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ブルゴーニュの神様といわれるフランス人醸造家アンリ・ジャイエ。
ロマネコンティ、リシュブール、コルトンシャルルマーニュ、ジュヴレシャンヴェルタンなど、
今日のブルゴーニュワインを確固たるブランドにした人物で、
数々の異名を持つ伝説の醸造家です。
そこで、本日はアンリ・ジャイエについてお話します。
アンリ・ジャイエの歴史と功績
アンリ・ジャイエは、フランスのヴォーヌロマネのブドウ栽培農家に生まれ、
1940年代にディジョン大学でワイン醸造学の学位を取得後、
家族からエシェゾーとボー・モンのブドウ畑を含む、7.4エーカーの区画を受け継ぎ、
1945年、メオ・カミュゼから特級のリシュブールを一部借り受けキャリアをスタートさせました。
当初はネゴシアンに栽培したブドウを販売する小作農でしたが、
1970年代の不況によりブドウが売れなくなったことで、
収穫したブドウで自らワインを造る自家元詰めをはじめました。
特級畑であるリシュブールの北部に面した北東向きの斜面の1級畑のクロ・パラントゥーは、
他のワイナリーからは見向きもされなかった荒れ果てた土地でしたが、
丘の中腹にブドウ畑を開墾し、今日、特級畑への昇格が検討されています。
今でこそ、ブルゴーニュワインというと、世界最高峰のワインというイメージが強いですが、
アンリ・ジャイエが生産を始めたころのブルゴーニュワインは、
大量生産の安価なデイリーワインを造る生産者が多く、
決してブルゴーニュ=高品質、高級というイメージはありませんでした。
ブルゴーニュのテロワールも、ピノ・ノワールという繊細なブドウ品種の特性も、
アンリ・ジャイエの畑への敬意と、ブドウ栽培への情熱、そしてテロワールを生かしたワイン造りによって
今日のブルゴーニュのワインが築かれていったと言っても過言ではないくらい、
多くの生産者に影響を与えました。
とくにアンリ・ジャイエのブドウの有機栽培、低収量によるブドウ品質の向上、
コールドマセレーションなど、自然酵母の使用など、
当時の他の生産者のワイン造りとは真逆ともいえる製法は、
ブルゴーニュのピノ・ノワールが持つ本来の味わいを引き出すことに成功します。
コールドマセレーションについて
アンリ・ジャイエの革新的なワイン造りの大きな要素の1つにコールドマセレーションがあります。
コールドマセレーションは、発酵前のブドウを低温で醸し、果汁に果皮を接触させて果実味を引き出す製法で、
収穫時期の気温が低い年にはワインの香りがより強くエレガントで色も濃く、
その色が熟成期間中も保たれることにアンリ・ジャイエは気付いていました。
そこで、収穫したブドウをつぶれないようにポンプを使わず、
13度くらいまで人工的に冷やした発酵槽で数日発酵無しでマセレーションを行いました。
この技術が生まれる前のブルゴーニュワインは、力強いワインを造るために高温で発酵させ、
その後、高温のまま皮と種子とをワインの中でマセレーションし、果皮成分をしっかりと抽出するのが一般的な方法でした。
しかしながら、高温でマセレーションすることで果実の風味がとんでしまい、
若いうちは渋みが強く飲みにくい特徴がありました。
そんなブルゴーニュワインの味わいを、アンリ・ジャイエは画期的な方法で変え、
ピノ・ノワールが持つ本来のエレガントで繊細な味わいを引き出すことに成功したのです。
アンリ・ジャイエの哲学を引き継いだエマニュエル・ルジェ
アンリ・ジャイエは、若き醸造家の育成にも力を注ぎました。
1979年から、甥であるエマニュエル・ルジェにブドウ栽培、ワイン造りの哲学を教え、
1985年ドメーヌをエマニュエル・ルジェに継承しました。
そして、同年エマニュエル・ルジェのファーストヴィンテージをリリースします。
エマニュエル・ルジェのワイン造りは、アンリ・ジャイエの哲学を基盤としながらも、
独自でブドウ栽培の手法も学び、その畑のテロワールとブドウの特性を最大限活かす
ブドウ栽培とワイン造りを実践しています。
出来るだけ自然な方法でブドウ育てること、葡萄の収穫は早すぎても遅すぎてもいけないので、
その年にとって適切な収穫時期を見極めること、
収穫量を厳しく抑制することを心掛け収穫は全て手摘みで、除梗を100%行っています。
アルコール醗酵前に5~7日間低温浸漬をし、アロマとブドウのエッセンスを引き出します。
アルコール醗酵にはコンクリートタンクを使い自然酵母で15~20日間行われ、
約18ヵ月樽で熟成させてから軽めに清澄をし、フィルターにはかけずに瓶詰されます。
おすすめのワイン
ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ クロ・パラントゥー エマニュエル・ルジェ
叔父アンリ・ジャイエの教えを尊重し、最高品質のものを造るという姿勢のエマニュエル氏のワインは、
非常に繊細で芸術とも言える出来上がりになっています。
クロ・パラントゥーは、まさにアンリ・ジャイエの理想と哲学を表現するため、
ほぼゼロから再構築した畑で、アンリ・ジャイエが心血を注いだクロ・パラントゥーは、
現在、メオ・カミュゼが0.72ha、エマニュエル・ルジェが南側の0.28haを分割所有しています。