サロン
SALON
わずか5つしか存在しない五つ星生産者の一つがこの「サロン」です。
(ちなみに他はクリュッグ、ボランジェ、エグリ・ウーリエ、ジャック・セロス)
シャンパーニュ「サロン」は、生まれながらにしてグラン・メゾンで供される存在だった。
ウジェーヌ・エメ・サロンというひとりの完璧主義者が造り上げた芸術的なまでの創造物。
第一次世界大戦の傷跡がまだ生々しく残る1920年代、ヨーロッパ随一の社交場として君臨するグラン・メゾン、パリのマキシムにおいて、ハウス・シャンパーニュに採用されたことが、サロン伝説の始まりである。
サロンは初めてづくしのシャンパーニュであった。
シャルドネ生一本のブラン・ド・ブランが初の試みなら、ル・メニルの単一クリュものというのもまた初めて。
さまざまなクリュから寄せ集めた3種類のセパージュを巧みにブレンドすることこそ、シャンパーニュ造りの真髄とされる当時の教条から完全に逸脱していた。
しかも、卓越したヴィンテージにしか造られないため、20世紀の100年間に誕生したサロンは、最新の95年ヴィンテージまで数えてもわずか32にしかならない。
生産量は多い年でさえ7000ケース。その半分にも満たない年すらある。
幻のシャンパーニュと呼ばれても無理はなかろう。
サロンはたいてい10年の年月を経て市場にお目見えするのが常だ。
極めて堅牢な85年ヴィンテージは13年にも及ぶ熟成を重ねて、88年ヴィンテージの後にリリースされた。
この長い熟成期間により、サロン独特の香味が生まれる。
ナッティな酸化熟成香はオーク樽を連想させるが、現在、サロンにおいてオークは一切使用されていない。
ミネラル豊富な土壌で育まれたシャルドネが、熟成により醸し出す自然のフレーバーである。
ブラン・ド・ブランといえばアペリティフと、定位置が決まっているかのようだが、
サロンは偉大なガストロノミーと味わうべきだ。