて、ワインの中に含まれる糖分を残すと甘口になり、
完全に糖分がアルコールに変わってから、高アルコールのブランデーを添加すると、
辛口のマルサラワインになります。
辛口「セッコ(Secco)」残存糖分40g/L未満
半辛口「セミ・セッコ(Semi Secco)」残存糖分40 g~100g/L
甘口「ドルチェ(Dolce) 」残存糖分100g/L以上
また、マルサラワインは、熟成度合によっても名称が異なります。
フィーネ(Fine) 熟成年数1年
スペリオーレ(Speriore) 熟成年数2年
スペリオーレ・リゼルヴァ(Speriore Riserva)熟成年数4年
ヴェルジネ(Vergine)熟成年数5年
ヴェルジネ・ストラヴェッキオ(Vergine Stravecchio)熟成年数10年
そして、色によって大きく3種類に分けられており、
黄金色は「オーロ」、琥珀色は「アンブラ」、ルビー色は「ルビーノ」と呼ばれ、
ルビーノは黒ブドウ品種のペッリコーネ、ネロ・ダーヴォラ、
ネレッロ・マスカレーゼを使用します。
ティラミス作りにもマルサラワインは使われる!?
マルサラワインは、他の酒精強化ワインと同様食前酒としても食後酒としても楽しめます。
高いアルコール度数のため、食前酒として飲めば胃を刺激して食欲を増進させ、
食後酒として飲めば、消化を助けてくれます。
特に辛口のものは6~8℃ほどまでしっかりと冷やして食前酒として飲まれることが多く、
サラミやナッツ、オリーブの盛り合わせ、山羊のチーズなどの前菜と一緒に楽しまれています。
一方甘口のものは、チョコレート系のデザートなどと一緒に楽しむことが多いです。
辛口とは違い、甘口は18℃くらいの常温で飲むとマルサラワインの豊かなアロマを感じられます。
また、マルサラワインの魅力は飲むだけではなく、料理酒としても活躍します。
ティラミスを作るときの風味付けや、クラシックな鶏肉料理にも用いられます。