ワインをデキャンタージュするとどうなる?どんなワインに必要なの?

ワインをデキャンタージュするとどうなる?どんなワインに必要なの?
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ワインをデキャンタージュするとどうなる?どんなワインに必要なの?

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

デキャンタージュ

デキャンタージュという言葉を耳にされたことはありますか?
本格的なレストランで年代物の赤ワインを頼んだときに、
ソムリエからデキャンタージュをすすめられることもあります。
そこで、本日はデキャンタージュについてお話したいと思います。

ワインを「開かせる」デキャンタージュとは

デキャンタージュとは、ワインをデキャンタと呼ばれるガラス容器
に移し替える作業のことを言います。
特に、年代物の赤ワインで行われることが多いですが、
若いワインにも必要な場合があり、その目的は2つあります。

目的の1つは、澱(おり)を除くこと。
2つ目は、ワインの味をまろやかにし開かせること。

それでは、デキャンタージュの目的を1つずつ説明していきましょう。
年代物の赤ワイン、特にボルドー産のフルボディタイプのものは、
ボトルの底部分にオリ(澱)と呼ばれる沈殿物が溜まっているものがあります。
澱は、タンニンという渋みの成分と、
赤い色素成分のアントシアニンといったポリフェノールや
たんぱく質が熟成(ワインが緩やかに酸化)していく中で結合し、
結晶化したものです。
この澱は、タンニンとポリフェノールが豊富な熟成した良質な
赤ワインに多くみられます。
そんな良質なワインの証拠でもある澱ですが、
澱の成分は渋み成分のタンニンと
色素成分のポリフェノールなどが結合したもの。
飲んでしまっても害はありませんが、
口に含むととてつもなく苦みを感じます。
さらに、舌触りもよくありませんので、
なるべくグラスに入らないように注ぐことが必要で、
その時に澱をグラスに入れないために行う作業がデキャンタージュなのです。
デキャンタに移し替えることで、ボトルの底にオリを沈殿させ、
ワインの上澄みだけを移し取ることができます。

また、デキャンタージュを行うことで、
ワインの味がまろやかになると言われています。
酸素はワインにとって欠かせないパートナー。
ワインは酸素に触れることで、変化、成長、熟成していきます。
ワインは、ボトルの中ではわずかな隙間にある酸素に触れていることで、
ゆっくりと酸化し熟成していきます。
ワインの中には、ボトルを開けてグラスに注いだ段階で、
まだ本来のポテンシャルが十分発揮されないワインもあります。
中には保存時に冷やしすぎてしまっていて香りが閉じてしまうワインもあり、
そんな時に、デキャンタに移し替えしっかりと空気に触れさせることで、
硬い風味がまろやかになるなどと考えられています。

また、使用していたコルクがとても気密性の高いものだった場合、
ボトル内の酸素が少なく熟成の進み方が不足してしまい、
還元臭という不快臭が発生してしまうことがあります。
要するに、ボトル内のワインが酸欠になっている状態です。
この還元臭は、有機硫黄化合物などが還元して出てくる臭いなので、
例えるとゆで卵のような、玉ねぎの腐ったような臭いが近いかもしれません。
ブショネなどの他の種類のワインの異臭と違って、
この還元臭は酸化させることで取り除くことができます。
この場合も、デキャンタに移し替え酸素に触れさせることで、
ボトルを開けておいておくよりも短い時間で酸化が進み、
還元臭を消せることができます。
こういった効果も、ワインをデキャンタージュする目的の1つです。

デキャンタージュをする前とした後での違い

実際、デキャンタージュする前とした後では、
どれほどワインの味がまろやかになるのか、
それを科学的に証明した結果があります。
これは中国のある研究グループが、
赤ワインに含まれる成分がデキャンタージュによって
どのように増減するかを調べたもので、
分析したのは、赤ワインに含まれる4種の有機酸と、
16種のポリフェノールです。
デキャンタに入れた赤ワインの「酸味」の成分である有機酸と、
「渋み」の成分であるポリフェノールを時間の経過とともに、
どのように変化するか観察した結果、
ほとんどの有機酸・ポリフェノールが減少していくことが確認され、
酸味と渋味が減って味がまろやかになる効果を裏付けました。

また、デキャンタージュをする時に、温度を上げて行った実験では、
有機酸・ポリフェノールとも減少が加速し、
より照明を明るくしてデキャンタージュした場合は、
ポリフェノールの減少は速まりましたが、
有機酸の減少速度はほとんど変わらないという結果になりました。
デキャンタージュする部屋の温度、明るさによっても変化がある
という面白い研究結果でした。

若いワインから熟成したワインにもデキャンタージュが必要

デキャンタージュすることによって、澱を取り除くことと、
ワインの酸味や渋みをまろやかにすることが分かりましたね。
それでは、どんなワインにこのデキャンタージュをした方がいいのか。

