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前回のカンパーニア州に引き続き、イタリアワインシリーズといたしまして、
今回はイタリアの首都であるローマがあるラツィオ州のワインについてお話します。
古代ローマ時代から栄えてきた大都市ローマのあるラツィオでは、
どのようなワインの歴史があり、どのようなワインが造られているのか。
ラツィオ州について
イタリアの中央部に位置するワイン産地ラツィオは、
「すべての道はローマに通ず」のことわざにもあるローマを州都とし、
古代ローマ時代から栄えた大きな都市を持つ州です。
市内には、コロッセオやフォロ・ロマーノ、サン・ピエトロ大聖堂など、
誰もが一度はテレビや雑誌などで目にしたことがある有名な遺跡の数々が現存しており、
郊外にはオスティア・アンティーカの遺跡や水道橋、アッピア街道など、
現代と古代がそのまま共存する形で遺跡が残っています。
そんなラツィオのワイン造りの歴史はもちろん古く、
エトルリア人によって最初のブドウがもたらされてから、
ラツィオでのブドウ栽培とワイン造りがスタートしました。
ローマ帝国の初代皇帝であるアウグストゥス帝の時代には、
ここラツィオで造られる白ワインのフラスカーティは、多くのローマ人に愛され、
16世紀にはローマ法王であるパオロ三世も好んで飲んでいたと言われています。
1870年代、ローマが正式にイタリアの首都になりラツィオは全国的に有名になります。
長い歴史を持つラツィオのワインですが、早飲みできる軽快な味わいのタイプが多く生産されており、
生産されるワインの40%がバルクワインです。
しかし、この20年ほどでそのスタイルもだんだんと変化しており、
近年は、高品質なワイン造りにシフトする生産者も増えています。
ラツィオ州のテロワール
ラツィオ州は北西にトスカーナ州、南東にカンパーニア州に挟まれた州で、
イタリア半島のちょうど中央にあり、西はティレニア海に面しています。
州のほとんどが丘陵地帯で、火山の古い噴火口によってできた湖が多く点在しており、
豊かな火山性の土壌が広がっています。
気候は典型的な地中海性気候で雨が少なく温暖なため、ブドウ栽培に非常に適した環境で、
3つのDOCGと27のDOCアペラシオンがあります。
ラツィオ州で造られるブドウ品種
ラツィオ州では、マルヴァジア・デル・ラツィオと、トレッビアーノが主に栽培されており、
マルヴァジア・デル・ラツィオは、マルヴァジアの亜種でローマ周辺を中心に栽培されています。
地元ではマルヴァジア・プンティナータとも呼ばれており、
ブレンドに用いられることがもっとも多く、酸が強くキリっとした酸のあるワインを生み出します。
トレッビアーノは、イタリア全土で造られる白ワインの30%が
このトレッビアーノ系の品種から造られており、
DOCワインのうち80種以上にトレッビアーノ品種が使われています。
トレッビアーノとは、イタリアでの一般的な名称で、
主要なものは、トレッビアーノ・トスカーノ、トレッビアーノ・ロマニョーロ、
トレッビアーノ・ジャッロで、変種を含めると16のクローンがあります。
トレッビアーノ・ジャッロはラツィオ州で栽培されており、
カスチッソ・ロマーニ、モンテ・フィアスコーネなどの白ワイン用にブレンドされ、
辛口の中にわずかな甘味を感じるデリケートな味わいのワインにしあがります。
そのほか、ラツィオの固有品種である黒ブドウのチェザネーゼやネロ・ブオーノなどが
栽培され、ほとんどがブレンド用に使用されています。
また、近年では、フランスのブドウ品種であるカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、
シラー、カベルネ・フランから造られる「スーパー・ラツィオ」といわれる
「スーパー・トスカーナ」に類似したワインも登場してきています。
ラツィオ州で造られるワインの特徴
ラツィオ州で生産されるワインのじつに70%が白ワインで、
中でもラツィオを代表する2大白ワインが「フラスカーティ」と
「エスト!エスト!!エスト!!・ディ・モンテフィアスコーネ」です。
フラスカーティは、アルバーニ丘陵地帯で生産されており、
マルヴァジアとトレッビアーノを主体としたブレンドで、
グレープフルーツなどの柑橘系のアロマに、リンゴやアーモンドに白い花の香りのある、
ライトボディの軽快な味わいの辛口白ワインです。
通常のフラスカーティよりも長い熟成期間とアルコール度数のより厳しい規定のある
D.O.C.G.フラスカーティ・スペリオーレは、ふくよかな味わいになります。
甘口のD.O.C.G.カンネッリーノ・ディ・フラスカーティは、乾燥させて糖度を高める分、
琥珀色を帯びた濃い色調となり、味わいもよりコクのある甘味が感じれらます。
エスト!エスト!!エスト!!・ディ・モンテフィアスコーネは、
ラツィオ州北部のボルセーナ湖周辺で生産されており、
エスト(Est)とは、イタリア語で「ある」と言う意味で、
このエストを3回繰り返す変わったワイン名は、
昔、ドイツ人の司教がこの地のワインに大いに感銘を受け、
後から来る司教が素通りしないよう宿屋の入口に「エスト! エスト!! エスト!!!」
(ある!ある!ある!という意味)と書き残したという物語に由来しています。