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ワインを飲みなれてくると、自分好みの産地やブドウ品種がいくつかできますよね。
カリフォルニアのシャルドネ、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン、ボルドーのカベルネ・ソーヴィニョン、チリのメルローといったように、その産地のそのブドウの味わいが自分には好みだな。というのがあると思います。
さらに、各産地ならではの個性が味わえるワインというのは、その土地で古くから栽培されている土着品種から造られるワインです。
そこで、本日は土着品種についてお話します。
土着品種とは
土着品種とは、その土地で古くから栽培されているマイナーなブドウ品種のことで、その土地の固有の遺伝子を持つブドウ品種のことです。
土着品種以外には、固有品種、自生品種、地ブドウ、海外では「local variety」「local grapes」と表現されます。
ワインのブドウ品種は、ヴィティス・ヴィニフェラ種という種に属していて、その土地にあったブドウが栽培され、どの品種も独特の個性を持っており、なんと世界には10000種類ものブドウ品種があります。
一般的に普及されているものは国際品種
世界でワイン用に使われているメジャーなブドウの品種は、赤ワイン用、白ワイン用合わせて約50種類ほどのブドウ品種があります。
中でも、世界のワイン産地の多くで栽培されているブドウ品種が国際品種と呼ばれる品種で、代表的なものを挙げると、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、シュナン・ブラン、リースリングなどがあります。
この国際品種の中でも、伝統的に最高品質のワインが造られている品種が高貴品種で、赤ワイン用がピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、白ワイン用がシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、以上の6品種です。
この高貴品種は、世界のあらゆる産地で栽培されており、ワイン好きなら誰もが飲んだことのある品種ではないでしょうか。
土着品種はイタリアに多い
さて、こうした世界のあらゆる産地で栽培されている国際品種(高貴品種含む)とは違い、その土地でしか栽培されていないのが土着品種。
その土着品種の宝庫と言えば、ワインの年間生産量トップのイタリアです。
イタリアの土着品種は2000種類以上と言われており、公式に認められたブドウ品種だけでも350種ほどもあります。
イタリアが土着品種の宝庫である理由はいくつかあり、まず1つには、イタリアのすべての州でワインが造られていることです。
古代ローマにブドウの栽培とワインの製法を伝えたのはギリシャ人で、ギリシャ人はイタリアの土壌に適したブドウの苗を選んで栽培したため、イタリアでは糖度が高く高品質なブドウが早い時期から栽培されていました。
ギリシャ人はローマを「エントリーァ・テルス(ワインを造る大地)」と呼ぶほど、ブドウ栽培に適した産地であったのです。
南北約1000kmに及ぶ細長いイタリアの地形は、変化に富んだ地形と多様な気候、様々な土壌があり、その風土気候に適したブドウが古くから栽培されてきました。
また、イタリアは1861年まで各州による法律があり、独自の歴史と文化を持っていました。
そのため、イタリアのワイン法であるDOC法(Denominazione di Origine Controllata)が制定されたのも1963年とごく最近になってから。
こうした歴史的背景から各州での独自性のあるワイン造りが長くおこなわれてきました。
そして、イタリア人の地元愛の大きさも土着品種が多い理由の1つです。
地域の伝統料理を大切にして、家族そろって食事をゆっくりと楽しむ文化をしっかりと受け継いでいるからこそ、ブドウもその土地に古くから根差す土着品種にこだわって栽培されています。
代表的なイタリアの土着品種は、サンジョヴェーゼ、バルベーラ、ネッビオーロ、アリアニコ、トレッビアーノ、ピノ・グリージで、中でも代表的な品種であるサンジョヴェーゼは、ボルドー品種のカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどとブレンドされ、スーパータスカンと呼ばれるプレミアムワインが造られています。
また、ネッビオーロからは、イタリアワインの王と呼ばれるバローロが造られ、世界中のワインラバーから人気を博しています。
イタリアの土着品種の魅力を発信する今注目のワイナリー
テヌータ・ウリッセ
テヌータ・ウリッセは2006年に、ウリッセ家の若い兄弟アントニオ(Antonio)とルイジ( Luigi)によって設立されたワイナリーです。
醸造所としての歴史は浅いものの、ウリッセ家は代々アブルッツォ州の伝統的な土着品種を主体に栽培してきました。
「アブルッツォ州の個性的で表現力豊かなテロワールのもと、他地域にはないアブルッツォ州独自の高品質ワインを作ることを目指す」ことを目標にするテヌータ・ウリッセは、地場品種でのワイン造りに強いこだわりをもっており、アブルッツォ州でおなじみのモンテプルチャーノやトレッビアーノの他に、ペコリーノ、パッセリーナ、ココッチョラといった品種を用いる他、ピノ・グリージョ(ピノ・グリ)やメルロといった国際品種も一部用います。
近代的な醸造テクニックを駆使し、土着品種が持つ新たな可能性を探るテヌータ・ウリッセのワイン造りは、イタリアワインガイドとして信頼が厚い「ルカ・マローニ」の評価で、ほとんどのワインが90点以上を獲得。
