葡萄色エステイト
EBIIRO ESTATE

茨城県南東部、霞ヶ浦と北浦という二つの湖に挟まれた行方市。
関東平野の肥沃な土地が広がるこの場所は、もともと葡萄畑だったわけではありません。しかし、金融の世界で長く生きてきた海老澤純さんが、第二の人生に選んだワイン造りで、この土地に足を踏み入れました。
思い描いていたのは、かつて海外で目にした、葡萄畑が広がる風景。2020年末に自ら土地を拓き、2021年春には約1haに1,200本強を植樹。少しずつ畑を広げ、2025年春には2ha弱、3,500本を超える葡萄が育つ畑になりました。ここは、そんな一人の挑戦から始まった「葡萄色(えびいろ)エステイト」です。
―日本ワインの「これから」を
楽しみたい方へ。―
長い歴史を持つ産地には、すでにその土地らしい品種や味わいがあります。一方、行方のワインは、まだその答えを探している途中です。
どの葡萄がこの土地に合うのか。どんな味わいが、この土地らしいのか。育てて、造って、また次の年へ。その積み重ねの中で、少しずつ「行方のワイン」が形になっていきます。
完成された味を楽しむだけではなく、産地と造り手が育っていく時間まで一緒に楽しむ。
そんな日本ワインの面白さを感じられるのも、葡萄色エステイトの魅力です。
―いつもの食卓に、
気軽に、一緒に。―
ワインのために、特別な料理を用意しなくてもいい。
たとえば、鶏肉や豚肉のソテー、焼き魚、季節の野菜を使った料理。少しつまみたい夜なら、チーズやハムを並べるだけでも。
毎日の食卓に並ぶ、いつもの料理と一緒に気軽に楽しむ。そんな距離感も、葡萄色エステイトが目指す「カジュアル」なワインの楽しみ方です。
休日の少しゆっくりした夕食にも、何でもない日の晩ごはんにも。
「今日はワインを開けようか」——そんな日に、自然と手が伸びる一本です。
―土地が、葡萄を選び、
味をつくる。―
霞ヶ浦と北浦の間で見つけていく、「行方らしいワイン」。
行方は、ほぼ海抜0mの関東平野。温暖で葡萄が育ちやすい一方、昼夜の気温差が少なく、雨も多い土地です。
だから葡萄色エステイトでは、最初から「この品種、この味」と決めつけるのではなく、実際に育てながら行方に合う葡萄を探してきました。
2025年春時点で育てているのは、白3品種・黒7品種、3,500本超。
たとえばメルロは病気になりやすく、ピノタージュにはこの土地との相性の良さを感じる。白葡萄ではプティ・マンサンがよく育ち、糖度がありながら酸も残る。アルバリーニョにも良好な生育が見られ、黒葡萄ではヤマソーヴィニヨンにも可能性を感じています。
その繰り返しから生まれてきたのが、糖度だけに寄らず、酸のある、すっきりと締まった味わいです。
―今しか飲めない、
「始まり」のヴィンテージ。―
2020年末、自ら重機を操って土地を開墾。2021年春、約1ha・1,200本強から始まった神明圃場は、2025年春には2ha弱、3,500本を超える葡萄が育つ畑になりました。
植樹2年目には、自分の葡萄から初めてワインを造りました。販売しなかったそのワインは、「VT 0」。
そのとき海老澤さんが感じたのは、「ワインが造れた。スタート地点に立てた」という喜びでした。
そして2025年は3rdヴィンテージ。植樹から5年を迎えた葡萄には、少しずつ凝縮感も出てきたといいます。さらに葡萄色エステイトは現在、自社醸造へ向かう途中にあります。
まだ完成されたワイナリーではない。
だからこそ、今の一本には「今」しかない。
まだ、自社醸造所ができる前。
行方に合う葡萄を探しながら、一本ずつワインを造っている今は、葡萄色エステイトの物語が始まったばかりの時間です。
これから畑も、ワインも、きっと変わっていく。
だから今の一本には、後からは戻れない、葡萄色エステイトの「始まりの味」があります。
造り手と産地が育っていく、その時間まで味わえる。 日本ワインの新しい物語を、その黎明期から楽しめるワインです。

