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世界一厳しい環境基準でワイン造りをおこなう南アフリカは、環境だけでなく人にもやさしいワイン造りで、その品質の高さからも非常に注目を集めています。
まさにこれからの世界がお手本とするようなワイン産地である南アフリカから非常にコストパフォーマンスの高いワインが日本に上陸しました!
そこで、本日はソムリエがおすすめしたい南アフリカのワイン5選をご紹介します。
大自然のテロワールが魅力的な南アフリカのワイン産地
アフリカの最南端にある南アフリカ共和国は、国土が日本の3倍半ほどあり、インド洋沿岸に広がる平野から、カラハリ砂漠、2,000~3,000m級の山脈に、内陸部は高原地帯と、非常に多様な地形で成り立っています。
国立公園や自然保護区が数多くあり、こうした大自然の美しさを残しつつも、南アフリカはアフリカ大陸最大の経済国で、アフリカ唯一のG20参加国でもあります。
多用な地形で形成されているため、気候は地域によって異なり、 西部は温帯の乾燥気候、南部は地中海性気候、東部は西岸海洋性気候、内陸部はサバナ気候で、ワイン産地の多くが大西洋、インド洋に面した西ケープ州に集中しています。
大西洋に面しているケープタウンは地中海性気候に属し、ブドウの発育が良く、海からの風と太陽の光に恵まれ、良質の水や湿度の少ない土壌は、南フランスにも類似していると言われています。
海に隣接した土壌は、「ケープ・ドクター」と呼ばれる南東からの乾燥した強風によって、ウドンコ病などのブドウ特有の病気を防ぎ、防虫剤等の使用を最小限に抑えることができるなど、ケープタウンはワイン造りに好条件の気候が揃っています。
おもなワイン産地は、西ケープ州、北ケープ州、東ケープ州、クワズール・ナタール州、リンポポ州の5つの州ですが、中心地は西ケープ州で、中でもよく知られる産地は、スワートランド、ステレンボッシュ、パールの3つの地区があります。
地球環境にも人にもやさしいワイン造り
南アフリカのワイン造りのすばらしさは、なんといっても自然と人にやさしい環境に配慮したワイン造りです。
1998年に、減農薬や減酸化防止剤、リサイクル方法などを定めた「環境と調和したワイン生産(IPW)」のガイドラインが制定されて以降、20年ほどたった現在では、95%以上のワイナリーがこのガイドラインに沿ったワイン造りを行っています。
地球温暖化や大量生産などによる地球規模の環境問題を解決すべく、持続可能な地球社会にするためのサステイナビリティを保証するシールを2010年から採用するなど、生物の多様性を保護する試みを続けています。
また、南アフリカのワイン造りは地球環境にやさしいだけでなく、ブドウ栽培農家によって1918年に南アフリカブドウ栽培者協同組合の「KWV(Ko-operatieve Wijnbouwers Vereniging Van Zuid-Afrika Beperkt)」が設立されたことで、ワインの品質向上と安定したワイン産業が取り組めるようになりました。
南アフリカワインの歴史と特徴
南アフリカワインは、ニューワールドとしては比較的古く17世紀半ばからワイン造りが行われてきました。
今から350年以上も昔の1659年に最初のワインが誕生したことが、ケープ植民地を建設したヤン・ファン・リーベックによって記録されています。
オランダの東インド会社が、インドやアジアに向かう途中のケープタウンに食糧供給基地を設け、そこでブドウの栽培とワイン造りを始めたのが最初でした。
その後、17世紀後半に移住してきたフランス・ユグノー派の人々によって、ワイン造りが発展していきました。
今では日本でもすっかりおなじみになった南アフリカワインですが、1990年代に入るまでは、それほど多くの輸出量ではなく、1994年のネルソン・マンデラ政権下でワイン輸出市場が開放されたことがきっかけで、一気に世界へ広まり、1992年2200万リットルだった輸出量が、2014年には約20倍の4億2200万リットルにまで増加し、2018年度のワイン生産量は9.5億リットルで、世界の生産量ランキングで9位と、世界の主要ワイン生産国となりました。
