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ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェに並ぶブルゴーニュの最高峰の白ワインムルソー。
意外にもこれほどの高品質なワインを生み出すムルソーにはグラン・クリュがなく、トップクラスでもプルミエ・クリュのみ。
そこで本日は、ムルソーのワインについてお話します。
ムルソーワインの歴史
白ワインの銘醸地として知られるブルゴーニュで、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェと並び、3本の指に入るムルソーが、一躍注目を集めるようになったのは、意外なことに1970年代に入ってから。
原産地統制法が制定された当時、高い税金がかけられることを嫌った栽培農家の人たちがグラン・クリュの格付けを拒否したため、グラン・クリュのないムルソーは、1960年代まではネゴシアンにブドウを安く買い取られていて、ネゴシアンにブドウを買ってもらえず
廃業する栽培農家も多かったそう。
そんなムルソーの知名度が一気に上がったきっかけが、1970年代におきたアメリカのシャルドネブームでした。
ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェに比べ安価で、濃密でオークが効いたこってりスタイルのシャルドネの味わいはアメリカ人の好みに見事にピッタリと合い、1980年代にかけてアメリカへの輸出量がみるみる増加していきました。
今でこそムルソーと言えば白ワインというイメージですが、1950年代までは赤ワインの方が多く造られ、白ワインよりも高値で取引されていました。
ムルソーワインは熟成前と熟成後の2段階で楽しめる
ムルソーで造られるワインは、若いうちからバターとヘーゼルナッツの香りに、しっかりとしたミネラル感とオイリーな味わいが特徴ですが、寿命が長く熟成するにしたがい、濃いめのゴールドの色調になり、ムルソーの豊富なミネラル感と果実味のボリュームが増し、濃密なクリーミーさにきれいな酸が見事なバランスをもち、奥行きのあるエレガントな白ワインへと変化していきます。
ムルソーワインの特徴
前述のとおり、ムルソーのワインは肉厚でコクのある味わいが特徴です。
それも標高230~360mのなだらかな東向き斜面に畑が広がっており、その土壌は、シャルドネを栽培するのに最適な白色泥灰土を含んだ石灰岩層で、ミネラルを豊富に含んでいるため、骨格のしっかりとした奥行きのある白ワインを造ることができます。
ムルソーのトップクラスであるプルミエ・クリュの中でも、ムルソーの御三家と言われているのが、シャルム、ペリエール、ジュヌヴリエールの3つ。
この御三家の畑はピュリニー・モンラッシェ側の南側にありますが、シャルムとジュヌヴリエールは、傾斜も緩やかで土壌がより深く、造られるワインはよりふくよかで濃密なスタイルになります。
ペリエールは、急な斜面表土が薄いため、よりミネラルが豊かでエレガントなスタイルの味わいになります。
ムルソーのおもなプルミエ・クリュは、御三家のシャルム、ジュヌヴリエール、ペリエールに続き、レ・ブシェール、カイユレ、レ・クラ、グット・ドール、プリュール、ポリュゾ、レ・サントノ・ブランが代表的です。
おすすめのムルソーワイン3選
ムルソー ドメーヌ・マニュエル・オリヴィエ
ドメーヌ・マニュエル・オリヴィエは、ニュイ・サン・ジョルジュからコート・ド・ニュイ方面に上がる、標高430メートルほどに位置しているため、この地域でも比較的涼しい気候で、畑はビオロジック栽培、ビオディナミ栽培を研究し、その長所をいくつも取り入れ、土地とブドウの安全を第一に考えたブドウ栽培を行っています。
当主マニュエル・オリヴィエ氏の実家はカシスなどを造っている農家でしたが、1990年に一念発起しドメーヌを開業しました。
そして、マニュエル・オリヴィエ氏がブルゴーニュの中でも新世代ドメーヌの中でも注目を集める要因となっているのが、優れた醸造コンサルタントとしての顔。
