アンヌ・エ・セバスティアン・ビドー
ANNE ET SABASTIEN BIDAULT
ドメーヌ・アンヌ・エ・セバスチャン・ビドーは、モレ・サン・ドニに本拠を置く、極小規模のドメーヌです。畑は現在約1.30ha、海外のワイン愛好家の評判からじわりと人気を集め、今やブルゴーニュで外さないワインとして、徐々に名が知られてきている注目ドメーヌです。
当主のSebastienはピュリニー・モンラッシェ出身の1975年生まれで、妻Anneはモレ・サン・ドニ出身の1976年生まれです。共にワインに囲まれた中で生まれ育った生粋のブルギニョン(ブルゴーニュ人)で、それぞれがワインを仕事として選び、二人は出会いました。
2000年、二人にとって初めての区画をGevrey-Chambertinに0.05ha 取得。2005年、Chambolle-Musigny、Morey-Saint-Denis、さらにま たGevrey-Chambertinに畑を取得する機会に恵まれ、合計0.5haに拡 大されます。2008年、Chambolle-Musigny、Morey-Saint-Denis、GevreyChambertinにフェルマージュでの耕作を始め、耕作面積が倍増。
そして2011年、Anneの両親が手掛けていたClos de la Rocheを取得。さらに2014年には、Aloxe-Cortonでもフェルマージュでの耕作を始め、取扱いワインの種類、量を徐々に増やしています。
家族経営で小規模の畑を丁寧に管理し、誠実なワインを造る生粋のブルギニョン。生産量が少ないため、もし大手の会社がアプローチしたら、あっという間に市場から消えてしまうでしょう。
ブルゴーニュとは「テロワールのワイン」と言われていることからも、大切な畑と樹齢の高い木を持つ時点で、このドメーヌはすでに高いポテンシャルを備えていました。
ただ、あまりに小規模なため、露出の機会がなくひっそりとフランス国内、近隣ヨーロッパの人々が楽しんでいたのです。
今回、まだ手付かずのこのドメーヌのワインを、少量ながら輸入することに成功しました。若干のバックヴィンテージも分けてもらったので、すぐに飲みたい方は古いものを試すことをお勧めします。
古木のブドウを慈しむような、丁寧な畑仕事
ドメーヌ・アンヌ・エ・セバスチャン・ビドーでは、栽培は極力自然な栽培をしつつ、畑の状況に合わせて対処する、リュット・レゾネを採用しています。
除草剤は一切使用せず、ブドウの健康状態をより良い状態で維持できるよう注意しますが、非常に小規模のドメーヌのため、万が一の病気蔓延時のリスクを考え、特にオーガニックなどの認証は取得していません。
もともと「レゾネ」とは、ある一定のルールをすべてに適用するものではありません。例えば気候や流行る病害は毎年必ず同じではないので、マニュアル作業的なものでは対応しきれません。まず「観察と原因の把握」から入り、その根本原因に対し長期的な視野でアプローチしていくのが本来のリュット・レゾネです。
例年6月に摘葉を行い、より風通しを良くすることで病害を予防し、またより良い熟度のブドウが得られる ようにしています。これは同時に、収穫の到来時は、選果及び収穫がより行いやすくなるというメリットももたらします。 収穫は20kg入のカゴを使った手摘みで行い、選果後にブドウ果をつぶさないように除梗します。
醸造方法 アルコール発酵時には、定期的な試飲チェックを行いながらピジャージュ*1とルモンタージュ*2。アルコール発酵は約2週間かけて行い、0.8~1気圧で2~3日かけて圧搾し、樽へワインを移します。
樽の中でマロラクティック発酵と熟成を行います。熟成期間は12ヶ月。
新樽率hは50%(Clos de la Rocheのみ18ヶ月間、新樽率100%)です。必要な場合のみにごく軽くフィルターがけを行いますが、清澄のみに止め、瓶詰めを行います。
*1 Pigeage (ピジャージュ、ピジェアージュ)ワインの発酵中に浮き上がってくる果帽(果皮や種子などの固形物)を棒などで突き崩して再度発酵中のワインの中へ沈める。こうすることで、液面が覆われてワインが呼吸できなくなることを防ぎ、発酵を促すとともに、果皮や種からしっかりとポリフェノールや香りなどを抽出する。
