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ワインほど食事と合わせて楽しめるお酒はないのではないかと思うほど、ワインは、合わせる食事によって味わいが変化し、また、合わせるワインによって食事のおいしさも変わる気がします。
マリアージュやペアリングについて、このソムリエ手帳で何度かお話していますが、本日は、改めてワインをより楽しむための食べ合わせについてお話します。
失敗しない食べ合わせは香りを合わせる事
まず、ワインと食事を合わせることをペアリングといい、そこから生まれる最高の組み合わせをマリアージュと言います。
ペアリングには3つの組み合わせ方があり、
・似ているもの同士を合わせる
・同じ産地のものを合わせる
・対照的であるものを合わせる
この中でも、もっとも大事なのが、似ているもの同士を合わせるです。
ワインと食事の似ているもの同士という意味は、ワインと食事の香りの似ているもの同士を合わせると言い換えてもいいかもしれません。
ワインの香りを表現するのに100以上の香りがあります。
その中には、さまざまな食材の名前があります。
「イチゴやスグリなどの赤い果実」
「シナモンやグローブなどのスパイス香」
「グレープフルーツやレモンなどの柑橘類」なんて聞いたことありませんか?
ワインの原料はブドウだけなのに、面白いことにワインはそのブドウの品種によってイチゴやチェリー、コーヒーやシナモン、チョコレートなどさまざまなフレーバーを感じることができるのです。
似たもの同士の組み合わせとして、ワインを選ぶときにお料理のソースに使われるハーブやスパイスやフルーツなど、それと同じ香りのするワインを選ぶのも1つです。
赤ワインをより楽しむための食べ合わせ
赤ワインは、アルコール度数やタンニンの量によって味わいや深さが異なり、ボディという言葉で表現されます。
フルボディ、ミディアムボディ、ライトボディの3タイプに分けられ、合わせる料理はワインの濃さ(ボディ)によって料理のソースや味付けの濃さを合わせるのがおすすめです。
例えば、ライトボディであれば、代表的なワインは、フランスのボジョレー地方で造られるボジョレーヌーボーなど、爽やかな飲み心地でタンニンが少なく、フルーティなので、塩だれの豚肉のしゃぶしゃぶ、白身魚のポワレ、鶏むね肉のロースト、あさりの白ワイン蒸しなど和食や、さっぱりとした塩ベースの魚介や肉料理がぴったり。
また、ミディアムボディであれば、果実味もアルコール度数もやや抑えめで、コク、酸味、渋味のバランスがちょうどよいワインが多いため、フルボディやライトボディに比べ選べるワインの量も多く、合わせるお料理の幅も広いので、和洋折衷さまざまな料理が出てくる家庭料理との相性がとれやすいです。
そして、フルボディは、ニューワールドワイン、オールドワールドワインともにタンニンが豊富でしっかりとしたコクのある味わいのワインが多いので、すきやき、チンジャオロース、ビーフシチュー、ミートローフなど脂がしっかりある食材と、デミグラスなど濃い色のソースで仕上げた料理が合います。
また、フルーツやスパイスを使った料理などとも相性がいいです。
白ワインをより楽しむための食べ合わせ
白ワインの一般的な醸造方法は、白ブドウを破砕した後に直ぐに圧搾され、果汁のみが発酵工程へと進むため、赤ワインのように渋みの成分であるタンニンがなく、酸味とフレッシュさが味わいの特徴です。
そのため、赤ワインよりも味付けがあっさりとしたお料理と合わせやすく、例えば和食で素材の味を生かした味付けや出汁を基調にした料理などには、甲州の白ワインやシュール・リー製法のミュスカデなど、料理の味を引き立ててくれるさっぱりとした味わいのワインが合います。
また、白ワインには酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酢酸、コハク酸など有機酸が含まれており、赤痢菌、サルモネラ菌、大腸菌などの食中毒菌に有効であることが知られています。
そのため、生牡蠣やお刺身などいただくときに一緒に飲むと食中毒予防にもなるので、とてもおすすめです。
