南フランスで重要のブドウ品種ムールヴェードルとは

南フランスで重要のブドウ品種ムールヴェードルとは
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南フランスで重要のブドウ品種ムールヴェードルとは

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ムールヴェードル

本日は、「ムールヴェードル」というブドウ品種についてご紹介します。

ムールヴェードルとは

「ムールヴェードル」とは、
スペインではガルナッチャに次いで重要な黒ブドウ品種で、
フランスでは特に南フランスで重要なブドウ品種と言われていますが、
起源はスペインにあるとされています。
フランスでは「ムールヴェードル」と呼ばれ、
オーストラリアとアメリカでは「マタロ」と呼ばれています。

このブドウ品種は、小粒で甘く、果皮の厚い実から造られるワインは、
若い時はアルコールやタンニンが強く、香味が強烈で熟成の可能なブドウです。
土壌への適応力が高いため、広い地域で栽培されていますが、
完熟までに時間のかかる品種の為、南仏の暑い夏が必要で、
温暖な気候を必要とするため地中海沿岸が適地とされています。
今ではラングドック地方でよく使用されており、
以前は安ワインのイメージが強いラングドックですが、
この品種のおかげで今では
素晴らしいワインを造る生産者が増えているのも事実です。

ムールヴェードルの主な産地

前述のとおり、ムールヴェードルは世界のさまざまな産地で栽培されており、
現在栽培面積が一番大きい産地は原産地でもあるスペインで、
なかでもバレンシア州、ムルシア州でモナストレルの名で広く栽培されています。
しかし近年では、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった
国際品種の人気におされ、栽培面積は徐々に減少傾向にあります。
一方、南フランスのプロヴァンス地方では、バンドールなどで栽培面積が増えており、
ムールヴェードルを50%以上使用し、グルナッシュやサンソーをブレンドした
赤ワインが造られています。
またニューワールドでは、アメリカのカリフォルニア州とワシントン州で栽培され、
1860年代にカリフォルニアに植えられてから、マタロの名で広く栽培されてきましたが、
1968年に2,700エーカーあった栽培面積は、2000年代までに1/3以下にまで減りましたが、
また2010年以降少しずつ栽培面積を増やし始めています。
ワシントン州では1983年に初めてのムールヴェードルが植えられ、
1990年代と2000年代には栽培面積を増やし、
ヴァラエタルワインからローヌスタイルのブレンドワインが造られています。
オーストラリアでは、1830年代にヨーロッパから持ち込まれ、
南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーでは、
かつてドイツ北部にあったプロイセン王国からやってきた
キリスト教徒によって栽培され、
イングランドからきた移民によって急速に広められました。
アメリカ同様マタロの名で広く栽培され、
もともと酒精強化ワインの原料として造られていました。
近年になりグルナッシュやシラーズとブレンドされ、
それぞれの品種の頭文字を取って「GSM」と称されています。
オーストラリアの中でももっとも古くからムールヴェードルを栽培している産地は、
ニューサウスウェールズ州のリヴァリーナや、
南オーストラリア州のリヴァーランドで、
2005年に初のヴィンテージをリリースしたバロッサ・ヴァレーにある
ターキーフラット・ヴィンヤードは、1840年代創業の老舗ワイナリーで、
ムールヴェードルのヴァラエタルワインの先駆者です。

ムールヴェードルの特徴

暑く乾燥した土地を好む品種で、栽培地域を選ぶため、
比較的栽培が難しく低収量の品種ですが、
地中海沿岸の温暖な気候はとても適しており、
今後地球温暖化が進むことで今までムールヴェードルには冷涼で、
栽培に適していなかった産地でも栽培が可能になり、
生産量が増える可能性もあります。
ムールヴェードルの果粒はやや小さめですが果皮が非常に厚く、
糖度がとても高くなります。
そのため、色素が濃くタンニンの量も豊富でアルコール度数の高いワインができ、
長期熟成に向いたタイプとなります。
出来るワインは、色調が濃く黒に近い紫色で、
カシスやブルーベリーといった黒系果実と、イチゴやラズベリーなどの赤系果実に、
フルーツを煮詰めたジャムやコンポートのような甘いニュアンスが強く感じられます。
また、産地により出来るワインの風味が異なり、
スペインのムールヴェードル単一で造られるワインは、
果実味がとても強くパワフルなフルボディワインになり、
フランスのローヌ地方で造られるムールヴェードルは、
なめし皮のワイルドなニュアンスに、しっかりとしたタンニンとスパイシーさも感じられ、
ジビエなどの野性味のある味わいの料理によく合うワインが造られています。
またニューワールドのオーストラリアでは、
グルナッシュやシラーズとブレンドされることが多く、
エレガントで複雑味のある味わいのワインができ、近年評価が高まっています。
アメリカでは、フランスに比べタンニンがまろやかなものが多く、
スミレやベリーの華やかなアロマに、土っぽいニュアンスの香りが含まれていて、
比較的飲みやすい印象のワインが多く造られています。

「ラフィット」の元醸造家も魅せられた「ムールヴェードル」

ボルドーの五大シャトー「ラフィット」の醸造家としても活躍してきた
エリック・ファーブル氏もこのムールヴェードルに魅せられ、
今ではラングドックでその土地にあったワイン造りを行っています。

エリックさんご夫妻が来日

※エリックさんご夫妻が来日しました!

もちろんこのムールヴェードルの品種の可能性を感じ、
ボルドーで磨かれたブレンド技術を用いて、
さらにボルドーよりもブドウ栽培に適した恵まれた気候のラングドックで
素晴らしいシャトーを行っています。
そのシャトー「リヴィエール・ル・オー」ですが、
このシャトーが造る赤ワインでは、
ムールヴェードルは、滑らかなタンニンをもってワインの骨格を造り
シラーは果実味とスパイシーな風味、
グルナッシュは柔らかい質感とボリュームをワインに与えています。

「私がこのワインを作る上で重視したのは、
滑らかでバランスが良く、
あれこれ考えずにシンプルに美味しく飲める事です」
これも、この土地で「ムールヴェードル」の良さを最大限発揮できる、
この品種のポテンシャルなのかもしれません。

なかなか聞いたこのないブドウ品種かもしれませんが、
ムールヴェードル、一度ぜひお試しください。

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