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日本の夏は湿度が高く蒸し暑いのが特徴ですよね。
梅雨から続く高い湿度で、うっかりしていると意外なところにカビが!
本日はそんなカビのおかげで高い価値を得たワイン、貴腐ワインを紹介したいと思います。
氷点下でも凍らない!「飲むデザート」と呼ばれる貴腐ワイン
貴腐ワインはとても甘みの強烈なデザートワインの最高峰で、甘みだけでなく酸味、複雑な香味を持ちます。
地球温暖化が進行する前は、ヨーロッパは非常に寒い地域が多く、ブドウの糖度が上がりにくかったため、
甘口ワインは生産量が少なく、非常に価値のある高級品でした。
トロリと蜜状の液体で「飲むデザート」と言われている、甘口ワインの最高峰。
糖度が高いため、一度開けても1か月以上風味は変わらず、また、冷凍庫に入れても凍らないので、これを氷点下で飲めば、真夏にぴったりのデザートとして楽しむことができます♪
農家が恐れる厄介な病害「灰色カビ病」が生み出した黄金の液体
貴腐という言葉は、その原料となるブドウの状態からそう名付けられています。
ポトリティス・シネレアというカビがついたブドウが、水分もなくなってシワシワに…
この状態を見たら、普通の人なら捨ててしまうところ。
しかし、このブドウでワインを仕込んだところ、とびきり美味しいデザートワインができた、というストーリーです。
ちなみに、ポトリティス・シネレアは世界中至る所にいる、普通のカビで、ブドウ以外の果物や野菜など、いろんなものにとりつく厄介者です。
もちろん日本にもいます。
世紀の発見は、この普通のカビ&白ブドウの組み合わせでした。
通常、このカビにとりつかれると「灰色カビ病」という、農家が恐れる厄介な病害となります。
しかし、白ブドウの場合は、あえてこの菌にとりつかせて、貴腐ブドウを得て、貴腐ワインを造ります。
・水分を飛ばして、甘みを凝縮させる効果
(カビが果皮のワックス層を溶かすことで果汁中の水分が蒸発します)
・菌の代謝により、果実は貴腐香と呼ばれる独特の香りがつく。
カビの働きでこんな効果が!
内部の果汁は飴色で粘度が高く、昔の人々にとっては、まさに黄金の液体だったことでしょう。
かつては薬として珍重されていました。(相当高値で売れたようです)
世界発の貴腐ワインの産地ハンガリー人は日本人と同じ遺伝子⁈
似たものに遅詰みブドウのワインや陰干し製法のパッシート、ドイツやカナダのアイスワインがありますが、カビの代謝による香味が加わる分、貴腐ワインのほうがより複雑味が感じられることから、貴腐ワインが「デザートワインの王様」と呼ばれている理由だと思います。
ちなみに今のところ、ハンガリーのトカイが世界初の貴腐ワイン生産地と言われています。
1650年頃、ハンガリーのトカイ地方で、オスマン帝国による侵略の影響でブドウの収穫が遅れたために偶然造られた、という話。
そういえば、以前ハンガリーへ行ったとき、初対面でも現地の方々はとても親しく、親切に接してくれました。
「俺たちは元をたどれば同じ先祖じゃないか!モンゴロイドだろ」ハンガリーに多いマジャル人は、モンゴル系の遺伝子も持ちます。
そんなことを言う人がたくさんいましたが、確かにアジアは発酵食品文化などが多いので、
カビ使い、菌使いはお家芸…
ハンガリーの人たちがカビを使ったワインを最初に作ったという話もなんだか頷ける気がします。
そんな貴腐ワインに合う料理とは?
