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普段ワインしか飲まないという方でも、コニャックという名前を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。
ブランデーの中でもブドウを原料として造られるグレープブランデーのコニャックは、ワインラバーなら興味をもっている方も多いはず。
そこで、本日はコニャックについてお話します。
コニャックとは
コニャックとは、フランスのボルドー地方北部にあるコニャック地方で造られるブランデーのことで、製造方法も厳しい規定があり、
その基準をクリアしたこの地域で造られるブランデーだけが、コニャックを名乗ることができます。
コニャックに使用するブドウの品種には決まりがあり、ユニ・ブラン、コロンバール、フォル・ブランシュの3品種が認められており、全体の90%以上を使用しなくてはなりません。
全体の10%未満であればフォリニャン、モンティル、セミヨン、ジュランソン・ブラン、セレクト、メスリエ・サン=フランソワの品種のブドウを使用することも認められています。
パンデミックの影響を受けず、年々売り上げを伸ばすコニャック
フランスの国立コニャック協会(BureauNationalInterprofessionneldu Cognac(BNIC))によると、2021年のコニャック売上高は約31%増の36億ユーロであったことを発表しました。
これは、日本円にして4900億円という市場規模で、この売上増にはアメリカと中国の市場が大きく関係しており、2か国でオールドビンテージの販売が伸び、最大の輸出先であるアメリカは11%増の1億1500万本で、2番目に多い中国は56%増の3400万本、欧州は8%増の3710万本となったことを明かしました。
この売上増は、パンデミック前の2019年と比べても伸びていると指摘されており、今後さらにコニャックの売り上げが伸びていく見通しです。
日本企業が世界最古のコニャックハウスを復活再生
ワイン、スピリッツ、ビールなどを輸入卸販売する株式会社都光が、世界最古のコニャックハウスである「Cognac Augier (コニャック オージエ)」の国内正規販売を2021年8月31日から開始しました。
Cognac Augier (コニャック オージエ)は、コニャック地方で最も歴史あるコニャックハウスで、1643年に当時ワイン商をしていたフィリップ オージエにより設立されました。
19世紀から20世紀にかけては、その品質の高さから議会や大使館でふるまわれるようになり、第二次世界大戦下ではパリの解放委員会でも提供されていましたが、1980年からハウスが休眠状態になり、その蒸溜メソッドを継承すべく現代に蘇りました。
単一品種で造る「シングルグレープ」、単一のクリュで採れたブドウのみを使って造る「シングルテロワール」、それぞれの個性を際立たせるため、製品ごとに蒸溜方法を変えた「シングルディスティレーションメソッド」という、まったく新しいラインナップで世界最古のコニャックハウスのコニャックを復活再生させました。
コニャックのおもな産地
コニャックは大きく6つの産地で造られており、クリュと呼ばれるブドウを栽培する区画ごとの独特な土壌や微気候の影響を受けて、固有の特色を持ったオー・ド・ヴィー(原酒)が造られます。
中でも高品質なブドウが造られる4つの産地をご紹介します。
●グランド・シャンパーニュ
コニャック地方の中央部に位置する1万3766ヘクタールの産地で、最高品質のコニャックを生み出しています。
白亜石灰質の地下層で地表は粘土質石灰石が特徴的で、エレガントで力強くボリューム感があるコニャックを生み出します。
●プティット・シャンパーニュ
グランド・シャンパーニュの南西に広がる1万6171ヘクタールの産地で、土壌はグランド・シャンパーニュと同じ白亜石灰質の地下層で地表は粘土質石灰石で、造られるオー・ド・ヴィーも似た特徴を持ちますが、グランド・シャンパーニュで造られるコニャックより早熟なタイプです。
グランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュの2つのクリュから造られたオー・ド・ヴィーで、グランド・シャンパーニュの比率が50%以上のコニャックは、フィーヌ・シャンパーニュとして市場に出回ることもあります。
