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甲州ワインが今、世界からも注目を集めているというのはご存じですか?
その大きな要因としては、2010年OIV(国際ブドウ・ワイン機構)が甲州種をワインのブドウ品種として登録したことで、輸出の際にラベルに「甲州」と品種名を明記することが認可され、このことで、日本の固有品種である甲州というブドウのワインが世界に広まり、日本のワインの知名度が一気に上がりました。
そして2014年、イギリスの国際ワインコンテスト「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」で、中央葡萄酒の甲州ワイン「キュヴェ三澤 明野甲州」が金賞を受賞したことで、甲州ワインが世界的に認められるワインの1つとして決定的なものになりました。
そこで、本日は甲州ワインの魅力を徹底的に紹介します。
甲州ワインとは
甲州ワインとは、「甲州」というブドウ品種から造られるワインのことをいいます。
この甲州というブドウ品種は、ヨーロッパを起源とするヴィティス・ヴィニフィラに属する日本固有の品種で、なんと1000年以上の栽培の歴史があるブドウ品種なんです。
古い栽培の歴史を持つ甲州種がワインとして生産されるようになったのは、1870年のこと。
しかし当時は醸造技術が未熟だったため、わずか2年で廃業。
その5年後、大日本葡萄酒会社が設立され、2人の日本人がワインの醸造を学びにフランスへ派遣されました。
それから100年後、勝沼町ワイン原産地認定制度が条例化され、勝沼のワイナリーでシュール・リー製法が一般化し、たゆまぬ研究を重ねた結果、2010年OIV(国際ブドウ・ワイン機構)が甲州をブドウ品種として登録されました。
日本固有品種が、ワイン醸造用のブドウとして認められたのは甲州種が初めてのこと。
以来、甲州ワインは世界でも注目されるワインとなり、海外で毎年のように高評価を得ています。
甲州ワインの特徴
従来日本の白ワインは、軽めに仕上げられるのが一般的でした。
また、甲州ワインの伝統的な味わいは甘口が主流だったため、以前までは、軽めの白ワインというイメージが強かった甲州ワイン。
しかし、近年は辛口が主流となり、昼夜寒暖差のある標高の高い畑で育てられた甲州種は、強い酸を持ち力強い辛口や、重厚な味わいのものも造られるようになってきました。
また、甲州ワインは香りが乏しいという評価をされていましたが、その原因が、甲州ブドウの香りのピークと糖度のピークのタイミングのズレにあることが分かり、収穫のタイミングをかえるなど、甲州が本来もつ柑橘系の香りを引き立たせたワインが一般化してきました。
こうした地道な努力が実を結び、ここ15年で品質が飛躍的に向上しています。
「日本らしさ」「甲州らしさ」として、世界から高い評価を受けるようになったのです。
甲州ワインの代表的な4つの製法
一口に甲州ワインと言っても、山梨県には現在、大中小合計約80社のワイナリーが存在し、各ワイナリーが多様な製法と技術を駆使してさまざまな味わいを造っており、味と香りにはバリエーションが多数あります。
そこで、甲州ワインの代表的な4つの製法についてご紹介します。
シュール・リー
シュール・リー製法は、フランス語で「Sur(上に) Lie(澱)」と書き、澱の上という意味の言葉で、一般的な白ワインの醸造の過程では、発酵が終わったあとは、上澄みを他へ移し、底の澱は取り除く澱引きという作業をおこなうのですが、シュール・リー製法の場合は澱引きをせずそのまま春までおいておくという醸造方法です。
これにより、ワインが澱(酵母)と長い間、接していくことで、発酵を終えた澱が自己分解して、アミノ酸や多糖類などに変わり、ワインに旨みが溶け込むことができ、爽やかながらもクリーミーで深みがあり、複雑でほんのり旨味を感じる味わいになります。
樽熟成
ワインを木樽で熟成させることで、わずかな酸素が樽の中に入りワインが空気に触れることでゆっくりと酸化しまろやかな味わいになっていきます。
また、バニラやカカオといった複雑で奥行のあるアロマがワインに生まれてきます。
スキンコンタクト
スキンコンタクトとは英語での表現で、フランス語では「マセラシオン・ペリキュレール」と言います。
白ワインは一般的に、白ブドウを破砕した後に直ぐに圧搾され、果汁のみを発酵しますが、スキンコンタクトをする醸造では、白ブドウを破砕したあと約4時間~24時間果汁に果皮を浸し、その後果皮と果汁を圧搾し果汁のみがアルコール発酵へと進みます。
この果汁に果皮を浸すことをスキンコンタクトと言い、ブドウの果皮の内側にある濃厚な糖分によって、ブドウが持つバラやユリなどの花の香りや、バナナやパッションフルーツなどの果物の香りが引き出され、豊かな香りとまろやかで厚みのあるリッチな味わいになります。
スパークリングワイン
甲州種から造られるスパークリングワインには2つの製法があり、1つはタンク内で酵母の力により二次発酵させて泡を造る方法と、もう1つが、シャンパーニュ方式と呼ばれる瓶内で二次発酵をおこなう方法で、前者は甲州種の持つ爽やかなフレッシュさが引き出された味わいで、後者はきめ細やかな泡があり非常に繊細で複雑味のある味わいのスパークリングワインになります。
甲州ワインと合う料理
甲州種から造られるワインは、柑橘のすっきりとした酸のフレッシュな味わいが特徴なので、やはり合わせる料理も塩や胡椒、出汁といった淡泊な味付けの料理がベストです。
中でも、和食のように素材の味を生かした繊細な味わいの料理は甲州ワインと非常によく合い、お寿司や塩で味わう白身魚の天ぷら、お出しをたっぷり含んだ野菜の炊き合わせなどがおすすめです。
おすすめの甲州ワイン
甲州 勝沼 スズラン酒造
1905年創業の山梨の老舗ワイナリーであるスズラン酒造は、明治の中頃、日本酒造りの傍らワインを試しに造ったことがきっかけで、政府より送られてきたドイツ人技師によって、本格的にワイン造りが始まりました。
スズラン酒造では、カベルネ、メルロ、プティヴェルド、シラー、ピノ・ノワールといった国際品種も広く栽培され、中でもボルドー品種には力を入れており、たっぷりとした果実味とまろやかさを持つ、余裕のある味わいのワインが造られています。
そんなスズラン酒造が造る甲州ワインは、柑橘の爽やかなアロマにフルーティーな果実味があり、まろやかなコクとふくよかな味わいで複雑味と深みのあるワインに仕上がっています。