この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。
イタリア、フランス、スペインに次いで、ワイン生産量が世界第4位のワイン大国アメリカ。
そのアメリカワインのじつに90%を生産しているのがカリフォルニア州。
中でも、サンフランシスコの北側に位置するナパバレーは、世界的なプレミアワインの産地として知られる銘醸地です。
そこで、本日はナパバレーのワインについてお話します。
ナパバレーワインの特徴
ナパバレー(ナパヴァレー)は、カリフォルニア州の中西部にある渓谷地帯で、サンフランシスコの北側に位置するAVA(American Viticultural Areas=政府公認のワイン指定栽培地域)の1つです。
ナパバレーには、約470のワイナリーがあり、生産量としては、カリフォルニアワイン全体の1割にも満たない少量の生産量ですが、世界的に有名なプレミアムワインの産地として高品質なワインが多く造られています。
ナパバレーでワイン用ブドウの栽培が始まったのは1839年のこと。
ジョージ・カルヴァート・ヨーント氏によって最初のブドウを植えられ、1861年にチャールズ・クリュッグ氏がナパバレーで初の商業ワイナリーを創立しました。
その後、次々とワイナリーが誕生していき、1966年に「近代カリフォルニアワインの父」と呼ばれるロバート・モンダヴィ氏が、ナパバレーのオークヴィルにワイナリーを創立したことで、ナパバレーのワインが大きく発展していきました。
また、ナパバレー産のワインと言えば、カルトワイン。
カルトワインとは、1990年頃にカリフォルニアで誕生した用語と言われており、一般的には「カリフォルニアの特にナパバレーで造られる高品質な高級ワイン」の総称です。
ただ高級なだけではなく、希少価値の高さや生産量が驚くほど少なく、なかなか手に入らない伝説的なワインのことを言います。
カルトワインの多くは、世界的に有名なワイン評論家ロバート・パーカーが、満点やそれに近い得点を何度もつけているワインに需要が集中し価格が一気に高騰したワインで、ハーラン・エステートやスクーリミング・イーグル、グレース・ファミリーなどがナパバレーを代表するカルトワインです。
ナパバレーの主なワイン産地
ナパバレーが位置する場所は、ノース・コーストと呼ばれるサン・フランシスコから車で約1時間の距離にある北部で、約170平方㎞ほどのワイン畑があり、全体的に典型的な地中海性気候で、北部ほど温暖でサンフランシスコに近づくほど気候は冷涼になります。
東西を山に囲まれた渓谷地帯のため、さまざまな微気候があり、多様な栽培環境を形成しています。
また、火山性土壌から海洋性土壌まで30種以上の異なる土壌が存在し、隣り合う畑同士でも土壌が異なることも珍しくないほど種類豊富な土壌から、
さまざまな個性のワインが生まれています。
ナパバレーのAVAには、16の細かな地域を分類するサブ・リージョンがあり、チャイルズ・ヴァレー、ハウエル・マウンテン、カリストガ、ダイヤモンド・マウンテン・ディストリクト、スプリング・マウンテン・ディストリクト、セント・ヘレナ、ラザフォード、オークヴィル、スタッグス・リープ・ディストリクト、ヨーントヴィル、オークノール・ディストリクト、マウント・ヴィーダー、カーネロス、アトラス・ピーク、クームズヴィル、ワイルド・ホース・ヴァレー。
中でも有名なのが、セント・ヘレナからオーク・ノール・ディストリクトまでのナパバレーの中央部の産地に歴史的なワイナリーやカルトワインの造り手が集中しています。
とくにオークヴィルは、ナパ・ヴァレーの中心に位置しており、温暖ながらも夜間と早朝に出る霧の影響を受けて、酸味のしっかりとした凝縮感のある高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンが育つため、完璧なバランスのワインを生み出す銘醸地として有名です。
ロバート・モンダヴィ氏と、シャトー・ムートン・ロートシルトの所有者フィリップ・ド・ロスチャイルド氏とのジョイント・ベンチャーとして始まり、今では世界的にも有名になったプレミアワインのオーパス・ワンや、1本50万円以上の値がつくカルトワインのスクリーミング・イーグル、パーカーポイント100点を5度も獲得したハーラン・エステートなどがこのオークヴィルにあります。
ナパバレーで生産されるブドウ品種
ナパではカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培面積の約50%を占めており、他にシャルドネ、ピノ・ノワール、メルロ、ソーヴィニヨン・ブランといった品種から高品質なワインが造られています。
南部と北部では気温に差があり、北から南へ流れるカリフォルニア海流が水温の低い寒流のため、海に近いほど冷涼な気候で、内陸へ進むほど暑く乾燥した気候になっています。
