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イタリアンレストランなどで魚の形をしたボトルのワインをみかけたことはありませんか?
現在ではだいぶ少なくなってきましたが、以前はテーブルワインとしてとても人気だったペッシェ・ヴィーノと呼ばれる魚の形をしたボトルの白ワイン。
そのワインに使われているのがヴェルディッキオというブドウ品種です。
そこで、本日はヴェルディッキオについてお話します。
ヴェルディッキオの特徴
ヴェルディッキオ (ヴェルディッキオ・ビアンコ) は、主にイタリア中部のマルケ州で栽培されている白ワイン用の白ブドウ品種で、イタリア語の緑を意味するヴェルデからその名がつきました。
ヴェルディッキオから造られる白ワインは、軽快な口当たりでとても飲みやすいテーブルワインと、複雑で熟成に向けの両方のタイプのワインが造られています。
イタリアでは、最高の白ワインを生み出すブドウ品種の1つとして賞賛されており、イタリアのほとんどの州で栽培されています。
ヴェルディッキオがマルケ州で栽培されるようになったのは14世紀頃からと、古い文書に記録が残っていますが、以前からヴェネト州のトレビアーノ・ディ・ソアーヴェがヴェルディッキオと同一品種ではないかと、その関係性が示唆され、最近のDNA研究で、ヴェルディッキオはトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェと同一であることが立証されました。
ヴェネツィアの商人は古くからからさまざまなブドウ品種をイタリア各地に伝えたことで有名であり、ヴェルディッキオもヴェネトからヴェネツィアの商人によって苗木が持ち運ばれたという説が有力で、もともと、マルケのテロワールにとても適した品種だったため、マルケで広く栽培されるようになり、ヴェルディッキオとして広まったと考えられています。
トレッビアーノ種はとても変異しやすいブドウ品種のため、イタリアのDOCワインのうち80種以上にトレッビアーノ品種が使われています。
トレッビアーノとは、イタリアでの一般的な名称で、主要なものは、トレッビアーノ・トスカーノ、トレッビアーノ・ロマニョーロ、トレッビアーノ・ジャッロで、変種を含めると16のクローンがあります。
ヴェルディッキオの主な栽培地域
ヴェルディッキオはマルケ州やラツィオ州などの各地で広く栽培されており、中でも有名なのが、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イェージ DOCと、ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ DOCです。
ヴェルディッキオから造られるワインの味わいや特徴
ヴェルディッキオは、強い酸を持つのが特徴で、レモンやグレープフルーツなどの柑橘系のアロマに、白い花のフローラルなアロマに、アーモンドのようなほろ苦いアロマがあり、熟成するごとにドライフルーツやハチミツなどの芳醇なアロマが加わり、ミネラル感も増してきます。
味わいは、しっかりとしたキレのある酸にフルーティーな果実味もあり、ほとんどのワインが1000円台とリーズナブルなため、デイリーワインとして楽しめ、スティルワインだけでなく、スパークリングワインのベースとしても使われています。
また、ヴェルディッキオのワインの最大の特徴と言ったら、一度見たら忘れられないペッシェ・ヴィーノと呼ばれる魚の形をしたボトルです。
魚介に合う白ワインというイメージを打ち出すため、一部のヴェルディッキオのワインを魚の形状にしたボトルに入れリリースしたところ、斬新なデザインで注目を集め、シーフードとの相性も良いことから認知度が高まりました。
近年では、ボトルの形状も通常のものが多く流通するようになり、魚の形状のものがだいぶ少なくなりましたが、味わいはより洗練されてきていて、しっかりとした酸とミネラルから長期熟成に耐えうるワインも増えており、デイリーから長期熟成までさまざまなタイプのワインを楽しめます。
ヴェルディッキオから造られる代表的なワイン
ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イェージDOCは、アンコーナ県のイェージの町の周りの丘陵地帯にブドウ畑が広がっており、この地域のテロワールは、主に石灰質、粘土、石灰岩が豊富な土壌と、比較的乾燥した海洋性気候のおかげで、ミネラルが豊富な辛口の白ワインを生み出すのに理想的な環境をもっています。
2010年からは、規定の熟成期間を経たリゼルヴァのカステッリ・ディ・イェージ・ヴェルディッキオ・リゼルヴァがDOCGに昇格しました。
ヴェルディッキオ85%以上、その他のブドウ品種は15%以下までブレンドが認められており、最低アルコール度数は12.5%、リリースまでに18カ月以上の熟成期間を必要とします。
アンフォラを模した瓶を使用したものが多くあります。
ヴェルディッキオに合う料理
控えめなアロマに、キリっとした酸とミネラルが感じられるヴェルディッキオは、食事とのペアリングがとてもしやすいワインが多く、幅広い料理と相性がいいです。
まず合わせる料理として一番に浮かぶのがシーフード。
なかでもシンプルな味付けのカルパッチョやマリネ、アクアパッツァ、ムール貝のワイン蒸しなど、生ものから火を入れたものまで、ほとんどのシーフード料理に合います。
バターをつかった濃厚なソースの白身魚のムニエルには、よりミネラル感が強く感じられる熟成されたヴェルディッキオがおすすめです。
また、シンプルなシーフード料理だけでなく、アロマが控えめですっきりした酸があるので、和食とも非常に相性がよく、刺身やてんぷら、焼き魚、ローストポーク、野菜炒めなど、普段の食事に合わせて飲めるのも、ヴェルディッキオの魅力です。