ロワールでは大きくわけて、
・ペイ・ナンテ地区
・アンジュー・ソーミュール地区
・トゥーレーヌ地区
・サントル・ニヴェルネ地区
といった4つの主なワイン産地地区があり、それぞれの地区で個性の違うユニークなワインが生産されています。
ペイ・ナンテ地区では、「ミュスカデ」という白ブドウ品種が主要品種であり、滓(かす)と一緒に樽内で一定期間熟成させる「シュール・リー」という独特な製法が義務づけられています。
アンジュー・ソーミュール地区では、「AOCロゼ・ダンジュー」をはじめとしたロゼワインが多く造られています。
AOCとは「産地の個性を守るための法的な規制」のことです。
その他にもシュナンを使用した甘口ワインや貴腐ワインが造られています。
トゥーレーヌ地区は、世界的にも有名な「AOCシノン」や「AOCブルグイユ」があり、「ブルトン」と呼ばれているカベルネ・フラン種から造られる赤ワインが有名です。
サントル・ニヴェルネ地区は、ロワール川のもっとも上流に位置しており、ブルゴーニュ地方と同じ大陸性気候といった気候区分になっているのが特徴です。
ロワール川周辺の土壌は石灰質土壌が混じりだしており、「ソーヴィニヨン・ブラン」や「ピノ・ノワール」なども栽培されています。
また、ロワールは自然派ワインの宝庫としても知られており、数多くのビオワイン生産者がいることでも有名です。
このように、ロワールは広い地域のため特徴をひと言で言い表すのは難しいですが、多種多様な個性を持ったワインが造られているというイメージで良いでしょう。
味の特徴
ロワールワインは、その地区によって使用されているブドウ品種や製法が違うため、味わいの特徴をひとまとめにするのは難しいのですが、全体的に「爽やか」な味わいという共通点があります。なぜならロワールは、北緯47度という高緯度にあるため、とても冷涼な地域だからです。
暖かい気候の産地ではブドウの糖度が上がりますが、成熟のピーク以降は酸が落ちて行くため収穫時には糖が高めで酸が低めのブドウとなります。
一方、ロワールは冷涼であるため、糖度が急激に上がることはありませんが、酸の減少が少なくバランスの良いブドウが収穫できます。
そのため、全体的な味わいは軽く爽やかなものとなり、飲み心地のよいスッキリとしたワインが楽しめるのです。
ロワールの赤ワイン
ロワールの赤ワインは、主に「トゥーレーヌ地区」と「サントル・ニヴェルネ地区」で造られているものが多く、主要なブドウ品種は「カベルネ・フラン」です。サントル・ニヴェルネ地区では、一部ピノ・ノワールを使用したワインも造られています。
カベルネ・フランは、「カベルネ・ソーヴィニヨン」などに似た、ハーブの青さを感じさせるのが特徴です。
涼しいロワールではそういったニュアンスが良く出る事もあり、フレッシュな印象の赤ワインとなります。
ロワールの赤ワインはライトボディからミディアムボディのものが主体で、全体的にブルーベリーやさくらんぼのコンフィ、若い杉のような香りなど、フレッシュな香りと風味を持った爽やかな味わいです。
一部、自然派ワインの中には個性のある獣肉やスパイス感のものが見られますが、全体的には、爽やかで軽快な味わいの赤ワインが多い傾向です。
ロワールの白ワイン
ロワールの白ワインというと、・ペイ・ナンテ地区
・アンジュー・ソーミュール地区
が産地として有名ですが、「トゥーレーヌ地区」、「サントル・ニヴェルネ地区」でも品質の高い白ワインが造られています。
主要なブドウ品種は、「シュナン・ブラン」や「ソーヴィニヨン・ブラン」で、単一品種から造られることが多い傾向にあります。
全体的には、赤ワインと同様に爽やかで軽快なものが多いのが特徴です。
シュナン・ブランから作られたワインは、爽やかな味わいが特徴的です。
色合いが淡く、柑橘系や黄色いリンゴ、トロピカルフルーツなどの風味を持っています。
