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ロマネ・コンティをはじめ、ジュヴレ・シャンベルタン、シャサーニュ・モンラッシェ、ピュリニー・モンラッシェなど、世界に名だたる偉大なワインを生み出す産地ブルゴーニュ。
私はブルゴーニュワインと聞くと、それらの偉大なワインはもちろんですが、テロワールを大切にしながらブドウを丹精込めて育てあげ、丁寧に手間をかけて造る小さなドメーヌのとてもピュアでエレガントな味わいのブルゴーニュワインも思い浮かびます。
そこで、本日はブルゴーニュワインの特徴と当店おすすめのワイン6本をご紹介します。
ブルゴーニュワインとは
フランス東部のブルゴーニュ地方は、ボルドー地方と同じく世界的に有名なワインの銘醸地。
特にワイン愛好家の中ではファンの多いワイン産地の1つであり、あの超がつくほどの高級ワインで知られる「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ」もブルゴーニュワインで、年間の生産量はわずか6000本前後のため、品質もさることながら希少性も相まってオフヴィンテージであっても1本(750ml)100万円は下らず、グレートヴィンテージのものとなると200万円〜300万円の値がつくことも。
1つの畑を複数の所有者で持っているのが一般的で、小規模にワイン造りを行うドメーヌが多いのがブルゴーニュの特徴です。
農家のおじさんが自分の手でやれるだけの小さな畑でブドウを丹精込めて栽培しワインを造っているケースが多いため、決して派手ではないですが、完成したワインはとても華やかな香り漂う素晴らしいものばかりです。
フランス・ブルゴーニュ地方について
ブルゴーニュ地方はフランスの中東部に位置し、パリから南東に約300㎞のところにマスタードで有名なコート=ドール県の県庁のディジョンがあります。
かつてブルゴーニュ公国の首都として栄えたディジョンは、中世の面影が残る歴史的な建造物などの文化遺産をいまでも多く見ることができます。
ブルゴーニュは内陸に位置しているため半大陸性気候で、夏は暑く冬は寒く全体的に冷涼な気候です。
紀元前5世紀ごろにブルグント人によってつくられたブルグント王国がつくられ、それがのちにブルゴーニュの名前の由来となりました。
そんなブルゴーニュでワイン造りが始まったのは4世紀ごろとされ、中世になるとキリスト教の各修道院によってワイン造りが活発になり、高品質なワインが造られるようになっていきました。
ブルゴーニュワインの製法
ブルゴーニュのワインは、赤ワインも白ワインも有名ですが、どちらのワインも数種類の品種をブレンドして造るタイプではなく、単一品種のブドウで造られるワインが基本です。
赤ワインは、ピノ・ノワール100%で造られ、白ワインもシャルドネを100%使用したものがほとんどです。
ブルゴーニュのブドウ品種
先ほど触れた通りブルゴーニュでは、黒ブドウはピノ・ノワール、白ブドウはシャルドネがメインで栽培されており、シャルドネはブルゴーニュ全体の栽培面積の約48 % 、ピノ・ノワールは約 34 %を占めています。
その他、黒ブドウのガメイが10%と、白ブドウのアリゴテが6%栽培されています。
ピノ・ノワール
ピノ・ノワールは、非常に古くから存在しており、ブルゴーニュ地方でのピノ・ノワールの栽培は600年を超え、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、ピノ・ムニエといった多くのクローンを造っています。
果皮が薄く、早熟なブドウで、病気にも弱いことから、他の品種に比べて栽培も醸造も非常に難しいとされ、かつては「ブルゴーニュ以外では栽培できない」と言われていましたが、近年では世界中で栽培される国際品種の一つとなりました。
ピノ・ノワールから造られるワインは、香り高く官能的なワインと例えられることが多く、ラズベリーや野イチゴ、赤すぐりといった赤系果実のアロマに、ほんのり野性味を感じるジビエやスパイスのニュアンスもあり、香り高く、複雑さと豊満さを備えたエレガントな味わいのワインが造られています。
シャルドネ
ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェの3つの村で造られるシャルドネ100%の白ワインは、ブルゴーニュのコート・ド・ブランと呼ばれる世界最高の白ワインです。
