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ニューワールドの中でもダントツの生産量を誇るアメリカ。
アメリカワインの90%がカリフォルニアで生産されており、デイリーで飲めるカジュアルなワインから、フランスなどのオールドワールドの高級ワインよりもはるかに高額なカルトワインと呼ばれる高級ワインまでじつにさまざまなワインが造られています。
そこで、本日はカリフォルニアワインの特徴とソムリエおすすめのカリフォルニアワインをご紹介します。
世界で人気のカリフォルニアワイン
2020年の世界のワイン生産量のランキングでは、イタリア、フランス、スペインについで、堂々の第4位!
ニューワールドワインの中では、ダントツトップのアメリカ。
そんなアメリカワインの実に90%がカリフォルニア州で生産されているんです。
カリフォルニアワインの特徴は、凝縮感のある果実味のワインが多いこと。
ジューシーでフルーティーな果実味とパワーを感じられるものが多く、複雑さが魅力のフランスワインに比べ、分かりやすく一口目の第一印象が良いので、ワインを飲みなれない人でも好きになるワインが多いです。
霧によって凝縮感のあるブドウが育つユニークなテロワール
そんな凝縮感のある果実味を生み出しているのが、カリフォルニアの地形によるもの。
ひとつの州と言っても、日本列島がすっぽりと入るくらい広大なカリフォルニア州は、内陸部と沿岸部と2つに産地が分かれており、太平洋側に位置する標高の低い海岸山脈と、内陸側のシエラ・ネヴァダ山脈との間に挟まれた広大なセントラル・ヴァレーは海の影響を受けない大陸性の気候で、安定した量のワインを生産しています。
沿岸地域は海の影響により、年間を通じて穏やかな地中海性気候で、降雨も少ないことから、ブドウ樹は病気になりにくく、カビの影響も受けにくい地域で、ナパやソノマに代表されるノースコースト、パソ・ロブレスやサンタ・バーバラがあるセントラルコースト、
サンタ・クルーズ・マウンテンのあるベイエリアなどの産地があります。
そして、この地域特有の自然現象が「霧」です。
アラスカからの寒流が運ぶ冷たい空気と、内陸部の暖かい空気がぶつかって霧が現れ、霧は冷えた空気に乗ってゆっくりと内陸部へ移動し、カリフォルニアワインの銘醸地でもあるソノマやナパ・ヴァレーの上空を移動。
陽が高くなると同時に霧は消えていきますが、日中の強い日差しと、早朝の霧がもたらす涼しい空気による昼夜の寒暖差が凝縮感のある味わいのブドウを育てます。
世界のワイン史に革命を起こした「パリスの審判」
今から40年ちょっと前まではカリフォルニアワインは無名で、フランスでは見向きもされませんでした。
そんなカリフォルニアワインに転機が訪れたのが1976年5月24日。
のちに「パリスの審判」と呼ばれるパリでおこなわれたカリフォルニアワインとフランスワインのブラインドテイスティング対決は、世界のワイン史に革命を起こし、カリフォルニアワインが一気に世界に知られるきっかけとなった出来事です。
当時、パリでワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」を営んでいたスティーブン・スパリュア氏とアメリカ人の講師であるパトリシア・ギャラガー氏が、スクールの宣伝もかねて、アメリカ独立200周年をワインイベントで祝いたいと発案したものでした。
当時フランスではニューワールドワインのカリフォルニアワインは無名で、カリフォルニアワインのおいしさを知る人などほとんどいませんでしたが、スティーブン・スパリュア氏は、自身のスクールに通うアメリカ人の生徒からカリフォルニアワインをお土産でもらうことがあり、いち早くカリフォルニアワインのすばらしさに気づいていたのです。
そのこともあり、多くのフランス人にカリフォルニアワインのすばらしさを広めたい。
そんな思いから、このブラインドテイスティング対決のイベントを企画しました。
このブラインドテイスティング対決では、スパリュア氏の人脈をいかし、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの共同経営者であるオベール・ド・ヴィレーヌや、三ツ星レストラン「トゥール・ダルジャン」のシェフ・ソムリエであるクリスチャン・ヴァネケといった、