*2 Remontage(ルモンタージュ) 発酵中にタンクの下から上部へ液体をパイプなどで循環させ、発酵を促しつつ均一に進めるのが目的。
このドメーヌの本拠地、モレ・サン・ドニ。両隣にジュヴレ・シャンベルタン村とシャンボール・ミュジニー村という二大スターが存在するため、どうしても影が薄くなりがちですが、実際にはグラン・クリュ5つとプルミエ・クリュを数多く持つ、コート・ド・ニュイ屈指の銘醸地です。
石灰質、粘土石灰質の土壌から、長期熟成向きで骨格のしっかりした、男性的な魅力を備えたワインが生み出されます。熟成とともに、最初やや強く感じられたタンニンがまろやかに変容しとても魅力的なワインに仕上がると言われています。
モレ・サン・ドニの村名区画の中でも、シャンボール・ミュジニーに接し、1級畑のクロ・ド・ラ・ビュシエールのすぐ下にあるリュー・ディ「 les Porroux 」の畑のブドウのみ使用。
広さはわずか0.1239ha、ブドウは1987年植樹。モレ・サン・ドニの村名の中でもとりわけ品質の良いものができる、として名高い区画です。シャンボール・ミュジニー村と接する位置にあり、華やかさも持ちますが、若いうちはなかなか開きにくいという特徴を同時に備えています。
一般的に熟成向きの堅牢なタイプのワインとして、長期熟成が期待できます。
ブルゴーニュの中でも最も有名な銘醸地、ジュヴレ・シャンベルタンは、ナポレオンがこよなく愛した
「特級シャンベルタン」を擁することで、世界的に知られています。
ブルゴーニュ委員会の解説では「力強く、リッチ、コクがあり、ボディとエスプリを感じる。ストラクチャーが堅固で、タンニンはビロードのようであり、テクスチャーは非常になめらかで硬さはない。若いうちはフルーティを楽しめ、心地よいが、このワインはなんといっても熟成向きである。それも長く熟成させるのがよい。ヴィンテージを学ぶにはすばらしいワインである。」と説明されています。
ジュヴレ・シャンベルタン村の3つの区画、 « les Seuvrées » 0.3485ha 、« Champs Chenys » 0.2205ha、 « Aux Chezeaux » 0.1540h、合計0.7230haの畑からワインを造ります。特級マゾワイエール・シャンベルタンやシャルム・シャンベルタンのすぐ下方に広がる、優れたテロワールを持つリュー・ディです。 古くは1921年植樹の古木があり、若いブドウでも1966年 植樹のため、キュヴェ名には« Cuvée Vieilles Vignes »を銘打っています。
モレ・サン・ドニの南にあり、「ブルゴーニュの中で最も優美、女性的」と形容される華やかなワインを生むのが、シャンボール・ミュジニー村です。他の銘醸地に比べ非常に狭いため、この村に畑を持ちたいと願いつつ、空きが出るのを待ち続ける生産者も非常に多い憧れのテロワールともいうべき地です。
元来シトー修道院に属し、厳格な畑の管理のもと、面積がいたずらに増やされることはありませんでした。シャンボール・ミュジニーの魅力は、華やかな香りとシルクのように滑らかな質感。ブルゴーニュで「最も女性的」と言われる優美で可憐な味わいを楽しむ事ができます。
シャンボール・ミュジニー村は大きく分けて二つのテロワールがあります。北側でモレ・サン・ドニに接する部分、特級ボンヌ・マールを擁する粘土質交じりの土壌は、気品の中にも骨格を持つ、ボリューム感のある仕上がり。対して南側、特級ミュジニーを擁する石灰質土壌は、よりミネラル感のある華やかなタイプです。アンヌ・エ・セバスチャン・ビドーの所有する区画はLes Herbues という北寄りの区画で、古いマール(泥灰質)や粘土質を持ち、構造のしっかりしたワインを生み出します。広さは0.2470ha、樹齢は非常に古く、なんと1921年植樹。ヴィエイユ・ヴィーニュが、土壌奥深くのミネラルを吸い上げワインに深みを与えます。
