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日本ではなじみの薄いイタリアのワイン産地なのでバジリカータのワインと聞いて、ピンとくる方も少ないかもしれませんが、ワイン造りの歴史は、お隣のカンパニア州よりも古く、紀元前7〜6世紀に、ギリシャの移民によってブドウが持ち込まれ、ワイン造りが伝えられたという説があります。
そこで、本日はバジリカータで造られるワインの特徴と、ソムリエおすすめのバジリカータワインを3つご紹介します。
バジリカータについて
バジリカータ州は、イタリア半島の南部カラブリア半島の付け根に位置しており、イタリアをブーツに例えるとちょうど土踏まずの位置にある州で、南東部はイオニア海、西にわずかにティレニア海に面し、北から東にかけてプッリャ州、南にカラブリア州、西にカンパニア州と隣接しています。
州都ポテンツァは州域北西部の内陸にあり、州にはポテンツァ県とマテーラ県であります。
山岳地が多く州の約半分が山岳地で、南部にも関わらず意外にも寒冷な地域です。
バジリカータ州のワイン造りは2000年以上前にさかのぼり、イタリアの中部と北部はエトルリア人とローマ人によってワイン造りが伝えられましたが、南部は、主にギリシャ人の船乗りによって伝わり、バジリカータのワイン造りは6世紀と9世紀の2つの異なる期間に、この地域を支配したビザンチンの影響を強く受けています。
ワインの総生産量は年間5000万リットル未満と非常に少ないため、イタリアワインの産地としては、あまり有名ではなく、生産されるワインの98%はIGTかテーブルワインの格付けのものですが、4つのDOCがあり、DOCアリアニコ・デル・ブルトゥレは、カンパーニャ州の銘酒タウラージと並んで、南部を代表する長期熟成型の赤ワインです。
バジリカータのテロワール
バジリカータは自然の美しさに富んだ州で、イタリアで最も起伏に富んだ山岳地帯の1つであり、約47%の山と45%の丘があります。
平地は8%のみで、この地域には2238mのモンテポリーノ、2005mのモンテシリーノ、1326mの死火山のモンテバルチャーの3つの主要な山があります。
ブドウ栽培の主な地域は、北西部のヴルトゥレ山の麓で、標高は200~700mにもなります。
山岳地帯のため天候も変動しやすく、ブドウ栽培はなかなか難しい地域ですが、豊富な日照と寒暖差によって凝縮感のあるブドウが育ちます。
とくにアドリア海とプーリアを横断する涼しいバルカンのそよ風は気温を和らげるのに役立ち、アペニン山脈がティレニア海から吹く強風を和らげます。
気候は、海岸部は地中海性気候ですが、内陸部は大陸性気候で冬は寒く積雪もあります。
火山質の丘陵地帯で栽培されるアリアニコ種は、しっかりとした酸とタンニンを持ち、長期熟成にも耐えうるワインを生み出します。
バジリカータで主に栽培されるブドウ品種
前述のとおり、バジリカータではアリアニコから長期熟成にも耐えうる上質な赤ワインが造られており、栽培されるブドウの80%以上がアリアニコです。
その他、マルヴァジア、フィアーノ、プリミティーボ、サンジョヴェーゼ、グレコ・ビアンコといった品種が少量栽培されています。
バジリカータで造られるワインの味わいや特徴
DOCアリアニコ・デル・ブルトゥレは、バジリカータ州を代表する赤ワインで、標高は200~700mの高地の火山性土壌で育つアリアニコは、しっかりとした酸とタンニンを持っているため、長期熟成にも耐えうるワインを生み出し、カンパニア州のタウラージと同じように「南のバローロ」と呼ばれています。
1971年5月に正式にDOCとして認定されましたが、2年以上熟成させたスペリオーレは2010年8月にDOCGに昇格しました。
若いうちは、ダークチェリーやプラムといった黒系果実のアロマが強く、濃厚な果実味ですが、熟成にしたがって、土、タール、スパイス、ダークチョコレートのニュアンスを帯びます。時間が経つにつれて奥行と複雑さが増し、バランスのとれたエレガントな味わいのワインになります。
アリアニコ・デル・ブルトゥレは、少なくとも1年は熟成する必要があり、レゼルヴァはさらに1年熟成が必要です。
アリアニコ・デル・ブルトゥレ以外では、ポテンツァ県のDOCテッレ・デッラルタ・ヴァル・ダグリ、DOCグロッティーノ・ディ・ロッカノーヴァ、またマテーラ県ではDOCマテーラがDOCに認定されています。
DOCテッレ・デッラルタ・ヴァル・ダグリは、2003年にDOCに認定され、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンをベースにした赤ワインが造られ、レゼルヴァと、ロゼワインがあります。