物語1:第二の人生を、ワインとともに。好きだったワインが、いつしか「これからの人生」になった。
海老澤さんは、長く金融業界で仕事をしてきました。仕事柄、会食の機会も多く、ワインはもともと身近な存在。好きが高じてワインの資格を取得し、さらにSAKE Diploma、チーズ・プロフェッショナル、ワインエキスパート・エクセレンスへと学びを深めていきました。海外出張では、顧客と、あるいは個人的にワイナリーを訪れることもあったといいます。
ひとつの転機となったのが2019年。仮装して走り、給水所にはワインまで用意されているというランニングイベント、“ボルドーマラソン”に参加するため、ボルドーへ。その滞在中にもワインに携わる人々と出会いました。
やがて第二の人生を考え始めたとき、心に浮かんだのは、「ワインに携わる仕事がしたい」という思いでした。
公式プロフィールに記した経歴は、「2022年〜死ぬまで ワインブドウ等農家兼ワイン醸造家兼不動産・企業コンサルタント」。定年後の余暇としてではなく、これから先の人生そのものとして、ワインを選んだことが伝わってくる言葉です。
物語2:なぜ、茨城県行方市だったのか。
遠くの銘醸地ではなく、自分につながる土地から。
新しくワイン造りを始めるなら、どこで葡萄を育てるのか。海老澤さんが選んだのは、茨城県行方市でした。ここは祖父母宅があり、海老澤さん自身も父親の仕事の関係で水戸に長く暮らしたため、縁のある土地です。
行方市は、西に霞ヶ浦、東に北浦。二つの湖に挟まれ、関東平野の肥沃な土地と湖の恵みを背景に、農畜産業や水産業が盛んな地域でもあります。けれど、葡萄色エステイトの畑は、もともと葡萄畑だった場所ではありません。
2020年末から、自ら重機を操って開墾を始めました。そのとき頭にあったのは、かつてマラソンで走った葡萄畑の風景。もちろん、一人の力で同じような広大な景色をつくることはできません。それでも一本ずつ葡萄を植え、畑を育ててきました。
2021年春、約1ha・1,200本強から始まった神明圃場。その風景は、少しずつ「葡萄畑」へと変わっていきました。
物語3:行方だから生まれる味を探して。
平らで温暖な土地から、小さくてもメリハリのあるワインを。
行方は、ほぼ海抜0mの関東平野。海老澤さん自身、この土地から生まれるワインには「平たいワインになりそうなイメージ」があったといいます。
しかし、実際に葡萄を育て、ワインにしてみると、印象は違いました。糖度は上がりながらも酸が残り、すっきりと締まりがある。海老澤さんの表現を借りれば、「小さいけれど、メリハリのある味わい」でした。
一方で、温暖だからこその難しさもあります。暖かいため葡萄は育てやすい反面、昼夜の気温差が少ない。そして雨も多い。2026年からは雨除けを全面に張るなど、その年、その土地に合わせて栽培方法も変えています。目指しているのは、どこか別の産地のワインを真似ることではありません。この平らな土地、この気候で育った葡萄が、どんな味になるのか。その答えを、一本ずつ探しています。
現在物語4:10品種を育てる理由。「この土地に合う葡萄は何か」。
答えは、畑の中にある。
2025年春時点で、葡萄色エステイトでは白3品種、黒7品種、3,500本を超える葡萄が育っています。実際に育ててみると、品種によって行方との相性は大きく違いました。たとえばメルロは病気になりやすい一方、ピノタージュはこの土地に合っているのか、しっかりと育っている印象があるといいます。白葡萄では、プティ・マンサンが特に好調。糖度が高まりながら酸も残りやすく、シャルドネなどとブレンドすることで、味わいにメリハリを与えています。また、海に近い環境から、アルバリーニョもよく育っているそうです。そして現在、海老澤さんが行方との相性の良さを感じている黒葡萄のひとつが、ヤマソーヴィニヨン。収量も多く、今後は単一品種での醸造にも挑戦し、「上品な味わい」に仕上げてみたいと考えています。