豆知識:やめた方が良いワインとの食べ合わせ
最後に、ワインとの食べ合わせに合わない食材をいくつかご紹介します。
中でももっともワインとの相性が悪い食材が、数の子。
数の子もキャビアと同じ魚卵なので、一見するとシャンパンなどのスパークリングワインにとても合いそうに見え、お正月のお節料理などお祝い事のお料理に入っているので、スパークリングワインと合わせてみようなんて思う人も多い食材だと思いますが、これが驚くほど合わず、数の子の生臭さが口の中に広がってしまいます。
残念ながら、白ワイン、赤ワイン、ロゼワイン、スパークリングワインのどれに合わせても合うことがないのが、数の子。
また、日本酒にベストマッチする塩辛や干物もワインとは残念ながら、相性が悪く、こちらも生臭さが残ってしまう食材。
しかし、この2つの食材は少し手を加えることでワインとの相性が良くなる食材でもあり、塩辛に関しては、胡椒をかけることでワインとの相性が良くなり、干物は、ほぐしてスライスしたカブやダイコンなどの野菜とオリーブオイルでマリネすることで、ワインとの相性も良くなりますので、もし、気になる方は一度おためしください。
食材にマッチすることを目的に造られたペアリング専用ワイン
シドニー・ウィルコックス・ヴァインドライドシリーズ
バーン・ヴィンヤーズは、1960年に最初のブドウを植えて以来、少しずつ畑を増やしながら3世代にわたって成長してきたバーン・ファミリーのワイナリー。
現在はクレア・ヴァレーと、リヴァーランドにいくつもの畑を所有しており、中にはあのペンフォールズのグランジを生み出した伝説的醸造家マックス・シューベルトが見出した畑も所有しています。
当初はブドウ栽培農家としてブドウを他のワイナリーに供給していましたが、2008年から元詰めとしてワインを造り始め、2010年からマスター・オブ・ワインの一人 Phil Reedman氏が参画することになり、2018年には、オーストラリアワイン評価の第一人者ジェームス・ハリデーが最高評価を下し、「ダークホースワイナリー」としてトップ10に入賞するまでに成長を遂げました。
そんなバーン・ヴィンヤーズが手掛ける『シドニー・ウィルコックス・ヴァインドライドシリーズ』は、サウス・オーストラリアの豊富な食材をもっと楽しむために、ワイン造りの段階からそれぞれの食材にマッチすることを目的に造られたシリーズで、ラベルに描かれるのは、そのワインを合わせるべき食材です。
豚肉とのペアリングにおすすめのワイン
シドニー・ウィルコックス・グルナッシュ・シラーズ
ジャミーで重厚な味わいを造るシラーズと、華やかな香りで柔らかい質感を持つグルナッシュをブレンドし、ミディアムボディの香り高いスタイルに仕上げ、豚肉料理に合う、バランスの良い味わいに仕上げました。
ラズベリーやカシスを思わせるジューシーな果実味に、レザーのような深み、野性味のある香りが続き、料理の味わいを引き立てます。
豚肉を使った様々な料理によく合います。また、ハムやソーセージなどの前菜、トマトベースのソースを使ったパスタや煮込み料理にも合います。
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牛肉やラム肉とのペアリングにおすすめのワイン
シドニー・ウィルコックス・ヴァインドライド・シラーズ
サウス・オーストラリア、スコッツ・クリークにある自社のシラーズ単一畑のブドウを使用し、ブドウの果実は木につけたまま水分を飛ばし、凝縮度を高めます。
フレンチオーク樽のスモーキーな香りにシラーズのブドウに由来する、ブラックベリーやカシスの果実味と、クローヴや黒コショウ、リコリスなどのスパイスの風味が一体となって、非常にリッチな味わいのフルボディに仕上がっています。
牛肉や羊肉、ラム肉など赤身の肉を使った料理によく合います。
シンプルなバーベキューや厚切りの牛肉ステーキ、ラムカツなど、肉の味わいをダイレクトに味わう料理にぴったりです。
また、スパイシーな味わいを持つワインなので、同様にスパイスを使った料理にもお勧めです。例えば、モロッコ料理、スパイスたっぷりのラム・タジンなど、味わいの強い料理にもよく合います。
