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一昔前までは、ワイン=高級なお酒というイメージが強かったですが、
最近はスーパーで500円以下で買えるものも増えてきて、
ずいぶんとリーズナブルなイメージになってきましたよね。
しかし、ワインによっては1本数百万円するものもあり、
驚くほどの価格の差があるのもワインの奥深さであり魅力。
そこで、本日はこうした価格はどのように決められているのか。
ワインの価格についてお話します。
ワインの価格の決め方
冒頭で触れたとおり、ワインによっては1本500円以下で買えるものもあれば、
1本数百万円するものもあり、現在市場に出ているワインの価格を比較すると、
その価格差はなんと1万倍以上。
同じブドウという原料から造られるワインがどうして、こんなにも個々によって価格が違うのか、
こうしたワインの価格はどのように決まるのか。
とっても気になりますよね。
まずワインを造る上でかかるコストから考えてみましょう。
ワインを造る際、原料となるブドウが必要です。
ブドウを自分で栽培するなら、ブドウ畑の土地代(借地代)、人件費、農作業にかかる
肥料などの費用があり、この中でももっとも価格に差が出るのが、土地代と人件費と言われています。
とくにワインはテロワールを反映するので、造られる場所により、その味わいは異なります。
フランスワインの高級産地でも知られるブルゴーニュでは、その畑ごとに格付けがあり、
特級畑ワイン、第1級畑ワイン、村名ワイン、地方名ワインに分かれています。
最上級の特級畑(グラン・クリュ)に認定されているのは39の畑で、
1本数百万円の値がつくことで知られているロマネ・コンティも、
このブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネという村にあり、
「ロマネ・コンティ」という名のグラン・クリュから造られます。
ヴォーヌ・ロマネは、ブルゴーニュ地方全体の2%しかないと言われている
グラン・クリュを8つ包括している村で、ワインの聖地とも言える場所。
そんな畑で造られるブドウと、ニューワールドの広大な土地にある名もない畑で栽培されるブドウでは、
同じ品種のブドウを栽培したとしても、やはり土地代の観点からみてもブドウの単価が
異なるのは納得ですよね。
また、人件費の部分では、その国の最低賃金の差もさることながら、
どれだけ人の手が加わり、手間をかけて育てるかによって人件費は異なります。
収穫ひとつとっても、人の手によって1つ1つ手摘みでおこなうものと、
トラクターで一気に収穫するのでは、かかる人件費が異なります。
その他、ワインを造る上では、醸造と熟成のコスト、樽代、瓶詰代、
ワインを醸造する上での人件費などがかかり、さらに販売には販売経費がかかってきます。
ワインはブドウをアルコール発酵させて造るという原理はどの生産者も同じですが、
その醸造と醸成のプロセスは細かい部分で差があり、先ほどのブドウの栽培と同じように、
機械的に温度管理のされた大型のステンレスタンクで大量に生産したものと、
天然酵母で発酵させ、人の手でピジャージュしたりするものでは、
やはりかかる労力に差があり人件費に差がでてきます。
そして、ワインの大きな魅力ともいえる熟成という部分も、ワインのコストが大きく反映されます。
ボジョレーヌーボーなどの一部のワインをのぞき、
ほとんどの赤ワインと一部の白ワインは収穫した年にワインをリリースするのではなく、
最低でも1年半から長いものであれば10年以上の時間を経てリリースされます。
その間にかかるワインを保管しておくための醸成のコストなどもワインの価格に反映されます。
こうして1本のワインに仕上がるまでに、どれだけの手間と時間がかかったかで、
ワインの価格というものが決まっていきます。
数百円のワインと、数百万円のワインの価格の差とは?
とは言え、いくら丁寧に時間をかけてじっくり造ったとしても、
数百円のワインと、数百万円のワインの製造プロセスにそれだけの差があるのかと
疑問にもたれる方もいますよね。
最後にワインの価格に大きな差を生み出すのが、需要と供給のバランスです。
前述のとおり、1本のワインができるまで、相当な手間と時間をかけて世にリリースされたものと、
機械的に大量生産されたワインでは、やはり価格差は生まれますが、
それでも、原価で考えたら1万倍以上の価格差にはなりません。
その差は、希少性や、誰もが知っているブランド力というものが需要を生み出し、
それにどれだけの供給量があるかにより、差が生まれます。
高級ワインの代名詞ともいえるロマネ・コンティは、
1.8haの畑から生産される年間の本数は平均で約6,000本。
多い年でも7,000本程度で、一般的なブドウの収量で言えば同じ広さの畑で比較すると、
その収量は1/5ほどと超低収量で造られるため、希少性はとても高くなります。
一般庶民からすると、1本数百万円もするワインをこぞって欲しがるなんて正直想像つきませんが、
それでもその希少性の高さからも、飲んでみたいと思わせる人が多く、
年々その需要は高まっているのです。
ワインは同じものでも年代によって価格差が出てくる?
その需要と供給のバランスという点からも、ワインの価格を過去と現在で比較してみると、
同じワインであっても、こうした希少性の高いワインは年々需要が高まり、
価格はどんどん跳ね上がっています。
先ほどのロマネ・コンティを例にとっても、30年前であれば20万円もしない価格で購入できましたが、
現在リリースされている2010年代の若いヴィンテージでも200万円を超えます。
ロマネ・コンティに関しては、桁外れではありますが、
ボルドーの5大シャトーのファーストラベルもやはり20年で2~3倍の価格になっており、
カルトワインと言われるカリフォルニアのプレミアムワインも年々価格が上昇しています。
このように、ワインの価格は需要が高まるほどに際限なく高まっていくのが面白いところでもあります。
ワインの値段と美味しさは比例しない
ワインの価格についてお話してきましたが、それでは高ければ高いほどワインはおいしいのか、
と思われる方もいらっしゃいますよね。
たしかに、時間と手間をかけて造られたワインは大量生産で造られたワインよりも、
ワインそのもののポテンシャルが高く、長期熟成することができ、
長い期間じっくりと熟成することで、深みや複雑味が増しますが、
必ずしもそれがおいしいワインとは断言できません。
おいしさとはあくまで主観的な問題でもあるからです。
1000円台のワインをおいしいと感じる人もいれば、
10000円以上のワインでなければおいしいと感じないという人もいるでしょう。
ただ、先ほどの製造プロセスにおけるワインの原価の差でいうと、
どんなにこだわりの栽培で、低収量で、丁寧に醸造、醸成したとしても、
高級ワインの原価は1,500~2,000円と言われています。
機械で大量生産したものと比べても、何百倍もの差があるというわけではないのです。
そのため、高ければ高いほどおいしいと感じるかどうかは飲み手次第なのかもしれません。
まとめ
ワインの価格についてお話してきましたが、そのほかにもワインの原料となるブドウの
出来によってもワインの価格は変動し、グレートヴィンテージと呼ばれる当たり年では、
とくに高級ワインほど価格は上がります。
さきほどもお話したとおり、だからと言って、価格が高ければ高いほど
必ずしもおいしいワインということではなく、
あくまで飲み手次第でその価値が変わってきます。
価格というのは、総合的なそのワインの評価であって、
自分の好みのおいしいワインは、日々飲み比べて楽しみながら探すのが一番良いのかもしれません。