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今日で9月も終わりですね。
早いところでは9月の終わりごろからブドウの収穫が始まります。
ワイン生産者にとって大事な季節やってきました。
ワインの仕入れや、インタビューなど、日ごろから生産者の方とやり取りをする機会が多く、この時期になると、生産者の方から今年のブドウの出来などのメールが送られてきます。
本日は5年前に生産者より届いたメールを例に、ブドウの出来とワインの仕上がりとの関連性をお話したいと思います。
そして、2022年のヴィンテージはどのようになるのか、フランスの最新のブドウの出来具合についてもご紹介します。
ワインでいうヴィンテージは何のこと
生産者からのメールをご紹介する前に、ワインの仕上がりに影響を与えるブドウの出来について少しお話したいと思います。
ワインの世界では、ブドウの収穫年を「ヴィンテージ」と呼びます。
ワインのボトルに「2018」とあれば、2018年に収穫されたブドウを使ったワインということです。
ご存知のとおり、ワインは年によって出来が違うもの。
同じワインでもヴィンテージによって多少の味の差があるものもあります。
なぜなら天候は毎年一定ではなく、雨の量や気温など、農産物であるワインは特にヴィンテージの影響を強く受けます。
良質なブドウ造りにかかせないのが、ブドウ栽培に適した気候条件が揃うかです。
たとえば、春から初夏にかけて、晴れ間が少なく気温が低いと結実がうまくいかず、収穫量にも影響を及ぼします。
また、夏になると、ブドウの樹も成長期にはいり、だんだんと果房が大きくなっていきます。
この時期の天候の崩れは直接ワインの味に影響を与えてしまいます。
そして、ブドウの収穫の見極めはワインにとって大変重要で、早すぎると糖分が不足しワインも酸味が強くなり、遅すぎると実が熟しすぎて酸が少なくなってしまいます。
ブドウは品種ごとに成熟速度が違うため、もちろん収穫時期も異なりますが、土壌や畑の標高、日当たりや風通りなどによっても成熟が早くなったり、遅くなったりします。
そのため栽培者にとって収穫は、ひとつひとつの条件に柔軟に対応して進めていかなければなりません。
収穫作業のこの3週間ほどは、天候との勝負で、突然のにわか雨などで収穫直前の実が水を吸収していたんでしまうリスクもあり、収穫前の数日は、空とブドウから目が離せません。
このように、生産者は毎年自然環境に左右されながらブドウ栽培をおこない、その年のブドウのコンディションからベストな醸造方法でワインを造っています。
そのため、毎年ワインの仕上がりは微妙に違うのです。
生産者からのメールで読み取る2017年のブドウの出来
『今年の収穫は9月22日(金)からスタートしました。
私たちはちょっとがっかりしています…
というのも、今年は収穫量がとても少なく、例年の平均量からすると、なんと40%も低いのです。
でも、一方で品質の面を考えるとブドウの果実は完璧です!!
完熟して甘みも十分(アルコール度は13度ほどになるでしょう)、酸味・香りもしっかりあります。
今ちょうど白ワインの発酵が終わりそうなところですが、テイスティングしたところ、リッチな味わいでバランスもよく、素晴らしい出来でした!
赤ワインはまだ時間がかかりますが今の状態ですでにフルボディで色も濃く、アロマもたっぷり!きめ細かいタンニンが感じられる素晴らしい赤ワインに仕上がると思いますよ!』
このようなメールが届きました。
春先の寒波から始まり、熱く乾燥した夏が特徴だった2017年。
「ここ20年で最低」災難を乗り越えた奇跡のヴィンテージ2017年
天候は毎年一定ではなく、雨の量や気温など、農産物であるワインは特にヴィンテージの影響を強く受けます。
フランス、イタリア、スペインのワイン生産者は皆2017年は同じようなコメントでした。
「ここ20年で最低だ」とブドウの出来については嘆く人も結構いましたが、品質については皆太鼓判。
春先の寒波で多くの芽がダメージを受け、ブドウが自然と間引きされたような形になったのでしょう。
一房ずつが、凝縮した味わいを持ったようでした。
そして、先ほどのセリエ・デ・シャルトリュの2017年の出来はというと、2019年のサクラワインアワードでゴールド賞を受賞しました!
災難を乗り越えた奇跡の年のヴィンテージ、ぜひお試しください!
2022年のフランスのブドウの出来具合は?
フランス農務省の統計部門であるAgresteによると、2022年のワイン用ブドウの収穫量は4260万-4560万hlと予想されており、地域により異なりますが、開花は昨年よりも好条件のもとで広がったものの春先の霜害の影響を受けた地域もあり、また7月はこの60年で最も乾燥した気候となり、極度の乾燥がブドウに与える影響についても懸念されていましたが、ほとんどの地域で畑の状態はほぼ良好で早めの収穫となり、昨年に比べ13-21%増加すると予想されています。
ただ、ボルドーは春の霜と6月に雹嵐があり、ポムロール、ペサック・レオニャン、サンテミリオンの畑では干ばつによる灌漑が特別に許可されるなど、5年平均より少ない収穫量となる見込みです。
一方ブルゴーニュは、畑の状態は良好で2022年の生産量は5年平均を上回ると予想されています。
また、新酒で有名なボジョレーに関しては、5月、7月、8月と非常に日照に恵まれた乾燥と暑さが続いたことで病害から畑を守れたものの、6月に局地的な雹の影響で、区画ごとに収穫量にばらつきがあり過去5年平均に対して約23 %減少すると見られています。
そして、そろそろ今年のブドウの収穫状況などが生産者から送られてくる頃です。
また、届き次第みなさんにもお伝えしていきたいと思います。
どうぞお楽しみに♪