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みなさんは「フランスの庭」と呼ばれる地方をご存知でしょうか?
それは、ロワール地方のことです。
フランスの中でも美しい田園風景に古城が点在する風光明媚なワイン産地として知られています。
アンボワーズ、アンジェ、ブロワ、モンソロー、オルレアン、トゥールといった歴史上の重要都市が点在し、シノン城をはじめとした、主に11~15世紀の間に建てられた100を超える古城が点在しています。

ロワール最大の古城「シャンボール城」はその美しい景観と歴史から2000年にはユネスコの世界遺産にも認定されました。
そして、フランス最長の河川、ロワール川流域はワインの産地としても有名です。
日本で言えば、関東地方ほどの面積の地域に、なんと60を超えるアペラシオンが存在し、ブドウ品種もシュナン・ブランやカベルネ・フラン、ミュスカデ…など、多品種から多彩なワインが生み出されています。
今回注目するのは、異常気象で大打撃を受けたことのある「ナント地区」そこで造られている「ミュスカデ」をご紹介します。
ミュスカデの歴史
ミュスカデの産地、ナント地区には、実は悲しい歴史があります。
それは1709年のこと、ナント地区を大寒波が襲いました。
その寒波はフランスでもっとも大きなロワール河を凍結させるほどの威力で、それによりナント地区のぶどうは、ほぼ全滅してしまいました。
ぶどうの生産者たちは大打撃を受け悲しみに暮れていましたが、それでもワイン造りへの情熱を絶やしませんでした。
彼らは、大寒波に負けないように「寒さに強いぶどう」を栽培しようと考えました。
そこで自分たちの地区よりもずっと気温が低い地区「ブルゴーニュ」で栽培されているぶどうに目をつけることにしました。
そこで選ばれたのが「ムロン・ド・ブルゴーニュ」と言う品種です。
(ブルゴーニュのメロンの香りのするぶどう、という意味です)
その頃ブルゴーニュで栽培されていた「ムロン・ド・ブルゴーニュ」は名前の通りメロンの香りがしていたかもしれませんが、気候や土壌の違いからか、現在、ロワール地方で栽培されているミュスカデにはメロンの香りはありません。
この「ムロン」が、「ムスク(麝香・じゃこう)」となり、だんだんと変化して、「ミュスカデ」の語源になったと言われていますが、
実際のところはよく分かっていません。
こうして、ナント地区の人々が悲しみを乗り越えて、当時の生産者の結束により探し求め見つけたぶどうが、今やロワール地方を代表する「ミュスカデ」になったのです。
ちなみに、このミュスカデは出身地であったブルゴーニュ地方では、現在ほとんど栽培されておらず、栽培面積は全体の1%にも満たないようです。
(ブルゴーニュワイン事務局の資料による)
ミュスカデの製造方法
ミュスカデのラベルには、よく「シュール・リー(sur lie=澱の上の意味)」と書かれています。

これは、一般的な白ワインの醸造の過程では、発酵が終わったあとは、上澄みを他へ移し、底の澱は取り除く澱引きという作業をおこなうのですが、シュール・リー製法の場合は澱引きをせず、そのまま春までおいておくという醸造方法です。
これにより、ワインが澱(酵母)と長い間、接していくことで、酵母は自己分解してアミノ酸となり、ワインに旨みが溶け込むことができます。
この製法は、雑菌などが繁殖しやすいため温度管理がとても重要になります。
ですので、シュール・リーと明記されていたらひと手間かけたコクのある美味しいワインと言えるでしょう。
ミュスカデの味わい
ミュスカデは一般的に、若くてフレッシュで、みずみずしいフルーティーさのある辛口タイプのものが多く、香りは淡いマスカットに似ています。
香りが薄い分、個性的なワインのように思われないこともありますが、飲み比べてみると、溌剌とした酸味にミネラル感が際立っているものや、果実味がしっかりとしたフルーティーなもの、微発泡で爽やかな飲み口のものなど、銘柄によって味わいに個性があり、さらに熟成させることでミュスカデ本来のポテンシャルを発揮するものもあります。
ミュスカデに合う料理
そんな、ミュスカデはいろいろなお料理に合わせやすいワインです。
とくに、ミュスカデのフレッシュな酸味とミネラル感は、魚介類と合わせやすく、中でも生牡蠣は相性抜群です。
またシュール・リー製法によって、もともと繊細な味わいのブドウに、複雑さや深みが加わっているので、素材本来の味を大切にしながらも、出汁の旨味をもつ和食は最高のペアリングです。
魚の塩焼きや鶏肉の水炊きやおでんなど家庭料理との相性がよく、野菜やくせの少ない軽めのチーズとの合うので、前菜やおつまみと合わせて飲むのもおすすめです。
味付けが薄めでくせの少ない料理であれば、幅広い食材と合わせやすいので、気軽に飲めるミュスカデは、家飲みに最適なワインとも言えます。
ぜひご自宅でさまざまな料理と合わせてお楽しみください。
おすすめのミュスカデをご紹介
ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・シュール・リー ドメーヌ・ド・ラ・ヴァンソニエール
フランス・ロワール地方のドメーヌ・ド・ラ・ヴァンソニエールが手掛けるシュール・リー製法で造られたミュスカデ。
このドメーヌの60haのブドウ畑は、海からの影響で豊富な日照量と穏やかな気温ながら、定期的な雨と強風がブドウの木を乾燥させることで、病害を発生しにくくしており、極力自然に近い農法である「リュット・レゾネ」を用いて栽培しています。
また、環境に配慮したブドウの栽培方法「テラ・ヴィティス」の認証を取得しており、ブドウ樹とテロワールを尊重したワイン造りが行われています。
ミュスカデ100%で造られるこのワインは、輝きのある淡いイエローから麦わらの色調で、レモンやシトラスなどの柑橘系に清涼感のあるハーブのアロマ。
一口含むと穏やかで心地よい酸味があり、いきいきとしたフレッシュな果実味に、ほんのり旨味が感じられます。