ナパで最も内陸に位置するカリストガは、海からの影響が少ないため温暖な地域で、カベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、シラーなどがおもに栽培されています。
2004年にAVA認定を受けたオークノール・ディストリクトは涼しい気候のため、シャルドネやリースリングなどから高品質な白ワインがつくられており、
近年はプレミアム・メルロの産地として注目を集めています。
最もサン・パブロ湾に近いカーネロスは冷涼な産地で、シャルドネやピノ・ノワールから高品質なスパークリングワインが造られています。
多様な土壌と微気候のナパバレーは、同じ品種であっても栽培されたエリアによって異なる味わいを持つところがナパバレー産ワインの面白いところですが、一般的にナパバレーのワインは凝縮感のある果実味が特徴で、濃厚で力強く、華やかなスタイルのワインが多く造られています。
ナパバレーのワインが有名になったきっかけ
1976年の「パリスの審判」が1つのきっかけでもあるとか。
これは当時フランス人にカリフォルニアワインを知ってもらおうと始めた宣伝目的のフランスワインとカリフォルニアワインのブラインド・テイスティングだったのですが、驚くことに、このテイスティングで多くのカリフォルニアワインが、フランスワインの得点を上回ってしまう結果に。
フランスワインに勝ったカリフォルニアワインたちこそ、カルトワインと呼ばれているワインの代表格となりました。
ナパバレーのワインおすすめ5選
ラピス・ルナ・ワインズ
青い月に天使が描かれた神秘的なラベルが印象的なこのワインは、Once in a Blue Moonという「ごく稀なこと」「滅多に起こらないこと」を 意味する青い月に向かって、どの国、どの時代でも、人も天使でさえも、もがきながらも自分だけの 青い月(憧れ、理想、チャンス)を手に入れようと手を延ばす人物たちが描かれており、ラピス・ルナのワインシリーズは、7つのストーリーで構成されています。
ラベルは、1600年代にベルギー出身の司祭であり作家のHerman Hugoの作品Pious Desiresという銅版画によるエンブレムブック(詩入りの寓意画集)にインスピレーションを受け、同じ製法銅版画で描かれています。
ラピス・ルナ・ワインズのワインは、カリフォルニア州メンドシーノにあるUkiah(ユカイア)にてワイン造りがおこなわれており、ラピス・ルナシリーズのワインメーカーはDave Rosenthal氏が務めています。
彼はロバート・モンダヴィや、スタッグス・リープ・ワインセラーズをはじめ、多くの著名な醸造家やワイナリーが師と仰ぐAndre Tchelistcheff氏のチームで働いたという特筆すべきキャリアを持つカリフォルニアワインを表現する術を身に着けた優れた醸造家です。
ラピス・ルナ・シャルドネ
オレンジゼストや完熟パイナップルを思わせる華やかな果実味に続いてトーストやバニラの香ばしい樽香が感じられ、完熟リンゴや白桃を思わせるフレッシュで活き活きとした果実味に、僅かにアクセントを添える風味の良いバターのような余韻があり、厚みのあるしっかりとしたコクの奥深い味わいのワインです。
ラピス・ルナ・レッドブレンド
完熟したブルーベリーやブラックベリーの黒系果実の豊潤なアロマと風味があり、スターアニスやシナモンなどの甘苦いスパイス香と風味もあり、ジューシーで果実味に溢れ、ほのかな渋みと酸味のバランスがとれた凝縮感のある味わいのワインです。
ラピス・ルナ・ジンファンデル
ブルーベリーの豊潤な果実味にダークプラム、ブラックベリーを煮詰めた香り、ベリーのタルトを思わせる濃密でリッチな味わいがあり、とても滑らかな質感で、長い余韻にスパイスを感じさせる1本です。
ラピス・ルナ・カベルネ・ソーヴィニョン
カシスやブラックベリー、プラムを思わせる黒系果実の深い香りにスパイシーで、完熟ダークチェリーを思わせる果実味と長い余韻があり、ベルベットを思わせるリッチで滑らかな質感と重厚なタンニンの凝縮感のある1本。
ラピス・ルナ・ナパ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニョン
カベルネ・ソーヴィニョン90%、メルロ10%のブレンドで造られるこのワインは、ナパの北端の内陸エリアにあるCalistoga(カリストガ)の畑のカベルネ・ソーヴィニョンと、ソノマに隣接する南端のカーネロスのメルロを使用しています。
ブラックチェリー、カシス、プラム、ブルーベリーのアロマに、バニラやカカオを思わせる香ばしい樽香が感じられ、 芳醇な果実味ときめの細かい滑らかなタンニンが印象的で、シルキーな舌触りの長い余韻を感じるリッチな1本です。