6100年前のワイン醸造の遺跡が見つかったアルメニアワインの特徴とは

6100年前のワイン醸造の遺跡が見つかったアルメニアワインの特徴とは
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6100年前のワイン醸造の遺跡が見つかったアルメニアワインの特徴とは

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アルメニアワインとは

前回お話した、アゼルバイジャンに隣接する国、アルメニア。
ジョージア、トルコ、イランにも隣接し、ワイン発祥の地の1つとされており、
ヴァヨッツゾール地方のアレニ村では、6100年前のワイン醸造の遺跡が見つかりました。
現在も一部の生産者で、カラスと呼ばれる土壺を使用した伝統的な醸造法や、
世界最古のブドウ品種と言われるアレーニ・ノワール種などの固有品種を使った
ワイン造りなど、アルメニアの文化が色濃く残るワインが生み出されています。
そこで、本日はアルメニアワインについてお話します。

アルメニアワインの歴史

アルメニアでは、2007年に首都エレバンから約100km南東のヴァヨッツゾール地方の
アレニ村の洞窟で、6100年前のワイン醸造の遺跡が見つかりました。
ワインを醸造していたと思われる区画には、アンフォラと呼ばれる壺があり、
成分分析の結果、アンフォラ内に残っていたブドウの成分がワインだったことがわかりました。
中世から近世にかけては、イスラム勢力の支配下に置かれますが、
ワイン造りは小規模ながらも伝統的な醸造方法が受け継がれて来ました。
1920年代からは、旧ソビエト連邦の支配下でブランデーの主要産地として
収穫量を優先したワイン造りが行われてきました。
1991年のソ連崩壊により、独立したアルメニアは、ブドウ畑や醸造所が民営化され、
この時、19世紀~20世紀にかけてオスマントルコによる弾圧で
世界各地へと散らばった難民の子孫たちが故郷であるアルメニアに帰国し、
大規模な設備投資を行い、広大な荒れ地をブドウ畑に変えて、
最新設備を兼ね備えたワイナリーを設立しました。
そうしたワイナリーが現在は約25~30軒あり、ワイン造りに取り組んでおり、
近年は世界から著名な醸造家やコンサルタントが次々と参入し、
モダンなスタイルのワインも生み出されています。

アルメニアワインの特徴

アルメニアの伝統的なワイン造りの道具の1つにカラス(KARAS)と呼ばれる
底がとがった形状の土壺があります。
一般的にはアンフォラと呼ばれ、ジョージアではクヴェヴリと呼ばれています。
伝統的な醸造法は、口の部分が地面より20cmほど下になるよう埋められたカラスの中へ
つぶしたブドウを投入し、厚手のガラス板または木の板で蓋をし、
その周りに粘土を一周させ、地表の高さまで粘土で密封し、
その上に砂が盛って、土の中で5〜6ヶ月寝かせます。
その後、ワインを別のカラスに移すことで自然濾過を施し、ワインをさらに熟成させます。
この醸造方法は手間がかかることと、アルメニアの気候では収量も限られてしまうため、
現在も一部の生産者のみで使用されていますが、発酵はコンクリートタンクでおこない、
熟成のみカラスで行うという醸造法で採用されているようです。
現在、アルメニアには50のワイナリーがあり、
2018年の段階では、生産量の55%を輸出しています。
2010年前後に設立されたワイナリーが多く、まだ新興ながら、
すでに国際コンクールで入賞する高品質なワインも多く生産されています。
先ほど少し触れましたが、アルメニアは旧ソ連時代はブランデーの主要産地となっていたこともあり、
ワインよりもブランデー市場の方が大きく
ブランデーを造る上で最適な、カングンというアルコールが低く酸が高いブドウが、
アルメニア北部の標高の高い森林地帯で栽培されています。

産地・ブドウ品種

アルメニアは、国土のほとんどが標高900m以上の高地にあり、
夏は40℃以上に達し冬は氷点下20℃以下と厳しく、
昼と夜の寒暖差が大きいのも特徴です。
ステップ気候と高地地中海性気候に属し、年間降水量は約300mmしかないため、
ブドウの栽培には灌漑設備も不可欠で限られた地域でブドウ栽培がされています。
ワインの生産地は南西部に集中していて、
ノアの箱舟が漂着したとされる首都エレヴァンの南のアララト地域は、
約5000ha以上のブドウ畑が広がっており、
その南東にあるヴァヨッツ・ゾール地方には、
約6100年前の醸造所の遺跡であるアレニの洞窟があり、
アルメニアの中でも重要なワイン産地となっています。

