若いワインとは造られてすぐに瓶詰めされたワインのことで、果実味に溢れいきいきしたフレッシュな味わいを楽しめます。
一方、熟成ワインは瓶詰めされた後に数年から数十年じっくりと熟成させることで、若い頃には感じないまろやかで複雑な芳香が楽しめます。
熟成ワインの大きな特徴は、この複雑な香りやまろやかな口当たり、そして色調の変化です。
赤ワインであれば、渋みの元となっているタンニンが熟成中にワイン中の各種成分と化学反応を起こすため、若い頃のギシギシした感じからベルベットのようなシルキーな舌触りへと変化します。
また、若い頃に濃かったり鮮やかだったりした外観は、熟成によりオレンジ色、さらにレンガ色へと変化します。
これもまた、熟成中にワインの色調に関係する成分がさまざまな反応を経ることで起きる現象です。
香りも、フレッシュさを感じさせる果実感というよりは肉やダークチョコレート、乾燥したイチジク、ラムレーズンといった深みのある印象になり、“大人っぽい”雰囲気へと成長していきます。
白ワインの場合、ほとんどが若いワインとして製品化されますが、一部の高級ワインや甘口ワインなどは長期熟成させることもあります。
色合いは濃い琥珀色へと変化していき、口当たりも重厚でなめらかです。
香りも「アンズやアプリコット、ハチミツやキノコ」など、複雑で濃い印象へと変化していきます。
熟成ワインと一口で言っても、5年ものや10年もの、20年もの、またはそれ以上であったりと、実にさまざまです。
品種やその年のブドウの出来映え、生産者の哲学など、ワインを熟成させるポイントはたくさんあります。
例えば、フランスのボルドーは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどを主体とする赤ワインが多く、これらは渋みのもとであるタンニンが豊富に含まれているため、ワインが長期熟成に耐えられます。
そのため、ボルドーワインは熟成ワインが多く、グランヴァンなどの高級ワインにいたっては50年以上の熟成を経たものも存在するのです。
同じ品種であっても、産地や熟成環境、熟成期間によってその個性が変化していきます。
品種と産地、生産者、そして熟成期間。どんなタイプの熟成ワインと出会えるのか、それを探すのもワインの楽しみ方のひとつでしょう。
味の特徴
熟成ワインの味わいの特徴は、若いワインと比較して“まろやかな味わい”であることです。一般的に、白ワインはブドウの収穫年か翌年、赤ワインはブドウの収穫年か2年後といった早いスパンでリリースされます。
これらのワインはフルーティーな果実の香りがメインとなり、口当たりもフレッシュで新鮮さを感じさせるカジュアルな印象です。
若いワインは、ワインを発酵させた後にステンレスタンクや樽で軽く落ち着かせ、すぐに瓶詰めされるため、ブドウが持つ香りや発酵由来の香りが主役となります。
一方、熟成ワインは樽熟成を経た後に瓶詰めされ、セラーなどでじっくりと寝かされます。そのためブドウ由来の香りが熟成を経ることでさまざまな成分と反応を起こし、より落ち着いた印象へと変化するのです。
渋みもまろやかになっていき、口当たりも爽やかな印象ではなく、滑らかでシルクのような舌触りに。
特に赤ワインは、
・干し肉
・黒トリュフ
・腐葉土
・キノコ
・西洋杉
・クローブ
・黒コショウ
・葉巻
・ブラックベリー
など、若い頃にはあまり感じることが無かった香りがどんどん出てくるため、口に含む度に新しい発見をすることができます。
良い熟成を経たワインであれば、褐色というよりは、ほどよくオレンジがかった美しい色合いに変貌していきます。
熟成ワインこそ、“ワインは生きている”という言葉を体現していると言えるでしょう。