石灰岩の土壌に植えられたシャルドネから造られる白ワインはヘーゼルナッツなどのふくよかで複雑なアロマに、リッチで豊満なボディがあり、プルミエ・クリュのワインは15年程の熟成に耐えられますが、グレートヴィンテージのものやグラン・クリュのものはそれ以上の熟成が可能です。
ブルゴーニュワインの格付け
生産者であるシャトーごとに格付けされているボルドーと異なり、ブルゴーニュの格付けは「畑」にあります。
簡単に言えば、ブルゴーニュ地方のワインは特級畑ワイン(グラン・クリュ)、第1級畑ワイン(プルミエ・クリュ)、村名ワイン、地方名ワインに分かれています。
最上級の特級畑(グラン・クリュ)は39の畑が認定されており、ワインは銘柄名として畑の名前だけが表示されます。
例えば「シャンベルタン」(ジュヴレ・シャンベルタン村のシャンベルタン畑)第1級畑の格付けは、特級と同じく畑が対象で、その畑でとれたブドウだけを使ったワインなので、その畑の名前が銘柄として記載されています。
ラベルにはその村の名前の下に小さく「Premier Cru」「1er Cru」と付けます。
村名ワインは村名が銘柄名になり、同じ村の畑でとれたブドウを使ってつくるワイン。
地方名ワインは地方名の「ブルゴーニュ」が銘柄になります。
地域で変わるブルゴーニュワインの味わい
ブルゴーニュ地方のワイン産地は、シャブリ地区、コート・ド・ニュイ地区、コート・ド・ボーヌ地区、コート・シャロネーズ地区、マコネ地区、ボジョレー地区の6つに大きく分かれており、シャブリ地区を除きディジョンからリヨンまで南北に長くブドウ産地が並んでいます。
ピノ・ノワールもシャルドネも土地の影響を受けやすく、ちょっとした土壌の違いでできるブドウの香りや味わいに変化が出るため、ほんの少しの区画の違いや造り手の醸造方法により味わいにも現れるのが面白い部分でもあります。
地区によって異なる個性のテロワール(土壌)を持つブルゴーニュでは、それぞれの土地の影響を受けた味わいのワインが生まれます。
シャブリ地区
シャブリ地区は、ブルゴーニュ地方の中でも最も北に位置しており、貝殻などの化石、粘土、石灰などを含む石灰質の「キンメリジャン」という白い土壌が広がっています。
シャブリ地区で使用されるブドウ品種は、シャルドネ100%です。
シャブリ地区の格付けは4段階に分かれ、1番上から、シャブリ・グラン・クリュ、シャブリ・プルミエ・クリュ、シャブリ、プティ・シャブリの順になります。
シャブリの特徴は、なんと言ってもそのしっかりとしたミネラル感。
スッキリとした酸に、貝殻の化石の土壌からでるミネラル感は、硬質でオイリーな口あたりで、厚みのある果実味に、ヘーゼルナッツやハチミツといった味わいがあり、力強さとエレガントさが感じられます。
コート・ド・ニュイ地区
マルサネ、フィサン、ジュヴレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニー、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュの8つのA.O.C.があり、グラン・クリュは24あります。
ロマネ・コンティやラ・ターシュ、リシュブールなどブルゴーニュの最高峰と言われるワインを生み出す産地で、なかでもドメーヌ・ド・ラロマネ・コンティの畑があるヴォーヌ・ロマネ村は、8つのグラン・クリュを有しています。
ヴォーヌ・ロマネは、ブルゴーニュ地方全体の2%ほどですが、その完璧とも言えるテロワールから「神に愛された村」と呼ばれ、ロマネ・コンティの1.6ha程の小さな畑から、年間約6,000本と極めて希少なワインが生みだされています。
コート・ド・ボーヌ地区
コート・ド・ニュイと並んでブルゴーニュの最高峰ワインを生み出す産地で、コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌの2つの地区を合わせた約50㎞の細長い地域を「コート・ドール(黄金の丘陵)」と呼んでいます。
コート・ドールのコート・ド・ボーヌ側には、ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェの3つの村が含まれており、ここからは世界最高峰の白ワインが生み出されています。
また、コート・ド・ニュイからコート・ド・ボーヌへ抜けるとき境目となっているコルトンの丘と言われる小高い丘陵地は、赤ワイン、白ワインどちらも特級ワインも持つ選ばれた土地で、コート・ド・ボーヌ最大の特級畑があります。