アルメニアには全部で約400種類の固有品種があると言われていますが、
商用に栽培されているのは赤が3品種、白が12品種ほどです。
ここでは、アルメニアで代表的なブドウ品種をいくつかご紹介します。

アレニ・ノワール
アルメニアを象徴する黒ブドウ品種で、原産はヴァヨッツゾール地方アレニ地区。
古代品種で、カジュアルワインから樽熟成させた高級ワインまで造られています。

カルムラヒュット
アルメニア固有の交配品種で、主な栽培地はアララト盆地。
バラのような華やかな香りが特徴的で、
凝縮したタンニンがあり、スパイシーな味わいのワインを造ります。

ハフタナック/タナック
長期熟成に向く赤ワイン用の品種で、主な産地はアララト盆地。
非常に色素が濃くタンニンが強い品種で、酒精強化ワインにも使われます。

カングン
アルメニアの固有品種で、主な産地はアララト盆地。
アルコールが低く酸が高い特徴からブランデーや量産用のワインなど、
カジュアルな白ワインに多く用いられます。

ヴォスケハット
アルメニアを代表する白ワイン用の高貴品種。
主な産地は、ヴァヨッツゾール地方、アララト盆地。
蜜入りリンゴや白い花のアロマが特徴で、果実味と酸のバランスがよく、
エレガントで余韻に複雑味のある高品質ワインを造ります。

また、シャルドネ、ヴィオニエ、マルベック、タナ、メルロなどの国際品種も
栽培されており、アルメニアのワインはブレンドされることが多く、
8割を固有品種を使い、残り2割に国際品種を使い、
アルメニアの文化を強く出した個性的なワインが造られています。

おすすめワイン

アルメニア・ホワイト
アルメニア・ワイン・ファクトリーは、2006年にブドウ樹を植え、
2008年に醸造所を設立した新鋭ワイナリーです。
ヨーロッパの醸造家をコンサルタントに迎え、最新の設備を整えるなど、
アルメニアの伝統に新しい風を吹き込む、注目の造り手です。
そんなアルメニア・ワイン・ファクトリーが手掛けるこのワインは、
カングンと呼ばれるアルメニアの固有品種を使ったワインで、
マスカットの甘い果実香、若草、ハーブの清々しいアロマ。
ヨーグルトを思わせる発酵した風味が、溌剌とした酸と見事にマッチし、
爽やかで非常に親しみやすい味わいです。

アルメニア・ホワイト

アルメニア・レッド
アルメニア・ホワイトと同じ造り手であるアルメニア・ワイン・ファクトリーが
手掛けるアルメニアの固有品種を使った赤ワイン。
アルメニアの固有品種のアレニとハフタナックの2種類のブドウを使用。
ラズベリーなどの赤系果実の華やかなアロマに、
口に含むと溌溂とした酸が勢いよく広がり、
しっかりと感じられる濃厚な果実味とスパイシーなニュアンスが瑞々しい味わい。
タンニンはきめ細かで滑らかさがあり、余韻にはベリーの風味が心地よく感じられます。
くっきりとした輪郭を持った非常に飲みやすいミディアム赤ワインに仕上がっています。

アルメニア・レッド

ゾラ・ワインズ イェラズ
ゾラ・ワインズはイタリアに住むアルメニア人ゾリック・ガリビアン氏が
2001年に設立した新鋭のワイナリー。
アルメニアの固有品種に特化したブドウ栽培を行っており、
10年以上に及ぶ研究は今なお続けられています。
栽培されている樹の多くはフィロキセラの被害を受けておらず、
80年以上の樹齢のブドウも多く存在しています。
カリスマ醸造コンサルタントに迎え、
古代からの伝統的醸造法に現代の最新技術を加えた
新たしい独自のスタイルを造り上げ、初リリースにしながら世界の脚光を浴び、
その後も高評価を立て続けに受けています。
そんなゾラ・ワインズが手掛けるこちらのワインは、
アルメニアの固有品種アレニ・ノワール100%で造られた赤ワインです。
アレニ・ノワールは、標高1000m以上の岩肌に生息し、
1つの樹に1~2房ほどしか付けないため、極めて収穫量が少ない希少品種。
アレニ・ノワールの魅力を最大限に引き出すため、
土壺のカラスを使用した伝統的な熟成方法を用いています。
鮮やかな赤い果実を想わせる華やかな味わいに溶け込む、
白コショウ、石畳みのニュアンスがアクセントとなり、
優しく丸いまろやかなタンニンと程よいミネラルが余韻を彩る
スパイス香が豊かに香るエキゾチックな赤ワインです。

ゾラ・ワインズ イェラズ

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