代表的なブドウ品種と造られるワインの味わい
栽培面積は約10万haで、白ワイン用の白ブドウが55%、赤ワイン用の黒ブドウが45%栽培されています。
かつては、白ブドウの生産量の方が圧倒的に多かったですが、最近は輸出の増加とともに赤ワイン用の黒ブドウ品種が増えてきています。
白ブドウは、フランス・ロワール地方原産の品種であるシュナン・ブランが最も主要な品種で、現在は南アフリカが世界最大の栽培面積を誇っています。
南アフリカでは「スティーン」という別名で呼ばれており、非常に凝縮感があるきりっとしたコスパのよい辛口の白ワインを生み出します。
その他、コロンバール、ソーヴィニョンブラン、シャルドネなどの栽培も近年増加傾向にあります。
黒ブドウは、1925年ペロード教授によって、ピノ・ノワールとサンソーの交配で生まれた南アフリカ独自の交配品種であるピノタージュがもっとも有名です。
ピノタージュから造られる赤ワインは、非常に濃い鮮やかな赤色で、木いちごやドライフルーツにスモーキーな香りが重なったアロマが特徴的で、味わいは酸味が強く、渋みもしっかりとしており、南アフリカでは、カベルネ・ソーヴィニヨンと並び称せられます。
また、カベルネ・ソーヴィニョン、シラーズ(シラー)などの栽培面積も増えており、とくにシラーズは、この10年間で栽培面積が顕著に伸び、南アフリカでは赤ワイン用のブドウ品種としては、2番目に広く栽培されています。
このように、さまざまななブドウ品種が増えてきたことで、最近は単一ワインだけでなく、複数のブドウ品種を使ったより深みと複雑味のあるブレンドワインも多く造られるようになってきました。
ブッシュヴァイン
南アフリカでのブドウ栽培では、「ブッシュヴァイン」という栽培方法が古くから使われてきました。
一般的なブドウ栽培では、垣根作りといってワイヤーを数本張って、そのワイヤーにブドウのツルや枝を這わせ、縦に伸ばす方法が採られていますが、ブッシュヴァインはワイヤーを使わず、まるで盆栽のように樹をそのまま地面に低く立てた方法で栽培します。
樹の背丈が低い方が根から吸いあげた水分を樹全体に効率よく行き渡らせることができるため、乾燥した大地ではとても有効な栽培方法で、灌漑を一切行わないことでテロワールを鮮明に表現することができます。
また、樹齢35年以上の古木のブドウ樹をオールド・ヴァインといい、このブッシュヴァインで栽培される古木をオールド・ブッシュ・ヴァインと言います。
オールド・ブッシュ・ヴァインは、より地中深くまで根をはっているため、より土壌のミネラルなどの栄養を多く吸収しブドウの果実も凝縮感のある味わいになります。
こうしたオールド・ブッシュ・ヴァインは、南アフリカワインには欠かすことのできない非常に希少なブドウ樹のため、2016年からは古木の保護をおこなう「オールド・ヴァイン・プロジェクトOVP」が発足し、2019年ヴィンテージからは、認定されたブドウ畑の樹齢35年以上のブドウ樹から造られたワインには、世界初となる植樹年を記した認定シールが貼られるようになりました。
おすすめの南アフリカワイン
南アフリカのテロワールを活かしたワイン造りで注目を集めるパーデバーグ・ワインズ
パーデバーグ・ワインズは、1941年創業のワイナリーで、パーデバーグとは、パール地区にあるオランダ語で「馬の山」を意味するPerdeberg山にちなんでつけられました。
PAARL(パール)、 SWARTLAND(スワートランド)、さらにDARLING(ダーリン)、ELGIN(エルギン)といった銘醸地に畑を有しており、南アフリカワインのコンクールで「Winery of the year」にも選ばれた、南アフリカをけん引するワイナリーの1つです。
