赤ワインと白ワインを醸しており、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に最高品質のワインを生み出し続けている名門です。
幾多のワイン評論家たちから絶賛されていることはもちろん、世界中のワイン好きが一度は飲んでみたいと願う“憧れのワイン”としても知られています。
1855年にはパリ万国博覧会に合わせて行われたメドック格付けにおいて第1級を冠し、その地位を不動のものにしました。
このメドック格付けではメドック地区の中から選りすぐりの61シャトーが選出されているのですが、第1級に格付けされたシャトーは僅か5つしかありません。
それらは五大シャトーと呼ばれ、現在に至るまで“世界的に名声高い赤ワイン”として扱われているのですが、そのうちの一つがシャトー・マルゴーなのです。
格付けの際のブランドテイスティングにおいて、全シャトーの中でシャトー・マルゴーだけが満点を獲得したという点も特筆すべきでしょう。
シャトー・マルゴーの歴史は古く、16世紀にはワイン生産を行っており、18世紀の初期には現在と同規模である265haもの土地を有していました。
その当時からすでに素晴らしい品質のワインを生み出すシャトーとして名を馳せており、フランスで貴族の間で愛飲されていたと言われています。
また、当時では革命的なブドウ栽培を行い、現代に近い濃厚で複雑なワインに仕上げる醸造技術にもチャレンジし続けるなど、常に品質を高めるための努力を続けていたようです。
例えば、当時のボルドーは畑に赤ワイン用ブドウと白ワイン用ブドウが混ざって植えられており、両方のブドウが使用されていました。
そのやり方をやめて、赤ワイン用と白ワイン用のブドウを分けて仕込みをスタートさせたのも、シャトー・マルゴーが初めてだったと言われています。
シャトー・マルゴーは現代的なボルドーワイン造りのパイオニアでもあったのです。
18世紀末期にはフランス革命によりシャトーが政府に没収された時期もありましたが、その後エミリー・マクドネル女史の手に渡り、輸送手段が発達した19世紀には世界中にその名声を知らしめていました。
例えばワイン通としてしられる元アメリカ大統領トーマス・ジェファーソンも、シャトー・マルゴーを愛した一人です。
1934年にはボルドーの著名なネゴシアンであるジネステ家が所有したことで、醸造技術への投資やセカンドラベルの導入など、積極的な改革が行われてきます。
一方で、1960年~70年代にかけてはベト病やフィロキセラといったブドウに甚大なダメージを与えるトラブルや不作が続き、一時期は元詰めの中止が余儀なくされるなど、シャトーの名声が下がる苦しい時代もありました。
しかしその後、ギリシャ人の実業家アンドレ・メンツェロプーロス氏が所有者となると、その潤沢な財力で多大な設備投資を行い、シャトーの名声を取り戻します。
ボルドー大学の醸造学者であるエミール・ペイノー氏を顧問に迎え、徹底管理されたブドウ栽培や最新の醸造設備を完備。
専用の「樽工房」でつくられる、“マルゴー専用の樽”による熟成、そして完全に温度工程が可能なオリジナルセラーでの瓶熟成を行いました。
これにより品質はさらに向上し、一滴たりとも手抜きの無い素晴らしいワインを生み出す、“第1級の名に恥じない”名門シャトーへと上りつめたのです。
そんなシャトー・マルゴーですが、実は日本では最も有名な第1級シャトーとしても知られています。
1997年に公開された映画「失楽園」にて心中するシーンで飲まれたワインがシャトー・マルゴーであることから、日本国内での知名度が爆発的に上がったのです。
他にも、かの文豪アーネスト・ヘミングウェイが娘に「マルゴー」の名を付けたなど、様々な歴史や逸話がシャトー・マルゴーには存在します。
宝石のような輝きと誘惑に満ちた極上のワインは、今も昔も世界中のワインファンを虜にし続けているのです。
味の特徴
シャトー・マルゴーは、メドック格付けの第1級シャトーの中で、もっとも「女性的」と例えられている味わいです。香りがとても華やかな上に風味や口当たりもまろやか、渋みもベルベットのような舌触りという、非常にエレガントな味わいが特徴的でしょう。ブラックチェリーやカシス、煮詰めたジャム、スパイス、杉、ダークチョコレートといった香りや風味。口内に広がる果実の凝縮感。
最高のバランスに整えられた酸と渋みは、芸術品を思わせる味わいです。
美しく年齢を重ねていった女性のように繊細でありながら芯の強さを感じるその存在感は、「ボルドーの宝石」とも称されるほどのクオリティを誇っています。
世界的ワイン評論家ロバート・パーカーJr.氏も、「1980年代以降のシャトー・マルゴーは完全によみがえり、100点満点に近いワインを生み出し続けている。」と、絶賛しました。