●ボルドリー
グランド・シャンパーニュの西北に位置し、4160ヘクタールと最も面積の狭い産地。
石灰岩の分解による珪土を含む粘土質土壌で、ここで造られるコニャックは、ブレンド用としておもに使用されます。
●ファン・ボア
グランド・シャンパーニュの北部に位置し、3万4265ヘクタールとコニャック最大の栽培面積で、粘土を含む石灰質の土壌から造られるオー・ド・ヴィーは、より重くより早熟で、ブレンドのベースとして使用されることが多いです。
コニャックの製造方法
コニャックの造り方はまずワインを醸造し、出来上がったワインをポットスチルという器具を使って2回蒸留し、アルコール度数を高めます。
その後、リムーザン産のオーク樽で熟成されます。
オークの風味と色素がブランデーに移り琥珀色に染まります。
コニャックは、最低熟成年数は3年、アルコール分40度以上と定められています。
コニャックの等級
コニャックなどブランデーには、熟成年数を表す等級があり、コニャックは全国コニャック事務局(BNIC)によって厳正な基準が定められています。
さらに熟成年数が長いブランデーに関しては、メーカー独自の等級が使われる場合もあります。
熟成年数を表す「コント」という単位があり、コニャックは収穫翌年の4月1日を「コント0」とし、1年ごとにコントの数を加算していきます。
コント00は蒸留してブランデーで作られた年で、コント0が熟成1年目となり、コント1が熟成2年目とカウントされます。
このコントは、コニャックのボトルにXOやVSOPの文字として表示されます。
コント2以上でV.S.(Very Special)と表示され、ブドウが収穫されてから3年目、最低貯蔵2年を意味しています。
V.S.O.P.(Very Superior Old Pale)はコント4以上で、他にもRêserva、Vieux、Rare、Royalと表示されることもあります。
XO(Extra Old)はコント10で、最低貯蔵10年を意味しており、他にもHors d’âge、Extra、Ancestral、Ancêtre、Or、Gold、Inpêrialと表示されることもあります。
おもな銘柄
ヘネシー
アイルランド人のリチャード・ヘネシーによって1765年に蒸留所が設立された、250年の歴史をもつコニャックメゾンで、年間約5000万本を販売し、コニャックの世界市場で40%のシェアを持つ世界最大のコニャック生産企業です。
熟成に使用する樽は樹齢100年以上のフランスオーク樽を使用し、オー・ド・ヴィー(原酒)は、最も古いものだと200年以上も前から保存しており、これらをブレンドして最高品質のブランデーが造られています。
ブランデーは年配層の人が楽しむイメージがありますが、近年は若者向けに、ピュア・ホワイト、ヘネシーブラック、フィーヌ・ド・コニャックなど、幅広い層に向けたアピールを試みた商品も販売されています。
レミー・マルタン
1724年創業の老舗で、1841年ポール・エミール・レミー・マルタンが事業を管理したことで、ブランドは大きく成長しました。
レミーマルタンのコニャックは全てグランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュの2つのクリュからつくられたオー・ド・ヴィーのブレンドで、グランド・シャンパーニュの比率が50%以上のフィーヌ・シャンパーニュで、その卓越した品質が大きな注目を集め、世界的に販売されるようになりました。
また、ブランデーの蒸留方法も独特で、ブランデーは一般的に沈殿したリーズと呼ばれるブドウのかすをろ過した後に蒸留しますが、
レミーマルタンはリーズをろ過せずに蒸留します。
これはレミーマルタンの伝統的な蒸留方法で、リーズを残してゆっくり2回蒸留することでアミノ酸を多く含ませ、レミー・マルタン独特のコクのある味わいが生み出されます。
コニャックのおすすめの飲み方
芳醇な香りと風味を楽しむのには、常温でストレートで飲むのがおすすめです。
アルコール度数が40度を超えるため、水とともに楽しみましょう。
ストレートでは強すぎるという方には、ロックで味わうのもいいですが、まだ、コニャックを飲みなれていないという方には、ソーダやジュースなどで割ったり、カクテルにして楽しむのもおすすめです。
ただ、VSOPクラス以上はストレートで飲むのがコニャックの味わいをより楽しむことができます。