しかもDon Antonioに至っては、2022年度のベストワイン38本のうちの1本に選ばれました。
魅惑の土着品種おすすめ5選
パッセリーナ テヌータ・ウリッセ
テヌータ・ウリッセは2006年に設立した歴史はまだ浅いワイナリーですが、ルカ・マローニの評価ですでにほとんどのワインが90点以上を獲得し、しかもトップキュヴェである「Don Antonio」に至っては、2022年度のベストワイン38本のうちの1本に選ばれたほどの実力派ワイナリー。
「近代的な醸造テクニックを駆使し、固有品種が持つ新たな可能性を探る」「アブルッツォ州のテロワールにおける国際品種の再解釈を行う」これがテヌータ・ウリッセの目標とするワイン造りです。
パッセリーナはギリシャ起源の品種で、現在イタリア中部で徐々に栽培が増えている人気の品種。
活き活きとした果実味を感じるワインで、白桃や杏、グレープフルーツを思わせる華やかなアロマ、藤の花を思わせるアロマとライムの 風味が香り、余韻にミネラルを感じます。口に含むとメロンのようにボリューム感のある果実味と、クリーンな心地よい酸味が両立したバランスの良い辛口の味わい。
シーフードを使った前菜やメインと相性が良く、貝類にもよく合うワイン。
ココッチオーラ テヌータ・ウリッセ
テヌータ・ウリッセは2006年に設立した歴史はまだ浅いワイナリーですが、ルカ・マローニの評価ですでにほとんどのワインが90点以上を獲得し、しかもトップキュヴェである「Don Antonio」に至っては、2022年度のベストワイン38本のうちの1本に選ばれたほどの実力派ワイナリー。
そんなテヌータ・ウリッセが手掛けるこの白ワインは、ココッチオーラというブドウ品種を100%使用した白ワイン。
ココッチオーラはプーリア州が原産地とされており、1990年代までプーリア以外ではほとんど知られておらず、現在でも他の産地ではあまり目にすることがない珍しい品種。
晩熟型で収穫は概ね10月初旬におこなわれ、清涼感のあるハーブやメントールにレモンのような柑橘のアロマがあり、生き生きとした酸とミネラル感のある繊細な味わいのブドウです。
ブドウは収穫後すぐ低温下に置き、そのままコールドマセレーション(低温醸し)を行い、
アルコール発酵はステンレスタンクで8~11度の低温下で行います。
発酵後タンクで3か月静置してできるこのワインは、柑橘や青リンゴ、白い花を思わせる繊細なアロマで、軽やかでとてもフレッシュな味わい。
シーフードに合わせて楽しめるワインで、カルパッチョなど生の魚の料理にもよく合います。
アレチャガ ボデガス・ビルヘン・デ・ロレア
ボデガス・ビルヘン・デ・ロレアは、17世紀からの歴史を持つワイナリーで、もともと自家用として美味しいワインを造ることが目的で始まり、18世紀には、当時の当主であるファン・ライセカと妻グレゴリアも先祖と同様に、熱心にこの地酒を造り続けました。
当時、バスク地方にはシドラとチャコリの造り手が生まれていましたが、ほとんどは自家用や、地元のバル・食堂に卸しており、地元で飲まれるのが一般的でした。
20世紀初頭には、娘夫婦によってワイナリーの建物が建造され、現在もテイスティングルームとして使用されており、自家用チャコリの生産から、世界へ供給するワイナリーへと大きく発展しました。
自社畑は南向きの斜面に広がっており、豊富な石灰を含む粘土石灰質の土壌、雨、適切な温度と海から吹く冷たい北風、それらの恩恵を受けて、引き締まった酸と香り豊かな、複雑な味わいの白ワインが生み出されています。
爽やかなグリーンの色調で、ライムや洋梨、リンゴ、ハーブを思わせるフレッシュかつフルーティーなアロマがあり、チャコリ特有の力強い酸と、豊富なミネラルと、わずかな塩味が感じられ、透明感がありながらもエレガントでバランスの取れた味わいのチャコリです。
ペルレ・ロゼ ヴィノヴァリ
ペルレとは、フランス南西地方の地ワインで微量の炭酸ガスを含んでいるため、爽やかさ、フレッシュ感のある活き活きとした味わいが特徴です。 ペルレ・ロゼは、ガイヤックの品種にこだわり「デュラス」という黒ブドウを主体にアロマティックでバランスの良い味わいに仕上げています。 ラズベリーやスグリ、チェリーなど、小さな赤い果実を思わせるチャーミングな香りと、爽やかな柑橘を思わせる香り。 口に含むと生き生きとした酸味と果実味のバランス良く、僅かなガスが心地よく口の中を刺激して、活き活きとしたフレッシュな味わいを感じさせます。 アペリティフに最適な1本ですが、ロゼはどんな食材にも合わせられるので、例えばビュッフェのような集まりや、野菜、魚介、肉など様々な食材を集めたBBQにもぴったりの1本になります。
マリア・ド・カサル・ヴィーニョ・ヴェルデ
ブドウは、アサル、アリント、トラジャドゥラといった伝統的な土着品種を使用します。
レモンゼスト、ライム、グレープフルーツなどのみずみずしい柑橘のアロマに、ミネラルとフレッシュな野菜を思わせる緑のアロマがあり、活き活きとした酸味とミネラルを感じる非常に爽やかな味わいです。
シーフード全般に非常によく合いますが、ソムリエおすすめのペアリングは焼き魚。
とくに、スズキや鯛などの白身魚に塩を軽く振って焼いて、レモンやすだちをキュッと絞って食べる焼き魚と相性抜群です!
旅行などをする場合は土着品種を楽しもう
ワインの有名な産地へ旅行した際は、こうした土着品種のワインを味わえるのも旅行の大きな楽しみの1つです。
その土地の伝統料理と土着品種から造られるワインのペアリングは、その地でしか楽しむことができないすばらしい体験です。
ぜひ、地元のワインショップなどでおいしい土着品種のワインをセレクトしてもらって、お土産に持ち帰って旅の思い出とともに味わうのもいいですね。