中甘口、極甘口のワインでは、ハチミツやアプリコット、丸みのある柔らかな味わいに変化します。
ソーヴィニヨン・ブランは、冷涼な産地らしいハーブや柑橘系、青リンゴを思わせるようなフレッシュな香りがあり、酸もしっかりとした爽やかな味わいが特徴的です。
また、サントル・ニヴェルネ地区のソーヴィニヨン・ブランは、ややスモーキーな風味を楽しめるものがあるなど、同じロワールでも地区によって違った味わいを楽しめます。
ロワールワインに使われているブドウ品種
ロワールワインには、さまざまなブドウ品種が使用されています。その中でも、ロワールワインに重要とされている主要品種を紹介していきましょう。
ソーヴィニョン・ブラン
ソーヴィニョン・ブランはボルドーやニュージーランドで有名な、青ネギに喩えられる特徴的な香りを放つ白ブドウ品種です。ロワールの、
・トゥーレーヌ地区
・サントル・ニヴェルネ地区
で主に栽培されており、ハーブと柑橘系の香り豊かでフレッシュ。
夏場にぴったりの白ワインを生み出します。
ソーヴィニョン・ブランは石灰質土壌や粘土質土壌でその個性が変わるため、トゥーレーヌ地区では比較的フルーツの甘さを思わせるニュアンスがあるものが多く見受けられます。
サントル・ニヴェルネ地区では、スモーキーな香りを放つソーヴィニヨン・ブランも存在しますが、そのスモーキーなニュアンスから「ブラン・ヒュメ(燻製された白ブドウという意味)」とも呼ばれています。
シャルドネ
シャルドネは、ブルゴーニュの主要品種で「白ワインの女王」として知られるブドウです。ロワール地方の涼しい気候や石灰質の土壌を有する地域と親和性が高く、
・アンジュー・ソーミュール地区
・トゥーレーヌ地区
といった中流域の主要品種として活躍しています。
シャルドネは生産者によって味わいの個性が異なります。
樽を効かせたものはナッツやクリーム、ネクタリンといった”甘さとこってり感“が重視されます。
そして、ステンレスタンクで仕上げられたものは、レモンや白桃、白い花を感じさせる「フレッシュな味わい」に仕上げられています。
ピノ・ノワール
ブルゴーニュの赤ワインの主要品種であるピノ・ノワールは、ロワールでも主要な品種として使用されています。主に
・ペイ・ナンテ地区やトゥーレーヌ地区
・サントル・ニヴェルネ地区
の「AOCサンセール」で使用されています。
カシスの香りやイチゴ、フレッシュなフルーツを思わせるライトな風味の赤ワインが多く見受けられます。
トゥーレーヌ地区では、華やかで香り豊かな赤ワインが造られていますが、ピノ・ノワールをロゼワインに使用する事もあります。
シュナン・ブラン
シュナン・ブランはロワール渓谷原産の白ワイン用ブドウ品種です。爽やかな辛口ワインから甘口のデザートワインからスパークリングワインまで、さまざまなスタイルを生み出す酸味に富んだ白ブドウです。
シュナン・ブランは主に
・アンジュー・ソーミュール地区
・トゥーレーヌ地区
で使用されることが多く、別名で「ピノー・ド・ラ・ロワール」とも呼ばれています。
淡く黄色みがかった外観の白ワインを生み出し、柑橘系や花、蜜のような風味が特徴的です。
カベルネ・フラン
ロワールの赤ワインの主要品種である、カベルネ・フラン。人気のブドウ品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」の親品種であり、
・アンジュー・ソーミュール地区
・トゥーレーヌ地区
といったロワール中流域で活躍しています。
カベルネ・フランは中くらいの濃さの色合いで、さくらんぼ、カシス、ブルーベリー、紫色の花のような華やかな香りを持ちます。
さらにハーブのニュアンスやスパイシーさ、杉を思わせる香りもワインに複雑性を与えます。カベルネ・フランの渋みは強過ぎないので、バランスのよいエレガントなワインとなるのが特徴です。