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シャトー・ペトリュスは、多くのソムリエがいつか飲んでみたいと憧れるワインの1つ。
世界的ワインの評論家であるロバート・パーカーに
「神話の象徴」とも称されたシャトー・ペトリュスは、
2006年のボルドープリムールで史上最高値の34万円をつけるなど
数々の伝説的エピソードがあるワイン。
そこで、本日はシャトー・ペトリュスについてお話します。
シャトー・ペトリュスは5大シャトーを凌駕するほどのワイン
シャトー・ペトリュスは、ボルドー右岸のポムロル地区に位置するシャトーです。
ボルドーと言えば、シャトー・ラフィット・ロートシルトなどの
5大シャトーがあることで有名な左岸のメドック地区が注目されていますが、
この格付けもない右岸のポムロル地区で造られるワインが、
わずか100年の間に、5大シャトーを凌ぐ高値で取引されるようになりました。
シャトー・ペトリュスは、18世紀中ごろからはアルノー家の所有地として記録が残っており、
当時は、シャトー・ペトリュス・アルノーという表記でした。
そんなシャトー・ペトリュスが一躍脚光を浴びたのが、
1878年に開催されたパリ万国博覧会でのこと、
金賞を獲得したことで販売価格もメドックの2級並みの水準となりました。
20世紀初頭、アルノー家が株式を一般公開し、
リブルヌ地方でホテルを経営していたエドモンドがシャトーの株式を買い始め、
その後シャトーの単独オーナーとなりました。
シャトー・ペトリュスをわずか数十年で5大シャトーを凌ぐ高値で取引されるまでにした
立役者が2人います。
そのうちの1人がシャトーのオーナーとなったマダム・ルバです。
マダム・ルバは、シャトー・ペトリュスの品質向上に尽力し、
評価をどんどん上げていき、メドックの格付け1級シャトー以上の価格までに高めました。
そして、もう1人がジャン・ピエール・ムエックス氏です。
当時、ボルドーワインの一大消費国であるイギリスへの輸出はほとんどが、
すでに世界的に人気となっていたメドック地区のワインだったのに対し、
ほとんど無名だったポムロル地区やサンテミリオン地区のワインに早くから目を付け、
ワインを片手に地道に売り込みを続けていき、市場を拡大していきます。
そして、1949年からはシャトー・ペトリュスの独占販売権を獲得し、
より一層シャトー・ペトリュスを世界市場に売り込むことに尽力します。
功を奏したのが、1960年代アメリカ市場に目を向け、
ニューヨークの人気レストランであるル・パヴィヨンのオーナーにプロモーションを行い、
海運王オナシス、ケネディー、ロックフェラーといった多くのセレブに愛され、
一気にステイタスシンボルとなりました。
その後、1980年代に世界的ワイン評論家となったロバート・パーカー氏が
「ペトリュスはもはや神話の象徴」と大絶賛をしたことから、
シャトー・ペトリュスの地位は不動のものとなりました。
ファーストラベルのみを造るなどペトリュスのさまざまなこだわり
シャトー・ペトリュスの生産量は、平均して年間4500ケース(約54000本)ほどしかありません。
セカンドラベルもなく、ファーストラベルのみ造られています。
シャトー・ペトリュスのこだわりは、栽培から収穫、醸造に至るまであり、
中でもグリーンハーベストといって、まだ熟していない青い果房を摘み取り、
収穫量を抑えて残りの果房を成熟しやすいようにする間引きを夏場におこないます。
また収穫は、2日間ですべて手摘みで行われます。
この時、午前中はブドウに水滴がついていることもあるため、
それらが乾く午後のみに収穫がおこなわれますが、
1984年には収穫直前に雨が降ってしまったため、
ブドウに付着した水滴をヘリコプターの風圧を利用して吹き飛ばすなど、
通常では考えられないこだわりで常に高い品質を守り続けています。
ボルドープリムール史上最高値を記録したペトリュス
2006年のボルドープリムール(先物取引)でつけられた
2005年ヴィンテージのペトリュスの価格は1本34万円!
これはプリムール史上最高値を記録しました。
ベーシックなヴィンテージのものでも平均して30万円ほど、
グレートヴィンテージのものになると価格は100万円ちかく値がつき、
最高値は、1961年ヴィンテージで、なんと300万円を超えます!
ロバート・パーカー氏がパーカーポイントで100点満点をつけたヴィンテージは、
1989年と1990年で、飲み頃は2014~2054年だそうです。
シャトー・ペトリュスは、ベーシックヴィンテージでも最低10年は寝かせないと
本来のポテンシャルを引き出せないと言われていますので、
グレートヴィンテージになると、最低20~30年の熟成が必要です。
ペトリュスの味わいや特徴
シャトー・ペトリュスの味は「一度飲んだら忘れられない奇跡の味」などと評され、
ダークチェリーやブラックチェリーなどの黒系果実のアロマにスグリなどの
フレッシュな赤系果実のアロマも加わり、メルロー主体ですが、
カベルネ・ソーヴィニヨンのような幾重にも折り重りあう芳醇なボディと複雑みがあり、
熟成が増すごとにトリュフや土、なめし革のような独特の深みのあるアロマが増して、
濃厚さがありながらも、メルローの持つしなやかなさは失われておらず、
ジャムのような粘り気と圧倒的な存在感が絶妙なバランスで感じられます。
ペトリュスに使用されている品種は、メルローとカベルネ・フランで、
セパージュの比率はヴィンテージごとに異なり、
基本はメルロー95%、カベルネフラン5%ですが、
近年はメルロー100%で造る年も増えてきています。
一般的にはメルローはおおらかで丸みがある口当たりで早飲みできるものが多いですが、
ペトリュスは、黒粘土という膨潤性のある特殊な粘土が表土に出ている珍しいテロワールで、
ここで造られるメルロは肉厚でまろやかなワインを造りだし、
最低でも10年、グレートヴィンテージでは20~30年の熟成が必要と言われています。