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私がはじめてボルドーワインを飲んだのが、あるワインの試飲会でした。
それまでニューワールド中心で、あまりフランスワインを飲んだことがなく、フランスワイン=重く渋めで複雑というイメージが強かったので、飲むまでは正直飲みにくそうという印象でしたが、この試飲会でボルドーワインを飲んだ時の衝撃は大きかったです。
ブラックベリーやプラムなどのフルーツのアロマが驚くほどフレッシュで、口に含むとしっかりとしたタンニンがあるのに、尖ったような渋みがなく、むしろまろやかで厚みがあり、何層にも折り重なった風味が次々に口の中で変化していくのがとても面白かったです。
そこで、本日はボルドーワインの特徴や選び方、当店一押しのワインを5つご紹介します。
ボルドーワインの基本情報
ボルドーは、フランスワインの中でもブルゴーニュと並ぶ銘醸地としてワインラバーにも絶大な人気を誇るワイン産地。
5大シャトーをはじめとするメドックの格付けが有名なので、ボルドーワインというと、多くの人が高級ワインを思い浮かべますよね。
また、ボルドーワインといえば赤ワインというイメージも強いと思いますが、ボルドーには現在60のA.O.C.(原産地統制呼称制度)があり、それぞれの地域で赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、スパークリングワイン、貴腐ワインが造られています。
フランス、ボルドー地方について
ボルドーは、フランス南西部の大西洋に近いガロンヌ川に面した港町で、紀元前1世紀にローマによって占領され主要な交易港となり、この頃からワインの生産が盛んになっていきました。
水のほとりという言葉に由来するボルドーの地名の通り、ボルドー地方には有名な3つの川があり、大西洋に注ぐジロンド川とその上流であるドルドーニュ川とガロンヌ川が流れています。
年間平均気温が13.3℃と温暖な海洋性気候で、3つの川に沿って大きくワインの産地が分かれ、それぞれの土壌に適したブドウが栽培されています。
ブドウの品種
ボルドーで栽培されているブドウ品種は、黒ブドウがカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、マルベック、プティ・ヴェルドで、白ブドウがセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルです。
後ほど各産地のところで詳しくご説明しますが、高級赤ワインの産地であるメドックではカベルネ・ソーヴィニヨンが広く栽培されており、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にメルロ、カベルネ・フランをブレンドしたコクと酸味のバランスのとれたフルーティで濃厚な味わいのワインが造られています。
アッサンブラージュとは
ボルドーワインの特徴の1つでもあるアッサンブラージュ。
これは、寄せ集めるという意味のフランス語で、ボルドーワインの何層にも折り重なった複雑な風味を造り出すために、いくつかのブドウ品種が混ぜ合わせて造られています。
ボルドー地方は収穫期の天候が不安定なため、毎年安定した品質のブドウを収穫するのは困難で、早熟なメルロやカベルネ・フランを栽培することで、カベルネ・ソーヴィニヨンが不作の年には、メルロやカベルネ・フランを多めにブレンドすることで毎年安定した品質を保っています。
ボルドーワインの格付け
ボルドー地方の格付けは、ワインを生産するシャトーごとに格付けされます。
この格付けがおこなわれたのは、フランスワイン法が制定されるより80年も前の1855年、パリ万国博覧会にボルドーワインを出品するために、ナポレオン3世の命令によりボルドー市商工会議所によって制定され発表されました。
メドック地区には約500のシャトーがありますが、そのうち61のシャトー(シャトー・オー・ブリオンのみグラーヴ地区)のみに1級から5級の格付けがされており、その下にはクリュ・ブルジョワ級があります。
その頂点に立つのが、シャトー・ラフィット・ロートシルト(ポイヤック)、シャトー・ラトゥール(ポイヤック)、シャトー・マルゴー(マルゴー)、シャトー・ムートン・ロートシルト(ポイヤック)、シャトー・オー・ブリオン(ペサック・レオニャン)の5大シャトーです。
好みの味を製造地域で選ぶ
先ほども触れたとおり、ボルドー地方には60のA.O.C.があり、フルボディの赤ワインをはじめ、白ワイン、ロゼワイン、スパークリングワイン、貴腐ワインが造られています。
赤ワインも造られる産地によって主体となるブドウ品種が異なるので、一口にボルドーワインと言っても産地によってかなり味わいが異なります。
左岸と右岸
ボルドー地方は、ドルドーニュ川とガロンヌ川、その2つが合流し、大西洋に流れていく大きなジロンド川が流れており、ワイン産地はこの川を起点に右岸と左岸に大きく分けられます。