彼のアドバイスを受けようと、多くの生産者が彼に助けを求め、畑仕事と醸造という過密スケジュールの合間を縫って、クライアントに最適なアドバイスをしており、クライアントには、なんとあのドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティもおり、ワインの熟成に関して彼のコンサルタントを受けています。
樹齢30年のシャルドネ100%から造られるこのムルソーは、柑橘やパイナップルなどの果実味とアロマにハチミツの芳醇なアロマが感じられる複雑味、凝縮感のある味わいのワインです。
ムルソー マルシャン・トーズ
パスカル・マルシャンは国をまたいで活躍するワインメーカーで、その活躍の舞台はブルゴーニュをはじめ、オーストラリア、チリなど南半球にまで及んでおり、醸造化としてキャリアをスタートさせたのは1985年、ポマールにあるコントアルマンでのこと。
1999年にはドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレのチーフワインメーカーとして勤め、7年間醸造長を務め、その後、農家から買い入れた葡萄で醸造するネゴシアンブランドであるマルシャン・トーズ(旧パスカル・マルシャン)と、自社畑のブドウを使うドメーヌ・トーズです。
ネゴシアンと言っても、パスカル・マルシャンはマイクロネゴス(マイクロ・ネゴシアン)と呼ばれる小規模のネゴシアン。
買付から醸造まで一貫して行い、ブドウを購入する畑は彼のポリシーに賛同する人のみで、定期的に本人が畑を訪ね、ビオディナミ農法含め、木の管理など細かい部分まで直接見ています。
『ドメーヌは小規模でなければならない。なぜなら、一つ一つの樽やボトルがユニークであり、注意深く扱はなければならないからだ』と語り、ボトルの1本1本にまで強いこだわりを持ったワイン造りをおこなっています。
そんなマルシャン・トーズがビオディナミで造るムルソーは、柑橘にパイナップルやハチミツなどの芳醇な果実味とアロマがあり、しっかりとした骨格に、キレのある酸が感じられ、複雑味と凝縮感のある1本に仕上がっています。
ムルソー ボワ・ドゥ・ブラニー
ドメーヌ・コンテス・ド・シェリゼは、ムルソーとピュリニー・モンラッシェ村のちょうど間にある丘の上のブラニーという集落を本拠とする、長い歴史を持つドメーヌです。
ブラニーとは村より小さなコミューンの名で、行政単位としては場所によってムルソー村とピュリニー・モンラッシェ村の一部となっている場所で、ここで造られた白ワインは「ムルソー」か「ピュリニー・モンラッシェ」かのどちらかを名乗ることになっており、ブラニーを名乗るのは赤ワインだけ。
生産量が少ないうえに赤ワインにしか使われない名称であることから、人気の高いブルゴーニュであっても、未だ知る人が多くない隠れた銘醸地の一つです。
このドメーヌが造るスタンダード・キュヴェがこの「ムルソー・ボワ・ド・ブラニー」です。
標高400m、他の1級畑を見下ろす高台で、森のすぐそばに広がる小さな畑で、斜面下方は1級畑にも接している、条件の良い畑です。
標高の高さと、森を抜けてくるひんやりした空気のおかげで、高い酸を持ったブドウが育ちます。最大勾配35%の斜面のおかげで、畑はまんべんなく太陽の恩恵を受け、健康的なブドウが育ちます。
パイナップルやリンゴなどの果実のアロマが感じられる滑らかでリッチな質感と複雑な味わいを持つワインです。
おすすめのワイングラス
リーデル・ヴィノム シャルドネ(モンラッシェ) ワイングラス
265年以上もの歴史を誇るオーストリアのワイングラスの老舗であるリーデル。
リーデルは、世界で初めてブドウ品種ごとに理想的な形状のワイングラスを開発したメーカーです。
こちらのグラスは、白ワインにしては大きめにつくられており、ブルゴーニュ地方の上質な白ワインに最適な形状を備えています。
複雑で柔らかみのある香りが、グラス内にバランスよくひろがり、ワインは柔らかい酸味を敏感に感じる舌の両サイドへと導かれます。
ふくよかなシャルドネの魅力を堪能してください。