コート・ド・ニュイからコート・ド・ボーヌへ抜けるとき、コルトン山を境に景観が変わります。この立地が象徴するように、アロース・コルトンは赤ワイン、白ワインどちらの特級ワインも持つ、選ばれた土地です。有名な畑はCorton と Corton-Charlemagne。古のシャルルマーニュ大帝の名を冠する力強い白ワインは特に有名です。畑は日の出から日没まで太陽が当たる恵まれた立地にあります。
アロース・コルトンの畑は標高200~300mに位置し、小石、粘土、泥灰質土壌や、赤味を帯びた褐色土壌、珪土質の球状塊や石灰質の火打石の破片を含み、リン酸やカリウムが豊富と言われています。 この村名区画のうち1区画、 « les Citernes »というリュー・ディを 0.1338haでブドウを育てています。この区画は、同村のペルナン=ヴェルジュレス側にあり、安定した品質の赤ワインで名高い1級畑、ヴェルコのすぐ下にあります。ブドウは、1933年と1988年に植樹しています。
モレ・サン・ドニ村でも最も北にあり、おそらく村名よりも知名度のあるグラン・クリュの畑がクロ・ド・ラ・ロッシュです。石灰岩主体で、土壌の厚さは30cmしかなく、わずかに砂利や石塊が見える畑。まさにロッシュ(岩)を思わせる、独特の土壌です。ブルゴーニュ委員会の説明では、「Clos de la Roche はより個性的で、重々しく深みのあるChambertinにより近い。赤や黒の果実よりも、腐植土やトリュフの香りが強い。」と言われる、魅力的なグラン・クリュです。
アンヌ・エ・セバスチャン・ビドーが所有するのは、特級クロ・ド・ラ・ロッシュの中でも« Monts Luisants »と呼ばれる、ジュヴレ・シャンベルタン寄りの区画で、面積はわずか 0.0656ha。 アンヌの両親が丁寧に長年耕作し続けていた畑を2011年に受け継ぎました。ブドウは1931年植樹、樹齢80年を超えるヴィエイユ・ヴィーニュです。耕作には馬を使います。トラクターは使いません。 このモン・リュイザンと呼ばれる区画は、野性的な魅力を持つといわれるクロ・ド・ラ・ロッシュの中でもフィネス(繊細さ)を表現する区画として知られています。
ジュヴレ・シャンベルタンにあるこのワイナリーは、アンヌとセバスチャン・ビドーの40代の夫婦によって営まれています。
旦那のセバスチャンは、元々ピュリニー・モンラシェのワイナリーの家族に生まれました。その後奥様のアンヌさんと出会い、結婚。その後アンヌの父親のワイナリーでワイン作りをしていました。今でもそのドメーヌのワインも作っています。
ピュリニー・モンラシェの家族はその後ブドウ畑を売ってしまい、その売ったお金の一部をセバスチャンが手に入れて、ジュヴレ・シャンベルタンにブドウ畑を購入。それがドメーヌ・ビドーです。
見学の当日、セバスチャンはタンク室を大掃除していました。
それというのも、新しいタンクが翌日に来るからきれいにしとかないといけなかったそうです。
醸造所は小道からさらに奥の、少し分かりにくいところにありました。
規模も家族経営の小さな醸造所でしたが、アンヌの家族のドメーヌのワインも作っていて整然としていました。
タンク室には丸いステンレスタンクと四角のものがあり、今回増えるのは温度コントロールができる、丸い大きなステンレスタンクだそうです。
貯蔵庫は3か所に分かれており、その中の一つがドメーヌ・ビドーのためのセラーになっていました。
その隣のオフィスには、なんとドラムのセットが!アンヌとセバスチャンの二人の娘さんが使っているそうです。一人はサックス、もう一人はドラムをしていて、セッションされるそうです。
貯蔵庫にはたくさんワインがありましたが、もう全て買い手がついているそうです。
ワイナリー見学の後は、近くにあるビドーの畑を見せてもらいました。
風の強い日でしたが、快く見学させていただきました。
ぜひ娘さんと共に日本に来てくださいとお話してドメーヌを後にしました。
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