DOCグロッティーノ・ディ・ロッカノーヴァは、赤ワイン、白ワイン、ロゼワインが造られ、DOCマテーラは、赤ワイン、白ワイン、スパークリングワインが造られており、マルヴァジア・ビアンカ、マルヴァジアネラ、モスカトビアンコを使った白ワインと、アリアニコ、プリミティーボ、サンジョヴェーゼ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンを使った赤ワインが造られています。
バジリカータの代表的なワイン
カンパニア州のタウラージと並んで「南のバローロ」と称されるDOCアリアニコ・デル・ブルトゥレは、イタリア語でハゲワシの意味をもつ、ブルトゥレという名前の死火山の麓に畑があります。
約80万年前に噴火したモンテ・ブルトゥレの溶岩がベースとなったこの土壌は、火山性土壌で、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルを豊富に含んでいます。
そんな土壌で育つアリアニコは、日照時間の長い乾燥した気候に適しており、強いタンニンと豊富な酸をもっているため、若いうちはタンニンが強く感じられますが、熟成を経るごとに複雑味を増し、見事なバランスもったワインになります。
ソムリエがおすすめするバジリカータ産ワイン3選
バルコナーラ ドナート・ダンジェロ
イタリアワインの指標として、世界でも強い影響力を持つイタリア産ワイン専門のガイドブック「ヴィニ・ディ・イタリア」で、最高評価にあたるトレ・ビッキエーリ(3グラス)を獲得したドナート・ダンジェロは、DOCアリアニコ・デル・ヴルトゥレの名手として年間15万本の生産本数を誇り、イタリア国内のみならず、EU内の他国やアメリカ、アジアなど多くの国へ輸出されています。
バルコナーラは、ドナート・ダンジェロの所有する畑の中でも、最も優れたブドウを生み出す畑から造られており、畑は標高およそ500mの火山性土壌で、アリアニコと、カベルネ・ソーヴィニョンの2種類のブドウは、完熟するタイミングが異なるので、別々に収穫され、ワイン造りが進められます。
ブレンドされた後、50ヘクトリットルの大樽へ移し最低でも15か月熟成させてからリリースされます。
カベルネ・ソーヴィニョンの持つしっかりとした骨格と、アリアニコの持つ果実の濃密で凝縮した味わいが非常にバランスのよいワインです。
アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・カリチェ ドナート・ダンジェロ
ドナート・ダンジェロは、2001年に醸造家のドナート・ダンジェロと妻のフィロメナ・ルッピによって設立されました。
バジリカータ州で最初のDOC認定されたアリアニコ・デル・ヴルトゥレの最も伝統的な地域である、ヴルトゥレ山周辺、BarileとRipacandida、そしてMaschitoのエリアに合計20ヘクタールのブドウ畑を所有します。
畑ではアリアニコを主体に(全体の80%)、残りはカベルネ・ソーヴィニョンと白ブドウのフィアーノを植えられており、標高500mの火山性の土壌で、南部の バジリカータ州であっても昼夜の寒暖差が大きく、ブドウはゆっくり完熟していきます。
収穫は10月の15~30日の間で行い、収穫したブドウを破砕し醸しを行い、10日間ほどコンクリートタンクで発酵させ、その後樽に移し18か月熟成させます。
こうして造られるアリアニコ100%のワインは、カシスやブラックベリーといった黒系果実のアロマにチョコレートなどのビターな深みも加わり、ほどよい酸と渋みのある濃密で凝縮した味わいのワインです。
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アリアニコ・デル・ヴルトゥレ・ドナート・ダンジェロ ドナート・ダンジェロ
ドナート・ダンジェエロが手掛けるこのアリアニコ・デル・ヴルトゥレ・ドナート・ダンジェは、2000年から造る自らの名を冠した自信作で、2003年初リリースされたもの。
樹齢40~50年のアリアニコを使用し、収穫は10月の終わりにおこないます。
ブドウは徐梗され破砕後に醸しを行い、そのまま自然にコンクリートタンク内でアルコール発酵させ、発酵が終わると樽へ移し、最低でも18か月熟成させます。
2017ヴィンテージが、イタリアで最も有名なワイン評価誌ガンベロ・ロッソで、非常に卓越したワインを意味する「トレ・ビッキエーリ(3グラス)」を受賞した、この作り手の代表作です。
プラムやドライフルーツなどの芳醇なフルーツのアロマに、チョコレートの深い濃厚な風味が加わり、濃密で凝縮感のあるやや重い味わいのワインです。
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