ワイン協会の審査官や、醸造家、一流シェフ、ワイン専門紙の編集者など、フランスのワイン界を代表する著名人9名を審査員に迎え、赤ワインはカベルネソーヴィニヨン、白ワインはシャルドネに限定し、カリフォルニアワインから6銘柄、フランスワインから4銘柄の赤ワインと白ワインそれぞれ10本をブラインドでテイスティングすることになりました。
フランスワインは、5大シャトーをはじめとする世界に名高い高級ワインばかり。
正直、スティーブン・スパリュア氏自身もカリフォルニアワインが勝てるなんて予測はしていませんでしたが、その結果はなんと白ワイン、赤ワインともカリフォルニアワインがフランスワインに勝利し、この結果は、タイム誌の6月号に「パリスの審判(Judgement of Paris)」というタイトルで掲載され、瞬く間に世界中に知れ渡りました。
世界のワインラバーが憧れるカルトワイン
先ほどのパリスの審判によってカリフォルニアワインが世界に知られるきっかけとなり、1位に輝いたスタッグ・リーブスや、リターンマッチで1位になったクロ・デュ・バルなどは、「カルトワイン」と呼ばれるワインの代表格となりました。
カルトワインの中には、ロバート・パーカーが高得点をつけたことで、創業わずか数年で一躍脚光を浴びることになったまさにシンデレラワインのような、ダナ・エステーツ、ルイス セラーズなど、さまざまな種類があります。
また、カリフォルニアワインの父であるロバート・モンダヴィと、フランスのボルドーのシャトー・ムートン・ロートシルトのコラボから生まれたスーパープレミアムワインのオーパスワンもカルトワインの1つです。
中でも、伝説的なカルトワインが、スクリーミング・イーグル。
不動産業で成功を収めたジーン・フィリップス女史がオークヴィルにワイナリーを設立し、ファーストヴィンテージから、いきなりパーカーポイント99点を獲得し、瞬く間に世界中に知れ渡り、今もカルトワインの頂点に君臨し続けています。
カリフォルニアワインのおもな産地
ナパ・ヴァレー
ナパ・ヴァレーが位置する場所は、ノース・コーストと呼ばれるサンフランシスコから車で約1時間の距離にある北部で、約170平方㎞ほどのワイン畑があり、全体的に典型的な地中海性気候で、北部ほど温暖でサンフランシスコに近づくほど気候は冷涼になります。
東西を山に囲まれた渓谷地帯のため、さまざまな微気候があり、多様な栽培環境を形成しています。
また、火山性土壌から海洋性土壌まで30種以上の異なる土壌が存在し、隣り合う畑同士でも土壌が異なることも珍しくないほど種類豊富な土壌から、さまざまな個性のワインが生まれています。
ナパ・ヴァレーのAVAには、16の細かな地域を分類するサブ・リージョンがあり、中でも有名なのが、セント・ヘレナからオーク・ノール・ディストリクトまでのナパ・ヴァレーの中央部の産地に歴史的なワイナリーやカルトワインの造り手が集中しています。
とくにオークヴィルは、ナパ・ヴァレーの中心に位置しており、温暖ながらも夜間と早朝に出る霧の影響を受けて、酸味のしっかりとした凝縮感のある高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンが育つため、完璧なバランスのワインを生み出す銘醸地として有名です。
ロバート・モンダヴィ氏と、シャトー・ムートン・ロートシルトの所有者フィリップ・ド・ロスチャイルド氏とのジョイント・ベンチャーとして始まり、今では世界的にも有名になったプレミアワインのオーパス・ワンや、1本50万円以上の値がつくカルトワインのスクリーミング・イーグル、パーカーポイント100点を5度も獲得したハーラン・エステートなどがこのオークヴィルにあります。
ソノマ
ソノマのワイン造りの歴史は、ナパ・ヴァレーよりも古く、カリフォルニアに最初にワインが根付いた地域とも言われています。
ソノマは、18の異なるアペラシオンがあり、各地域で独自の気候と地理があり、造られるワインもそれぞれ異なる多様な味わいのワインを生み出しています。
中でもロシアン・リヴァー・ヴァレーは、西側の太平洋からの影響を受けて冷たい霧が定期的にたちこめ、朝晩は冷涼な気候を持ちながらも日中はしっかりと気温が上がるため、ブドウにはしっかりとした酸を持った凝縮感のある味わいになり、高品質なシャルドネとピノ・ノワールの銘醸地としても知られています。