まず、澱が多く出るワインの条件としては、先ほどもお話した通り、
タンニンとポリフェノールが豊富な熟成した良質な赤ワインに多くみられます。
また、赤ワインの澱とは異なり白ワインにも、
キラキラ光るガラスの破片のような沈殿物ができることがあります。
これはワインの成分である酒石酸が、
カリウムなどのミネラル分と結合してできた結晶で、
いいヴィンテージのブドウから造られたミネラル豊富な白ワインほど
酒石酸ができやすくなります。
そのため通常、瓶詰めしてから3年以上は経過しているワインには、
澱が発生している可能性があるため、デキャンタージュが有効です。
特に年代物のボルドーワインは、タンニンが豊富なため、
澱が発生しやすくデキャンタージュされることが多いようです。

しかし、注意しなければいけないことが1つ。
長期熟成している年代物のワインの場合、すでにボトルの中でしっかりと
熟成が進んでおり、デキャンタージュをすることで急激に酸化が進み、
味を損ねてしまうことがあります。
そのため、かなりのヴィンテージワインに関しては、
デキャンタージュをせずに、澱が入らないようにゆっくりとグラスに
静かに注ぐという選択肢も必要でしょう。

若いヴィンテージのワインに関しては、瓶内で熟成が不十分だった時に
でてくる還元臭を消したり、先ほどの研究結果でも出ていたように、
有機酸やポリフェノール量が減少することで、
味わいがまろやかになるという点からも、
デキャンタージュによって、ワインがもともと持っているポテンシャルを
うまく引き出してくれる可能性があります。
若いヴィンテージの白ワインに関しては、赤ワインに比べ酸素に敏感ですが、
カリフォルニアワインや、上質なブルゴーニュワインなど、
木樽でしっかり熟成されたオイリーなワインは、デキャンタージュして
少しの間置くだけで香りと味わいが豊かになることもあります。
しかし、これらの若いヴィンテージワインも長時間のデキャンタージュは
過度な酸化で味わいを損ねる可能性もありますので長く置きすぎず、
食事の1~3時間前に移し替えておくくらいで充分です。

デキャンタージュしない方が良いワイン

デキャンタージュは必ずしも必要というわけではなく、
例え、熟成したフルボディの赤ワインであっても
澱がそれほどきにならない、すでに飲み頃でこれ以上の酸化は不要と思う場合は、
無理にデキャンタージュをせず、必要に応じておこなうのが良いでしょう。

白ワインやスパークリングワインは、カリフォルニアワインや、
上質なブルゴーニュワインなど、木樽でしっかり熟成された
オイリーなワインであれば、デキャンタージュすることで
味わいと香りがより豊かになる場合がありますが、
一般的には、白ワインやスパークリングは酸やフレッシュさが特徴でもあるため、
デキャンタージュすることで揮発してしまうこともありますので、
香りが閉じているもの、しっかりとしたコクがあるはずなのに硬くなっているなど、
本来のポテンシャルを感じられないという時だけ
デキャンタージュを試してみるのをおすすめします。

また赤ワインであっても、もともと繊細な味わいと香りを持つピノ・ノワール
のような品種は、デキャンタージュが向かないものもあります。
繊細なワインは酸素に触れるほど、香りが失われ味も損なわれてしまいます。

デキャンタージュの方法

それでは、実際にデキャンタージュはどのようにするのかご紹介します。

デキャンタージュの前に、大事な事前準備があります。
デキャンタージュするワインを数時間前から垂直に立てて置き、
澱を瓶底に沈殿させておきます。
ちなみに、年代物のワインの場合は飲む数日前から立てておき、
できる限り触らず、そっとしておきましょう。

まずは、澱が舞わないように静かに抜栓し、
デキャンタに澱が入らないように静かに慎重に注ぎます。
ワインボトルのネックの部分に黒井沈殿物が見えてきたら、
すぐにワインを注ぐのをやめます。
それからは、時間を置かずすぐにワインをサーブしてください。

また、若いヴィンテージワインの味をまろやかにするための
デキャンタージュをする場合は、
抜栓したら、ワインをデキャンタに一気に注いで空気を含ませ、
さらに容器をスワーリング(回して空気に触れさせる)します。
空気をより多く取り込む場合は、ワインを高い位置から大胆に
デキャンタに入れる方法もあります。
デキャンタージュする時間は、若いヴィンテージワインだと
ワインの力強さにより1〜3時間程度、
熟成された年代物のワインはサーブする数分~10分くらいまで
行うのが良いと言われていますが、
あくまでワインの状態によっても変わってきます。

ワインをおいしく飲むためのデキャンタージュ

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