コート・シャロネーズ地区
グラン・クリュはなくプルミエ・クリュを持つ産地で、5つあるコート・シャロネーズ地区のA.O.C.中でも上質として知られているのが、白ワインの名産地リュリーです。
リュリーは赤ワイン、白ワインともに造られていますが、白ワインがとくに有名な産地で、繊細ですっきりした味わいのものが多く、熟成するごとに、ドライフルーツやハチミツといった芳醇なアロマが現れ、口に含むとフルーティーでまろやかでオイリーな余韻の長い味わいのワインになります。
マコネ地区
最も南部にあるマコネ地区では、シャルドネから高品質な白ワインが生産されており、1937年にAOC認定を受けました。
マコネ地区は、南北に約50kmに広がる長方形の地域でマコンはその中心地として古くからワインの取引の場所として栄えてきました。
マコネ地区のブドウ畑の多くは渓谷の南向きの斜面、高度350m~400mに位置しており、AOCマコンにはグラン・クリュやプルミエ・クリュはなく、比較的カジュアルなワインが多く造られています。
マコネ地区の最も南部には、村名アペラシオンのプイィ・フュイッセ、プイィ・ロシェ、プイィ・ヴァンゼル、サン・ヴェランがあり、村名アペラシオンには、プルミエ・クリュも数多くあります。
中でも、プイィ・フュイッセでは高品質な辛口の白ワインが造られています。
ボジョレー地区
ボジョレー・ヌーボーもブルゴーニュワインということを知らない方も多いと思いますが、ボジョレー地区はブルゴーニュ地方の最南端、マコネ地区の更に南のリヨンの北側にあります。
一般的にブルゴーニュの赤ワインは、ピノ・ノワールがほとんどですが、ボジョレー地区は主にガメイ種を生産しており、ガメイ種のその年収穫したぶどうから造る新酒のみをボジョレー・ヌーボーと呼びます。
ガメイの単一品種で生産され、他の品種とブレンドをしないところがブルゴーニュらしさですね。
ブルゴーニュワインの特徴についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ブルゴーニュワインを一言でいうと、私はテロワールを反映したワインというのが一番の印象です。
世界屈指の著名なワインの数々を生み出す産地として有名ですが、ブルゴーニュワイン全体を見て感じる印象は、それぞれのテロワールにあった丁寧なワイン造りをしている生産者が多く、同じ畑でも生産者によって味わいが異なり、飲み比べて自分の好みのワインを探していくのは宝探しにも似た感覚で、とても楽しい産地です。
さまざまなブルゴーニュワインを飲み比べてご自身の好みの1本を探してみるのはいかがでしょうか。
おすすめのブルゴーニュワイン
ジュヴレ・シャンベルタン マルシャン・トーズ
ジュヴレ・シャンベルタン マルシャン・トーズは、石灰岩と粘土質のLes pressonniers、石灰岩のles crais、茶色い石灰岩のJouise、泥海岸と石灰岩のLes seuvreesのそれぞれ個性が異なる4つの畑のブドウをブレンドして造ります。
香り高い部分、どっしりと力強い部分と、それぞれの特性を組み合わせ、バランスの取れたジュヴレ・シャンベルタンになるように注意します。
オーク樽で18か月熟成、新樽比率は20%です。
オークの素材はフランスでも名高い3つの森、アリエ、ジュピーユ、フォンテーヌ・ブロー、そしてヌヴェールから取り寄せ、新樽は少しローストして使用します。
マロラクティック発酵の後、一回澱引きを行い、濾過と清澄作業は行いません。
ビオディナミカレンダーに基づいたルールで熟成させます。
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シャブリ・ヴィエイユ・ヴィーニュ ドメーヌ・ジョルジュ
シャブリの中でも南寄りのクルジ村で、元々協同組合にブドウを販売してたブドウ栽培農家でしたが、2004年より、自家元詰めを本格的に開始したドメーヌ。
ドメーヌとしての歴史は浅いですが、ブドウ栽培農家としての長い経験から、化学肥料の廃止、除草剤を止め、極力畑仕事に従事するリュット・レゾネを行い、樹齢35年~60年のブドウ樹から、ブドウ本来が持つ繊細さ、複雑さ、そしてピュアな風味やアロマを残すため、 全てステンレスタンクで醸造しています。
そのため、青りんごやレモンといった柑橘のフレッシュな果実味に、豊富なミネラル感がしっかりと感じられるシャブリ本来の個性が際立った1本に仕上がっています。
