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ワイン好きの方の中には、ボルドーワインをこよなく愛するという方も多いですよね。
ボルドーワインと一括りに言っても、ボルドー右岸と左岸では、
かなり異なったタイプのワインが造られています。
そこで、本日はボルドーの右岸と左岸のワインについてお話します。
ボルドー地方の右岸・左岸とは
まずは、ボルドー地方の地理についてお話していきましょう。
ボルドー地方には、有名な3つの川があります。
ドルドーニュ川とガロンヌ川、その2つが合流し、大西洋に流れていく大きなジロンド川です。
ボルドー右岸とは、川の上流から下流方向を見た際に右手側の岸を右岸といい、
ドルドーニュ川からジロンド川にかけて右側の地域を指し、
左岸はガロンヌ川からジロンド川にかけて左側の地域を指します。
右岸・左岸の土壌による違い
右岸と左岸では土壌が異なります。
それは、ジロンド川を形成する2本の支流であるドルドーニュ川とガロンヌ川の水源が異なるからです。
ドルドーニュ川は東の中央山脈から流れてきており、上流の粘土質の土壌が堆積してできた
粘土質土壌のため保水性が高い性質があります。
また、ガロンヌ川はピレネー山脈から流れてきており、上流から流れてきた岩が
細かくなって砂利になった砂礫質(砂利)土壌のため、水はけがよく、
さらに、砂利が太陽の熱で温められるため、保温性が高い性質があります。
右岸・左岸の品種による違い
右岸と左岸のこうした土壌の違いから、それぞれの土壌に適したブドウが多く植えられています。
保水性が高い粘土質土壌の右岸では、ひんやりとした環境でも早く熟すメルロが多く栽培され、
水はけがよく保温性の高い砂礫質土壌の左岸では、
ゆっくり熟す晩熟なカベルネ・ソーヴィニヨンが多く植えられています。
ただ、右岸も左岸も使用されているブドウ品種は同じで、
ボルドーワインは異なる品種をアッサンブラージュ(ブレンド)するのが特徴なので、
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フランなど複数の品種を右岸、左岸ともに栽培しています。
右岸・左岸の味わいによる違い
右岸と左岸で造られるワインの味わいは大きく異なり、
前述のとおり、土壌の違いから栽培される主要なブドウ品種の違いもあり、
さらに、その主要品種を使ったブレンドの比率が大きく異なるため、
造られるワインの味わいも大きく異なってくるのです。
右岸はメルロが主体で、左岸はカベルネ・ソーヴィニヨンが主体のワインが造られ、
右岸で造られるワインは、豊かな果実味をもつおおらかな味わいのメルロが主体なので、
左岸と比べると渋味が穏やか豊満で女性的な味わいのワインが多く造られています。
左岸で造られるワインは、タンニンが豊富なカベルネ・ソーヴィニヨンが主体なので、
骨格のあるしっかりとした男性的な味わいのワインが多く造られています。
右岸・左岸の代表地区
右岸の代表的な地区は、サン・テミリオンとポムロルの2つの地区です。
サン・テミリオンでは、主にメルロとカベルネ・フランのブレンドワインが造られており、
ポムロルに隣接する砂礫質土壌では、カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンが多く栽培され、
粘土質土壌からは、優美な味わいのメルロ主体のワインが造られています。
ポムロルの最高級ワインであるシャトー・ペトリュスは、メルロ単一でワインが造られており、
サン・テミリオンの格付けの頂点に君臨するでシャトー・シュヴァル・ブランで造られる
メルロ主体のワインは、早く飲みもでき、さらに熟成させてからも年々調和がとれていく、
飲み頃の期間が最も長いワインとも言われています。
左岸の代表的な地区は、オー・メドックとグラーヴとソーテルヌの3地区です。
オー・メドックは、80年も前の1855年、パリ万国博覧会にボルドーワインを出品するために、
ナポレオン3世の命令によりボルドー市商工会議所によって格付けが行われた地域です。
メドック地区には約500のシャトーがありますが、
そのうち61のシャトー(シャトー・オー・ブリオンのみグラーヴ地区)のみに
1級から5級の格付けがされており、その下にはクリュ・ブルジョワ級があります。
「ボルドーの5大シャトー」は、この地区の格付け1級に属する5つのシャトーです。
グラーヴ地区のグラーヴという名前は砂利という意味で、
その名のとおり、メドックよりも深い砂礫質の土壌が広がっており、
水はけがさらによく、雨の多い年は他の地区に比べて品質が高くなる傾向があります。
5大シャトーの1つであるシャトー・オー・ブリオンは、この地域にあります。
ソーテルヌでは、ハンガリーのトカイや、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼと並び、
世界三大貴腐ワインの産地として有名で、ソーテルヌ村を中心とした5つの村で
白ワイン用ブドウ品種のセミヨンから極甘口の貴腐ワインが造られています。