また、アレキサンダー・ヴァレーは、美しい渓谷と牧歌的な小さな町があり、何世代にもわたって古くからブドウ栽培をおこなう生産者や、高級ワイナリーも多く点在しています。
ソノマは冷涼な気候のため、全体的に濃厚でパワフルなナパ・ヴァレーのワインに比べ、エレガントで繊細な味わいのワインが多く造られています。
ソムリエおすすめのカリフォルニアワイン
ブルゴーニュ最大の生産者ボワセが打ち出す、カリフォルニアの新ブランド
1961年にブルゴーニュに設立されたボワセ・グループは、若い会社でありながら、急成長を遂げ、今やブルゴーニュ最大にして、フランス以外では、アメリカ、カナダ、イギリスと世界各国に畑、ワイナリーを運営するグローバルな生産者です。
環境問題の観点から自然栽培をグローバルに推進してきたことでも知られる生産者で、オーガニック栽培、ビオディナミ栽培に注力し、フランスのドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレや、アメリカのデローチやレイモンドヴィンヤードなど、所有するすべてのワイナリーがオーガニック栽培とビオディナミ栽培を実践しています。
そんなボワセ・グループが、2003年以降カリフォルニアで様々なワイナリーを傘下に収めながら、自然栽培に特化したワイン造りを主導してきました。
そして、カリフォルニア名物である霧に着目し、カリフォルニアのテロワールを反映したワイン造りとして、「霧」をテーマに生み出したシリーズがフォグ・マウンテンです。
フォグ・マウンテン・メルロ
色調は明るいガーネット色。ダークチェリーやプラムなどの黒系果実の甘い香りが印象的。コーヒーやチョコレートの香りに、バニラの香りやグローブのようなスパイシーさが混じる。
口に含むと、香りと同じく甘く凝縮した果実味が広がり、フレッシュだが優しい酸が味わいを引き締めている。樽由来のバニラやココアなどのスパイシーさにオレンジピールや紅茶などの複雑な味わいが混じり、長い余韻が楽しめる。タンニンは穏やかで、フルーティーさとボリューム感がある味わい。
フォグ・マウンテン・ソーヴィニヨン・ブラン
輝きのある淡い黄金色。ゴールデンデリシャス種のようなリンゴ、パッションフルーツ、ハーブのアロマ。
上品で柔らかい酸味、ふくよかな甘みが口の中に広がり、口の奥にすっと消えていくような、滑らかな質感がある。辛口のフレッシュな味わいと、複雑味を楽しめるワイン。
フォグ・マウンテン・シャルドネ
淡い黄金色の色調。トロピカルフルーツのアロマ、レモンなどの柑橘類、完熟したリンゴ、アーモンドなどナッツを思わせる香ばしい香りも感じます。
口に含むと、香と同様に華やかな果実味、パイナップルを思わせる香りとナッツの香ばしいニュアンス、そして口を覆うような滑らかな質感が感じられる万能タイプのワインです。
フォグ・マウンテン・カベルネ・ソーヴィニヨン
ボトルのコルクを抜くと同時に、華やかな香りが溢れます。色は明るいガーネット、カシスやラズベリー、ブルーベリーのアロマにクローヴのようなスパイスを感じます。
口に含むと、赤スグリやカシスのような小さなベリー類果実を思わせる風味と、ミネラル感のある味わい、徐々にチェリーの風味や、紅茶を思わせる上品なタンニンと余韻も感じます。
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フォグ・マウンテン・ピノ・ノワール
明るいルビー色の色調。チェリーやストロベリー、ラズベリーを思わせる魅力的な香り。僅かにナツメグやリコリスを思わせる、スパイスの要素も感じます。
味わいは甘味と酸味のバランスがとれており、赤スグリやチェリーのような赤系果実を思わせる風味、後味にブラウンシュガーのような奥深い風味を感じます。
ミディアムボディの味わいで、余韻にも芳醇な、瑞々しい果実を感じます。
フォグ ・マウンテン・フィールド・ブレンド
レッド・ブレンド・ワインは、赤ワイン同士をブレンドして造られます。
美しいクリムゾンレッドの色調、ダークチェリーの瑞々しい果実味に、スターアニスや白コショウのニュアンスを感じるスパイシーなアロマが最初に感じられるが、追いかけるようにストロベリーやラズベリーのチャーミングな香りが華やかに漂う。
バランスの良いミディアムボディで、口に含むとヴェルベットのような滑らかな質感。余韻が長く楽しめるワイン。