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レ・スリー・マドンヌ ボジョレー・ヴィラージュ
こちらはボジョレーヌーボーではありませんが、ボジョレー地区で1958年からの歴史を持つカーヴ・デュ・シャトー・デ・ロージュのワインです。
ボジョレー地区のペレオンとヴォー・アン・ボージョレの標高500mに位置する、花崗岩質土壌の畑の葡萄を使用し、ボジョレーの伝統的な手法であるセミ・カルボニック・マセラシオンにて発酵させた後、ステンレスタンクにて熟成させ造られます。
鮮やかな深くて濃いルビーレッドカラーの外観に、チェリーやブラックベリーなどのフルーティーな香りと、スパイスや、トースト、バニラなどの表情豊かな香りが広がります。調和のとれたまろやかな口当たりに、香りと同じくブラックベリーなどのアロマが感じれらます。ローストチキンなどと良く合います。
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オート・コート・ド・ボーヌ・ルージ ジャン・クロード・ラトー
ジャン・クロード・ラトー氏は、1979年ブルゴーニュのコート・ドール地区で「ビオディナミ栽培」を始めた、実はブルゴーニュにおける自然派栽培の先駆者です。
ドメーヌには3つのボーヌのキュヴェがあり、まずは les Prevolles(レ・クーシュリア)と le Clos des Mariages(クロ・デ・マリアージュ)です。
3つ目のキュヴェに “les beaux et bons”(レ・ボー・エ・ボン) と付けたのは、 2つの異なる個性を持つ土地から取れたブドウをブレンドしているという意味です。
ラトー氏のワインは、現地フランスで75%が決まった客先に送られるため、輸出は僅か25%のみ。
日本へ回ってくるものも極少量という、本当に希少な自然派ワインです。
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ピノ・ノワール シャテル・ビュイ
カーヴ・デ・ヴィニュロン・ド・ビュクシーは、ブルゴーニュ南部のコート・シャロネーズの栽培家・ワイン生産者達が自発的に集まって誕生した協同組合。
AOC法の規定のほかに、独自の品質コントロールを行っており、非常に高い品質基準をもっている点も特徴で、国内外の多くのメディアで評価されている実力のある造り手です。
そんなカーヴ・デ・ヴィニュロン・ド・ビュクシーが手掛けるピノ・ノワールは、ブドウのフレッシュな果実味を引き出すため、 ステンレスタンクを用いて発酵を行い、その後、この土地で伝統的な木製の大樽にワインを移し 熟成させます。
ピノ・ノワールの特徴でもあるさくらんぼやスグリ、ラズベリーといった赤系果実のピュアなアロマがあり、時間とともに腐葉土、レザーの深みのある香りが現れます。
果実の甘みと、エレガントで美しい酸に、穏やかな渋みがアクセントに感じられます。
タンニンが落ち着くまで数ヶ月寝かせることによって、燻した香りや レザーのノートが加わります。
フレッシュな果実味を味わうため、熟成は3年程度までに留めるのがおすすめです。
オート・コート・ド・ニュイ・ブラン ジャイエ・ジル
ジャイエ・ジルは、ブルゴーニュの神様、故アンリ・ジャイエのいとこロベールが興したドメーヌで、アンリ・ジャイエの血縁ドメーヌの中で最も人気が高く、素晴らしい生産者として名前があがる実力派。
ドメーヌは、コート・ド・ニュイの最南端、位置的にはオート・コート・ド・ニュイとなるマニ・レ・ヴィレールの村に位置し、現在は息子のジル・ジャイエが取り仕切ります。
ジャイエ・ジルの特徴と言えば、新樽。熟成は新樽100パーセントで行なうのを信条としていて、グラン・クリュやプルミエ・クリュなど格付けに関係なく、ワイン造りに新樽を用います。
これは葡萄に十分な果実味があるからこそ可能なことで、新樽による熟成は10年は熟成していける力をワインに与えます。
グラン・クリュ(特級)のエシェゾーや、ニュイ・サン・ジョルジュのプルミエ・クリュ(一級)であるレ・ダモードなど素晴らしいワインを造り出しますが、 逸品として知られるのがオート・コート・ド・ニュイやオート・コート・ド・ボーヌです。
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