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自然派ワインを造る生産者が増えている近年、できるだけ人の手を加えないワイン造りの一環として「ノンフィルターワイン」を謳ったワインも多くみかけるようになりました。
このノンフィルターワインはどんなワインなのでしょうか。
そこで本日は、ワインを造る上でおこなうフィルター濾過の方法と目的についてお話します。
フィルター濾過とは?
ワインを醸造し瓶詰にしてリリースするまでの工程の中で、「清澄(コラージュ)・濾過(フィルトラージュ)」という工程があります。
多くの生産者は、瓶詰の前の最終段階でおこなう工程で、できあがったばかりのワインは、ペクチンやポリフェノールといったブドウ由来の物質や、アルコール発酵によってできたたんぱく質などの目に見えない浮遊物がたくさん含まれています。
こうした浮遊物を取り除くために、まず清澄(コラージュ)といって卵白やゼラチンなどの清澄剤をワインの中に入れて、不純物と結合させ容器の底に落としてワインをクリアにしていきます。
そして清澄で取り切れなかったさらに細かい微小物を、フィルターにかけて濾過することで取り除き、よりクリアなワインに仕上げます。
ワイン用フィルターには2種類あり、除去したい物質をフィルターの内部で捕捉するデプスフィルターと、フィルターの表面で捕捉するメンブランフィルターがあります。
フィルター濾過する目的とは?
フィルター濾過することによってワインに含まれる不純物を取り除き透明度を上げることがお分かりいただけたと思いますが、ただ清澄度や透明度を上げることだけがフィルターの目的ではありません。
こうしたワインに含まれる不純物は多いほど瓶詰された後も瓶内で微生物が活動を続けワインが変質してしまう恐れがあるため、ワインの安定性を高めるためにもフィルターが用いられます。
昔のワイン造りでは、こうした微生物によるワインの変質などを抑えるために、火入れなどの加熱殺菌が主流におこなわれていた時期がありましたが、加熱によるワインの風味の損失を抑えたいという思いから、濾過膜(フィルター)が急速に発達していきました。
こうしたフィルターの発達のおかげで、ワインの風味を大きく損なうことなく殺菌させることができ、瓶内の酵母の数をコントロールして安定した品質を保ちながら、緩やかに熟成することが可能になりました。
ノンフィルターワインってどんなワイン?
ただ、フィルターをかけることで安定性が高まるものの、過度にフィルターをかけるとワインの特徴である香りや風味、複雑味や旨みといったデリケートな成分も同時に失われてしまうという考えもあり、あえてフィルター濾過をしないノンフィルターワインを造る生産者もいます。
こうしたワインは、通常のワインに比べてさらに温度や湿度などの変化に敏感なので、購入後の保管状態はとくに気を付けることが必要です。
自宅にワインセラーがあれば理想的ですが、もしワインセラーがない場合は、短期間であれば冷蔵庫の野菜庫で保管するのがベストです。
ちなみに、ブルゴーニュワインではこうしたノンフィルターワインを生産する生産者も多く、そのワインのラベルには、濾過をしていないという意味の「non filtre」や、清澄・濾過していないという意味の「ni colle, ni filtre」の表記がありますので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。
おすすめのノンフィルターワイン
ビオディナミ農法を約40年前から実践している州内で最古の自然派ワイナリー
フィドーラは、イタリア・ヴェネト州にあり、単に畑で自然栽培を行うという近視的な視野ではなく、ブドウが根付く環境全体の循環を学び、理解し、実践するという強い志を持った自然派ワイナリーです。
「プロセッコ・フリッツァンテ・コル・フォンド・ビオ」は、石灰質を多く含む粘土質のさまざまなミネラルを含んだ自社畑のグレラ種を100%使用しています。
無濾過で微発泡のワインを造る技法は、実はこの地でははるか昔から伝わる伝統的な技法で、泡は人為的に作るのではなく、ボトルの中で、シャンパン製法のように自然に起こり、澱が生まれます。
こうして生まれたフリッツァンテは、泡のさわやかさと、シュールリーの白ワインのコクを併せ持った非常にのど越しのよい後味さっぱりの食事に合わせやすいワインです。
アプリコット、ライチ、カモミール、トロピカルフルーツのようなアロマがあり、穏やかな酸味とフルーティーさがあります。