極度の乾燥と海から吹く強い風が特徴の南アフリカのテロワールでは、収量を重視したブドウ栽培をする場合、灌漑設備を導入し人工的に水分供給をしながら垣根仕立てをすることが最も効率的ですが、パーデバーグ・ワインズでは、昔から受け継がれてきたブッシュヴァインというワイヤーを使わず、樹をそのまま地面に立てる伝統的な方法で栽培しています。
樹の背丈が低い方が根から吸いあげた水分を樹全体に効率よく行き渡らせることができるため、乾燥した大地ではとても有効な栽培方法で、灌漑を一切行わないことでテロワールを鮮明に表現することを第一に考えています。
おすすめのワイン
SSR・レッド パーデバーグ・ワインズ
SSRには、ウェスタン・ケープにある、垣根仕立ての畑と、ブッシュヴァインの畑のブドウを両方使用されます。
ブドウ品種ごとに最適な時期に収穫・醸造をおこない、最終的にバランスを取りながらブレンドするため、完熟ブドウのボリュームたっぷりの果実味を表現し、口当たりよく、滑らかな質感をもつワインに仕上がります。
サンソー、カベルネ・ソーヴィニョン、シラーズ、ムールヴェードル、カベルネ・フランから造られるレッドは、ブラックベリー、ブラックチェリー、カシスなどの果実の香りの中に、シナモン、ナツメグなどの甘苦いスパイス香、インク、なめし皮、たばこなどの野生的なニュアンスを感じます。
凝縮感ある果実味とほのかな甘みが豊かに広がり、ボリュームがあるが、タンニンが程よくカジュアルに楽しめる1本。
SSR・ホワイト パーデバーグ・ワインズ
シュナン・ブラン、ミュスカのブレンドから造られるホワイトは、清涼感のあるハーバルなアロマに白桃などフルーツのニュアンスがあり、温度が上がるにつれ、華やかな香りが溢れだします。
口に含むと、柔らかな果実味と香りが広がり、ほんのりとした甘みに爽やかな酸とミネラル感があり、シーフード料理やパスタによく合います。
ヴィンヤード・コレクション・ピノタージュ
Paarl(パール)地区にある樹齢30年程のブッシュヴァインのブドウを使用。
収穫は2月中旬の早朝まだ寒い中でおこない、ブドウは完全徐梗し、果実の色素や風味をしっかり抽出するため、二日間スキンコンタクトさせます。
ステンレスタンクでアルコール発酵をおこない、300リットルのオーク樽へ移し熟成させます。
ブラックベリー、カシス、牡丹を感じさせる華やかな香りと、ピノタージュ特有のなめし皮や黒胡椒も感じられます。
アタックは軽やかで、まろやかな甘みと優しい酸味に、緻密なタンニンを感じられ、豊満な果実味とスパイシーさがあり深い味わいを楽しめます。
ヴィンヤード・コレクション・シュナン・ブラン
Paarl(パール)地区にある樹齢30~40年のブッシュヴァイのブドウを使用。
ブドウは完全徐梗し、数時間スキンコンタクトさせてからジュースを絞ります。
ブドウ品種が持つピュアな果実味を表現するため、フリーランジュースのみ使用し、発酵が始まる前にそのジュースに不純物が入らないよう、細心の注意を払って造られます。
リンゴ、カリン、柑橘を思わせる果実香、ハチミツ、石灰・貝殻のニュアンスがあり、穏やかな酸とミネラルの中から、しっかりとした果実味が現れる印象で、ボリュームがあり後味に苦みが残ります。
ミネラルに富んだ若々しいフレッシュな味わいで、シーフードや鶏肉料理全般によく合います。
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ヴィンヤード・コレクション・ソーヴィニョン・ブラン
畑はDarlingとElgin地域にある、樹齢20年程のブッシュヴァインのブドウを使用。
土壌はbokkeveld Shaleと呼ばれる頁岩と、花崗岩の混じる土壌です。
ブドウは完全徐梗し、数時間スキンコンタクトさせてからジュースを絞ります。
ブドウ品種が持つピュアな果実味を表現するため、フリーランジュースのみ使用し、発酵が始まる前にそのジュースに不純物が入らないよう、細心の注意を払って造られます。
刈ったばかりの青草を思わせる鮮烈な香り、アスパラガスやメロンのようなアロマを続けて感じ、シャープな辛口で、生き生きとした酸が感じられ、フレッシュなソーヴィニョン・ブランの魅力が発揮されています。