ボルドー右岸とは、川の上流から下流方向を見た際に右手側の岸を右岸といい、ドルドーニュ川からジロンド川にかけて右側の地域を指し、左岸はガロンヌ川からジロンド川にかけて左側の地域を指します。
右岸と左岸では土壌が異なり、上流であるドルドーニュ川は中央山脈から水が流れてくるため、粘土質の土壌が堆積してできた粘土質土壌のため保水性が高い性質があります。
また、ガロンヌ川はピレネー山脈から流れてきており、上流から流れてきた岩が細かくなって砂利になった砂礫質(砂利)土壌のため、水はけがよく、さらに、砂利が太陽の熱で温められるため、保温性が高い性質があります。
右岸と左岸のこうした土壌の違いから、それぞれの土壌に適したブドウが多く植えられています。
保水性が高い粘土質土壌の右岸では、ひんやりとした環境でも早く熟すメルロが多く栽培され、水はけがよく保温性の高い砂礫質土壌の左岸では、ゆっくり熟す晩熟なカベルネ・ソーヴィニヨンが多く植えられています。
左岸:メドック、グラーヴ
左岸の代表的な地区は、オー・メドックとグラーヴの2つの地区で、オー・メドックは、80年も前の1855年、パリ万国博覧会にボルドーワインを出品するために、ナポレオン3世の命令によりボルドー市商工会議所によって格付けが行われた地域です。
「ボルドーの5大シャトー」は、この地区の格付け1級に属する5つのシャトーで、ボルドーワインの中でも特に高品質なワインを造る産地として有名です。
グラーヴ地区のグラーヴという名前は砂利という意味で、その名のとおり、メドックよりも深い砂礫質の土壌が広がっており、水はけがさらによく、雨の多い年は他の地区に比べて品質が高くなる傾向があります。
5大シャトーの1つであるシャトー・オー・ブリオンは、この地域にあります。
左岸で造られるワインは、タンニンが豊富なカベルネ・ソーヴィニヨンが主体なので、骨格のあるしっかりとした男性的な味わいのワインが多く造られています。
右岸:サン・テミリオン、ポムロール、フロンサック
右岸の代表的な地区といえば、サン・テミリオンとポムロールの2つの地区で、サン・テミリオンでは、主にメルロとカベルネ・フランのブレンドワインが造られており、ポムロールに隣接する砂礫質土壌では、カベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンが多く栽培され、粘土質土壌からは、優美な味わいのメルロ主体のワインが造られています。
ポムロールの最高級ワインであるシャトー・ペトリュスは、メルロ単一でワインが造られており、サン・テミリオンの格付けの頂点に君臨するシャトー・シュヴァル・ブランで造られるメルロ主体のワインは、早飲みもでき、さらに熟成させてからも年々調和がとれていく、飲み頃の期間が最も長いワインとも言われています。
また、ポムロールの西側に位置するフロンサック村を含む7つの村で構成されているフロンサック地区は、かつてはサン・テミリオンよりも高値がつくワインが生産されていましたが、19世紀末におきたフィロキセラ禍の影響によりブドウが全滅してしまいました。
1970年代から復興がはじまり、現在メルロを主体としたコスパの高いワインが造られています。
右岸で造られるワインは、豊かな果実味をもつおおらかな味わいのメルロが主体なので、左岸と比べると渋味が穏やか豊満で女性的な味わいのワインが多く造られています。
ソーテルヌ、バルザック
ソーテルヌでは、ハンガリーのトカイや、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼと並び、世界三大貴腐ワインの産地として有名で、ソーテルヌ村を中心とした5つの村で白ワイン用ブドウ品種のセミヨンから極甘口の貴腐ワインが造られています。
ソーテルヌ・バルザック地域には独自の格付けがあり、ソーテルヌのシャトー・ディケムは特級畑のシュペリエールに格付けされています。
バルザックは、シャトー・クリマンとシャトー・クーテが1級に格付けされています。
アントル・ドゥ・メール
アントル・ドゥ・メールはドルドーニュ川とガロンヌ川にはさまれた扇状地のような場所で、ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンが多く栽培され、主に辛口の白ワインを多く造っています。
1,000円台の比較的リーズナブルな価格のボルドー・ブランがたくさんあり、フレッシュな味わいのものが多いので、キリっと冷やして飲むのがおすすめです。
ボルドーワインの特徴についてお伝えしてきましたが、気になる地区やワインなど見つかりましたか?
渋みや酸味のある骨格がしっかりした赤ワインが苦手という方は、ボルドーワインでも右岸のサン・テミリオンやポムロールのメルロ主体のワインから試してみるのをおすすめします。
また、ボルドーワインは時々飲むけど赤ワインばかりという方は、ぜひ一度ボルドー・ブランもお試ししてみてください。意外な発見があるかもしれませんよ。