最初から答えがあるわけではない。育てて、失敗して、また試す。その積み重ねそのものが、まだ若い産地・行方のワインを形づくっています。
物語5:「ナチュラル」を理想論だけで終わらせない。
自然と向き合うことは、必要な手をかけることでもある。
葡萄色エステイトが掲げているのは、「カジュアル・ナチュラル・サステナブル」なワイン造りです。
当初、畑ではほぼ有機に近い栽培を目指していました。しかし実際に葡萄を育て始めると、虫に葉を食べられる。雨が降る。鳥が来る。理想だけでは葡萄を守れない現実にも直面しました。
「有機栽培をするには勇気がいる。」実際に畑に立ち、葡萄を育ててきた海老澤さんだからこその言葉です。
現在は必要に応じて防虫剤を使用する一方、除草剤は使わないという方針を続けています。草との付き合いも簡単ではありません。樹の根元には防草シートを敷き、その周囲は草刈りをする。広い畑を一人で管理すれば何日もかかるため、現在は業者の力も借りています。
「ナチュラル」とは、何もしないことではない。目の前の畑を見ながら、どこまで人が手を入れるのか。葡萄色エステイトの栽培は、行方の自然との現実的な対話の中で続いています。
物語6:Roccoと、畑を走るワインドッグ。
畑にもラベルにも。いつもそばには、愛犬たちがいる。
自社畑の葡萄から造られるワインの名は、「Rocco」。イタリア語で「塔、城」を意味し、神明圃場がかつて常陸武田氏の居城跡であったとされることから名づけられました。
そして、Roccoのラベルでこちらを見つめている犬。モデルは、海老澤さんが飼っているジャーマン・ポインターです。猟犬として一緒に猟へ出れば、仕事をする鋭い目つきに。けれど普段は人懐こく、テーブルの料理を食べたそうに眺めている食いしん坊。そんな愛犬がテーブルに顔を乗せ、ワインを見つめる日常の姿がラベルになりました。
少し目を引くラベルで手に取ってもらいたい。そして、肩肘張らずカジュアルにワインを楽しんでほしい。Roccoには、そんな思いも込められています。
物語7:「葡萄色」に詰め込んだ、いろいろな人生がつながって、茨城・行方から未来へ。
「葡萄色」と書いて、えびいろ。山葡萄の熟した実のような赤紫色を指す、日本に古くからある色の名前です。そしてこの名前には、代表・海老澤さんの「海老」と、これまで好きになってきた「いろいろ」という意味も込められています。ワイン、チーズ、日本酒、乗馬、狩猟。「やりたい」と一つずつ始めたことが、振り返れば、いつの間にかひとつにつながっていました。
その「いろいろ」を詰め込む場所だから、葡萄色エステイト。そして今、その思いは茨城という土地にも広がっています。地元の食材と一緒に、地元のワインを楽しんでもらうこと。さらに、きれいなスパークリングを造り、いつか「茨城ワイン」のひとつの特徴にすることも、海老澤さんが思い描く未来です。
最後に:まだ完成していない。
だから、このワインは面白い。
植えて2年目に収穫した葡萄から、お披露目用のワインを造りました。販売はしなかったそのワインを、海老澤さんは「ヴィンテージ 0」と位置づけしています。
初めて自分の葡萄がワインになったときに感じたのは、「ワインが造れた。スタート地点に立てた」という感動でした。
そして2025年は3rdヴィンテージ。植樹から5年を迎えた葡萄には、少しずつ凝縮感も出てきたといいます。まだ歴史の長いワイナリーではありません。
行方に最適な品種も、栽培方法も、これから造るスパークリングも、自社醸造所も。すべてが、まだ途中です。
けれど、その「途中」を隠さないことこそ、葡萄色エステイトの面白さなのかもしれません。
金融の世界から葡萄畑へ。
何もなかった土地から、3,500本を超える葡萄の樹へ。
そして、葡萄畑から自分たちのワイナリーへ。
人生の「いろいろ」が、一本のワインになる。
茨城・行方で始まった物語は、まだ、最初の数ページをめくったばかりです。
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