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カニなどの甲殻類とのペアリングにおすすめのワイン
シドニー・ウィルコックス・オールドヴァイン・ジビッボ
オールドヴァイン・ジビッボは、1970年植樹のジビッボ種(マスカット・オブ・アレキサンドリア)の古木から造られるワインです。
ジビッボ種が植えられている土地は、古代の地質由来のライムストーン石灰岩が下層にあり、その上に赤い砂が堆積してできた非常に痩せた土壌のため、収穫量は自然ととても低くなりますが、代わりにより凝縮したブドウを得る事ができます。
収穫した果実は、時間をかけながら優しくプレスし、低温で発酵されます。大部分はステンレスタンクでの発酵を行いシャープな酸、活き活きしたフレッシュな味わいを表現しますが、全体のうち僅かな量だけ、フレンチオーク樽を使って複雑味を与えます。
ミネラル豊かでシルキーなテクスチュアを持つ、辛口の白ワインで、ソフトシェルクラブや、エビなど甲殻類を使ったアジア料理によく合います。
また、ポルチーニを使ったパスタ、スパイシーな料理、パッションフルーツアイスクリームや季節の果実を使ったデザートとの相性も抜群です。
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魚料理とのペアリングにおすすめのワイン
シドニー・ウィルコックス・ホワイト・フィールドブレンド
サウス・オーストラリア、リヴァーランドにある自社畑のブドウを、セミヨン40%、シュナン・ブラン30%、ミュスカデル20%、コロンバール10%の比率でブレンドしたワインです。
現代の醸造法は品種ごとの個性を出すためタンクを分けて醸造する方法が普通ですが、このワインは昔のワイン造りの手法に倣って混醸する製法で造られました。
複数のブドウ品種を同じタイミングで収穫した後、品種ごと分けたりせず一つのタンクにその時収穫された全種類のブドウを入れ一緒に醸造します。
こうすることで、それぞれのブドウがお互いの欠点を補いあって、クリーミーなテクスチュアを持つバランスが良い厚みのあるワインに仕上がります。
お刺身も含め、シーフードとの相性が抜群のワインです。
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ロブスターとのペアリングにおすすめのワイン
シドニー・ウィルコックス・オークド・シャルドネ
2000年に植樹されたシャルドネの畑のブドウを使用。
はるか昔の、牡蠣など貝類の殻が大量に含まれた石灰岩土壌の上に、赤砂が堆積した非常に痩せた土壌で、ブドウの収穫量はとても低く抑えられ、凝縮度があがります。
収穫した果実は、時間をかけながら優しくプレスし、低温(12~18度)で大部分をステンレスタンクでの発酵するため、シャープな活き活きしたフレッシュな酸のある味わいが感じられますが、一部発酵後は澱とともに、アメリカンオーク、フレンチオークの樽で熟成させるため、リッチな質感、クリーミーな舌触りの滑らかな複雑味のあるワインに仕上がります。
柑橘の引き締まった酸に、黄桃のようなボリューム感、余韻にバニラ香が香りクリーミーな質感を持つので、ロブスターにバターやクリームソースを添えた料理や、鶏肉のクリーム煮、たっぷりのバターを使った魚介のムニエル、タルタルソースを添えた、シーフードフリットなどがおすすめです。
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鶏肉とのペアリングにおすすめのワイン
シドニー・ウィルコックス・リザーヴ・リースリング
単一畑のリースリングを使用したワインでブドウです。
土壌は岩石上のライムストーンが主体の石灰質土壌で、エレガントなワインを生み出すポテンシャルがある畑で、ブドウは収量制限をして凝縮度を上げます。
完熟したリースリング種が表現する、柑橘やパイナップルを思わせる華やかなアロマと、シャープな酸、ミネラル豊かな塩味を含んだ厚みのある味わいで、フライドチキンや、スパイスを使ったエスニックスタイルの鶏肉料理によく合います。
サラダにもおすすめです。