貴腐ワインは、食後酒としてデザートの代わりに楽しむこともできますが、デザートとの組み合わせも絶妙です。
特におすすめは、濃厚なバニラアイスと合わせて飲んだり、バニラアイスに貴腐ワインをかけて食べると、貴腐ワインの華やかな香りとコクのある甘味が、バニラアイスにマッチし大人のデザートとして楽しめます。
また、ドライフルーツやコンポートなど砂糖で甘味を強くしたフルーツが相性がいいです。
また、ブルーチーズとの相性も良く、ブルーチーズ特有の濃厚な香りと強い塩気が、ハチミツのニュアンスが感じられるメープルシロップのような濃厚な甘みの貴腐ワインにマッチしゆっくりと貴腐ワインを楽しめるので、甘味の少ないチーズケーキなどもおすすめ。
意外な組み合わせとしては、チーズおかきなどの相性もいいですよ。
飲むときは冷やして飲むのが一般的です。
4~10℃が適温とされ、4℃以下に冷やしてしまうと、ブドウの香りも果実味も閉じてしまい、貴腐ワイン特有の芳醇な甘さが味わえません。
また温度が高くなると甘みが強く重たい口あたりになり、もったりとした印象に。
そのため、適温の4~10℃で飲むのが一番貴腐ワインのコクのある芳醇な甘みとほどよい酸味を感じられます。
貴腐ワイン派栓を開けてからも冷蔵保存で2週間から最大1か月くらいまで風味が落ちず飲むことができますので、食後などのデザート代わりに、少しずつ楽しめます。
貴腐ワインの値段
貴腐ワインの相場は、赤ワイン、白ワイン同様、ワインの産地、造り手によりさまざまで一概にどのくらいが相場と定義はできませんが、比較的リーズナブルなものだと、1000円台で購入できるものも数多くあります。
前述した通り、貴腐ワインを造るためには手間がかかり、原料となるブドウの量も通常のワインを造るより多く必要になるため、希少性が高く、高価になります。
特に世界3大貴腐ワインの産地である、フランスのソーテルヌの貴腐ワインは、他の産地に比べ比較的高価な傾向にあります。
ソーテルヌの貴腐ワインは、数十年という長期熟成に向く高品質な貴腐ワインが多く、そのトップに君臨するのが「シャトー・ディケム」。
この貴腐ワインに関しては良いヴィンテージのものは、熟成期間が非常に長く、100年以上経っても風味が失われないものもあります。
そういった貴腐ワインはもちろんごくわずかですが、市場にでている貴腐ワインで、品質が良いものですと、やはり3,500円~5,000円くらいのものがおすすめです。
おすすめの貴腐ワイン5選
ミュスカ・ヴァンダンジュ・タルディーヴ シャトー・パジョス
フランス・ボルドーのソーテルヌ、ドイツのロッケンベーレンアウスレーゼ、と並ぶ世界三大貴腐ワインの1つハンガリーのトカイワイン。
フランス・ボルドー・ポムロール地方の「シャトー・クリネ」の所有者であるジャン=ルイ・ラボルド氏が1992年に移住し、シャトー・パジョスを所有しました。
このワインは部分的に貴腐菌の付いたブドウから造られます。
樽熟成は全くかけないのでフレッシュで甘酸っぱく、残糖分はあまり感じさせない軽やかな飲み心地で、ミュスカ特有の、フルーティーながらミントや花の蜜のような甘さの中にも清涼感があるワインです。
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トカイ・アスー・5プットニョシュ シャトー・パジョス
フランス・ボルドー・ポムロール地方の「シャトー・クリネ」の所有者であるジャン=ルイ・ラボルド氏が1992年に移住し、シャトー・パジョスを所有しました。
このハイクラスのワインは「アスー」ブドウを用い、伝統的な製法で 造られます。
アスーブドウは一房ごとに丁寧に選果され、貴腐菌が完璧に付着しているブドウのみを収穫します。
プットニョスとは背負い桶のことで、糖度の単位として用いられ、この桶には26キロのアスーブドウが入り、136リットル入る樽の中に、何杯のプットニョスが入るかによって 甘みが決まります。
杯数は3~6までで、数が多い程豊かで甘美なワインに仕上がります。
フレッシュなフルーツのアロマに、濃厚な蜂蜜のなどの複雑な甘みを感じさせる、豊かで力強い風味が広がり、長い余韻が楽しめるワインです。
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トカイ・エッセンシア シャトー・パジョス
シャトー・クリネと同様のワインメイキングの 技術と管理方法で、マキシム・ベルレペイル氏とのコラボレーションによりワインが造られており、トップキュヴェであるこのトカイ・アスー・エッセンシアは、ロバート・パーカー100点を獲得!!
ワインスペクテイターでは99点!1998年度ワインスペクテイター誌年間ベスト3位にも選ばれました。
アプリコットなどのフルーツのアロマに、凝縮した果実の芳醇な甘味があり、滑らかでリッチな質感で、トップキュヴェにふさわしい複雑な味わいを持つ最高峰のデザートワインです。
トカイ・エッセンシア シャトー・パジョス
シャトー・パジョスは、フランス・ボルドー・ポムロール地方の「シャトー・クリネ」の所有者であり、純粋主義者であるジャン=ルイ・ラボルド氏が1992年にハンガリー・トカイ地方に移住し、直接ハンガリー国家とシャトー・メイヤーからシャトーを獲得しました。
フルミント60%、ハーシュレヴリュ30%、ミュシュコタリ10%のブレンドで造られるこちらの極甘口のワインは、ロバート・パーカー100点獲得し、ワインスペクテイター99点、1998年度ワインスペクテイター誌年間ベスト3位に輝いたまさに世界最高峰のデザートワインです。
シャトー・ジャノニエ
シャトー・ジャノニエは1919年に現在のオーナーのニコラス・ボナールの祖父がこのソーテルヌの土地を引き受けたことから歴史が始まりました。
それ以降100年以上に渡り、ボルドー南東のガロンヌ川左岸に位置するソーテルヌにある7.5haの粘土質土壌の畑のブドウを使用し、伝統的な製法を用いて貴腐ワインが造り続けられています。
豊かな柑橘系の果実や白い花の香りに、蜂蜜や柑橘系、桃やアプリコットなどの果実のニュアンスが感じられる、絶妙なバランス感覚のある素晴らしい味わいの甘口ワインです。