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樽香が強いワインが一世風靡した時代がありました。
しかしながら、最近はブドウ本来のフレッシュな味わいのワインを好む
生産者が増えてきているため、特に新樽による熟成が減少傾向にあるとか…
本日は、ワインの風味に大きな影響を与える樽熟成についてお話したいと思います。
木樽の歴史と役割
「樽」の起源はおよそ2000年前、
フランス西部で生活していた遊牧民族のケルト人が、
木の板を張り合わせた丸い樽を作ったのがその始まりとされています。
樽の役割は、もともとはモノを貯蔵したり、輸送したりするための容器でした。
昔から、頑丈で、水分に浸しても腐りにくく、アルコールにも強いという理由から、
オーク材が樽の材料として使われていました。
樽が輸送のための容器から、酒の熟成のための容器として使われるようになったのは、
16世紀末頃、フランスのコニャック地方で造られたブランデーを
アメリカ大陸に輸送した際、透明な液体が茶色がかった色に変わり、
香りと味わいがまろやかになっていたことに気づいたのがきっかけでした。
樽熟成の特徴とは?
ワインを木樽で熟成することによって得られる効果は大きく2つあります。
「穏やかな酸化でワインがまろやかになること」
「木樽のタンニン分が溶出してワインに香りと複雑な風味を与えてくれること」
木は木材として加工されてからも呼吸するため、
木目から微量な酸素が入り込み、穏やかにワインが酸化することで、
香りや色、味わいが深くなっていきます。
また、木樽からポリフェノールやリグニンといった成分が溶出して
ワインに深みを与え、樽のもつ成分がさまざまな香りを生み出します。
樽による香りとしては、バニラ、ココナッツ・ミルク、燻製香、キャラメルなど。
樽の熟成効果(香り)は、樽の大きさ、樽の新旧によって変わってきます。
木樽が小さいほうが液体の接触面積が増え香りが強くつきます。
また新旧ならば、新しい木樽のほうが香り成分の含有量が豊富で強く香ります。
瓶熟成・ステンレスタンク熟成とは
ワインを熟成させる方法には、樽だけでなく、
ステンレス製のタンクを使用した熟成方法と、瓶内で熟成させる方法もあります。
ステンレス製のタンクを使用する利点は、
空気を通さないことでワインの酸化を防げる上、
タンク自体を低い温度に管理することができるため、
ブドウ本来の味をしっかり出したフレッシュな味わいのワインに仕上げられます。
ブドウの品種によって個性的な味わいを発揮するものがあるため、
そのような個性を引き立たせるにはステンレスタンクが最適です。
また、瓶内熟成はコルク(またはスクリューキャップ)で栓をした状態で
熟成がおこなわれ、樽とは違い空気の出入りが非常に少ないため、
ワインが持つリンゴ酸、酒石酸、乳酸などの数多くの有機酸がエタノールと反応し、
フルーティーな香りの主成分であるエステルによって、
フルーティーな香りが生まれやすくなります。
瓶内熟成は主に、フルーティーでフレッシュな味わいにしたい
白ワインやロゼワインを造るときに多く用いられます。
樽の種類によっても味や香りは変わる
さて、樽熟成と瓶内熟成の違いが分かったところで、
次に樽の種類による味わいの違いを見ていきましょう。
木樽の材料は基本的にオーク材が用いられています。
産地は大きく分けてアメリカ産とヨーロッパ産の2つに分けられ、
同じオーク材でもそれぞれ異なる特性をもっています。
アメリカ産のオークは、ホワイトオークとも呼ばれ、主に北米で産出されています。
木目が細かく、バニラの香りが特徴のバニリン香が発生しやすい木材です。
アメリカンオークでの熟成は、スパイスのようなニュアンスがつくのも特徴で、
ココナッツやディルシードのような風味があります。
最近では、アメリカンオークの持つ香りが強いことから使う生産者は
減少傾向にあるようですが、スペインのリオハ、オーストラリアのシラーズ、
カリフォルニアのジンファンデルなど、アメリカンオークを好んで使う生産者もいます。
フレンチオークは、アリエ県トロンセ産とニエーブル県ヌヴェール産の
セシルオークが有名で、約120~200年たったものを樽材として使用します。
フランスの冷涼な気候により、木がゆっくりと成長するため、
密度の濃い木質になり、そのため、樽成分の抽出には時間がかかりますが、
繊細できめ細やかな樽の香りや味わいが抽出されます。
アメリカンオークより樽の価格も高く、
高級ワインの熟成に多く使われるのは、フレンチオークです。
熟成方法もワイン選びの1つのポイント
ここまで読んでいただくと、樽によってワインの味に影響が出ることは
十分にご理解いただけたと思います。
熟成期間が長ければ、影響を与える期間も長くなり、
味に与える影響も大きくなります。
樽熟成には、単に木の香りを付けるということだけではなく、
スペインの赤ワインのように、
酸化熟成の効果だけを目的とした樽を利用するケースもあります。
木目を通した緩やかな呼吸によって、ワインを酸化熟成させ
ステンレスや瓶で熟成するよりも深みと複雑さを持ったワインに仕上げます。
樽の種類によっても味や香りが異なってくるので、
ワイン選びをする際の参考にしてみてください。