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フランス東部ロンルソーニエにて行われた競売にて、
ルイ16世時代に造られた1774年産のワインが史上最高額で落札されたようです。
ワインはジュラ地方の銘酒「黄色ワイン(ヴァン・ジョーヌ)」で、競売にかけれたのは計3本。
このうちの1本がなんと、10万3,700ユーロ(約1,320万円)というから驚きです。
残る2本も、7万6250ユーロ(約970万円)と7万3200ユーロ(約930万円)と、
これまでの記録を上回る価格で落札されたようです。
約250年前の熟成ワイン。一体どんな味がするのでしょうか?
ヴァン・ジョーヌとは
ヴァン・ジョーヌは、スイスとの国境付近にあるフランス・ジュラ地方で
造られる白ワインの一種で、
美しい黄色の外観からヴァン・ジョーヌ(黄色ワイン)と呼ばれています。
ジュラ地方は、自然豊かな地域で、
ジュラ地方の地層からは多くの化石が出土しており
太古の昔は海底だったという研究結果もあります。
ちなみに、恐竜が生きていた時代のジュラ紀という名前は、
この地方から名付けられました。
そんなジュラ地方を代表する白ブドウと言えばサヴァニャン。
トラミナー系統の白ブドウ品種で、
ヴァン・ジョーヌはこのサヴァニャンというブドウから造られます。
サヴァニャンはとても成熟が遅い品種で、時には収穫が12月になることもあり、
同系統のゲヴュルツトラミネールと比べると香りは弱いですが、
厚い果皮に酸と糖度がしっかりとあり、長期熟成に向いたワインを生み出す
ポテンシャルを持ったブドウ品種です。
ヴァン・ジョーヌは、色だけではなく香りも味わいも通常の白ワインと異なり、
とても個性的なワインです。
一般的な白ワインの味わいよりも、酒精強化ワインのシェリー酒に似た風味をもっており、
クルミやナッツ、アーモンドのような芳ばしいアロマに、
アプリコット、マンゴーなどのドライフルーツやハチミツのような
芳醇な甘いニュアンスがあり、さらにクミンやカレーを思わせるスパイス香が感じられ、
とてもエキゾチックな香りを楽しめます。
後述しますがその独特な香りと味わいは、長期熟成とその熟成方法によるもので、
この熟成によってかなりの長期に耐えられるワインができるのです。
ヴァン・ジョーヌはジュラ地方のさまざま産地で造られていますが、
中でも有名なのがシャトー・シャロンです。
シャトー・シャロンは、モンラッシェや、シャトー・ディケムと並ぶ
フランスの5大白ワインの1つで、
18世紀頃には現在のようなヴァン・ジョーヌの製法が確立されていたようです。
ヴァン・ジョーヌの特殊な造り方
ヴァン・ジョーヌの独特な香りと風味は、その特殊な造り方によって生まれます。
まずは、完熟したサヴァニャンを白ワインの醸造方法と同じ行程で発酵させ、
極辛口のワインに仕上げます。
ワインは228リットル(60ガロン)のオーク樽でゆっくりと熟成させますが、
この際、樽をワインでいっぱいに満たさず、
ワインが蒸発するための空間を作っておきます。
樽熟成を進めていくと、空気が接触することにより、
樽の中のワインが少しずつ気化して目減りしていきます。
通常のワインであれば、ここで過度な酸化を抑えるために、
ウイヤージュ(同じワインを樽に足す作業)をするのですが、
ヴァン・ジョーヌはそれを行いません。
結果、ワインは酸素と接触を続けることになり、
2~3年ほどして産膜酵母という酸素を好む菌が活発化して、
酵母の膜がワインの表面に発生します。
この酵母の膜は、フランス語で「ワインの花」を意味する
フルール・デュ・ヴァンと呼ばれ、ワインの酸化が緩やかになり、
じっくりと熟成されていきます。
その際に、ソトロンと呼ばれる香り成分が生成され、
ヴァン・ジョーヌ特有のフレーバーやアロマが生まれます。
ヴァン・ジョーヌは6年3か月の熟成が義務付けられており、
この長い熟成期間でワインの量は当初の60%程の量にまで減り、
こうして出来上がったヴァン・ジョーヌは、
クラヴランと呼ばれる通常のワインのボトルよりも太目で、
特殊な形状の620mlの瓶に詰められ出荷されます。
市場最高額で落札されたヴァン・ジョーヌの味わい
話を戻して、ヴァン・ジョーヌの気になるお味はというと…
1994年に、今回の市場最高額で落札されたヴァン・ジョーヌと、
同生産者・同世代のヴィンテージの
ものをテイスティングしたワイン専門家らは
「クルミやスパイス、カレー、シナモン、バニラ、
そしてドライフルーツの風味がする」
と表現し、
10点満点で9.4点を付けたそうです。
なんだか複雑そうな味ってことは分かりますね。
ヴァン・ジョーヌは、日本ではあまり見かけないワイン。
ワインショップソムリエでも、今は残念ながら取扱いがないのですが、
飲む機会があれば是非一度試してみてください。
1,320万円のワインの味の片鱗が味わえるかもしれませんよ。