ローヌのワイン産地は、大きくわけて南北に分かれており、それぞれに特徴があるワイン造りが行われています。
まず、ローヌはブルゴーニュとプロヴァンスの間にある縦に長いワイン産地であることから、「北部は大陸性気候」、「南部は地中海性気候」の影響を受けます。
さらに、ローヌ渓谷から地中海沿岸に抜けていくミストラルという北風が吹くため、雨のあとの水滴などを飛ばし、冷風であることから果実を小さくして凝縮感のあるブドウを育てます。
ローヌの特徴を掴む際、南北で造られているワインの個性を知ることが鍵となるでしょう。
味の特徴
ローヌワインは、北部と南部で味わいの特徴が大きく異なります。北部は、穏やかな大陸性気候と急斜面にブドウ畑が広がっています。
そのため、果実味と酸、渋みのバランスが良い繊細な味わいのワインが多く造られる傾向にあります。
一方、南部は温暖な地中海性気候であり、丘陵地帯にワイン産地が広がっています。
そのため、フルーティーな香りが強く、渋みも穏やかな丸みのある味わいのカジュアルワインが多く造られています。
ローヌワインは、ワインが造られている産地によって使用可能な品種の割合などが定められています。
そのことから、味わいの特徴をひと言でお伝えするのはかなり難しいですが、全体的に果実味は豊かで飲み応えのある、ミディアムボディからフルボディタイプのワインが多いと言えます。
ボルドーよりも柔らかく、ブルゴーニュより力強い。しかし、プロヴァンスよりは繊細。
ローヌワインは、バランスが良い味わいと覚えておきましょう。
ローヌの赤ワイン
ローヌの赤ワインは、南北の環境の違いから、タイプが大きく異なるのが特徴です。北部では、赤ワインに使用する黒ブドウはシラー1種のみです。このシラー単一品種か、白ブドウをブレンドしたタイプの赤ワインが造られています。
ロ-ヌ北部は、花崗岩質土壌で急斜面のブドウ畑のため機械化ができず、手作業で栽培が行われています。
そのため価格が高くなる傾向にあり、ローヌ地方の高級赤ワインは北部に集中しています。
高級ワイン産地が多く点在する北部ですが、中でも「エルミタージュ」は、シラーの最高峰とも言われるローヌの代表的な高級ワインとして、世界中で高い評価を受けています。
一方の南部は、ブドウ栽培に適した地であることから数多くのブドウ品種の使用が許されており、シラー、グルナッシュ、ムールヴェードルなど数種類の品種をブレンドした赤ワインが多く造られます。
南部を代表するワイナリー「シャトーヌフ・デュ・パプ」などは黒白合わせて13品種のブレンドが認められているほどです。
単一品種やブレンドされたものなどいろいろな種類がありますが、全体的に果実味が豊富な丸みのある味わいで、手頃な価格の赤ワインが主体です。
AOC「シャトーヌフ・デュ・パプ」などの高級ワインを生み出す産地もあり、低価格でありながら目を見張る品質の掘り出し物に出会える楽しさがあります。
ちなみに、AOCとは「産地の個性を守るための法的な規制」のこと言います。
シラーが主体で高品質な北部の赤ワイン、ブレンドされた味わいが楽しめるカジュアルな南部の赤ワインとして飲み分けると分かりやすいでしょう。
ローヌの白ワイン
ローヌでは、赤ワインとロゼワインの生産量が多く、白ワインは2割にも届きません。しかし、その品質は高いことで知られており、高級白ワインも造られているので注目すべき存在です。
ローヌの白ワインには、数多くの品種が使用されていますが、中でもヴィオニエのワインが有名です。
リンゴや洋梨、花を思わせる華やかな香りが特徴的で、酸も強過ぎずまろやかでジューシーな飲み心地の白ワインを生み出します。
また、「ルーサンヌ」や「マルサンヌ」「グルナッシュ・ブラン」といった品種でも白ワインが造られていますが、総じて熟した果実の香りや優しい口当たり、なめらかな酸を感じさせる飲みやすい白ワインに仕上げられています。
樽熟成などが採用されているものは少なく、ステンレスタンク特有のフルーティーな香りが楽しめるワインが揃っています。
ローヌワインに使われているブドウ品種
ローヌワインには、数多くのブドウ品種が使用されています。その中でも、ローヌワインの主要として使われているブドウ品種をお伝えしていきましょう。
シラー
コート・デュ・ローヌ原産の黒ブドウであり、ローヌの赤ワインの多くを生み出す最重要品種が「シラー」です。ボディがしっかりとしていて、色がとても濃く、長期熟成に耐える高級品種として知られています。
果皮に、胡椒の風味を放つ「ロタンドン」という成分があり、特に涼しい地域で育つシラーに多く含まれることが分かっています。
シラーは温暖な気候を好む品種ですが、北部はやや冷えるため、北部のシラーは胡椒のスパイシーな香りとやや強めの渋みが特徴です。
オーストラリアやカリフォルニア、チリなどの温暖な新世界と言われる地域と違った、複雑で繊細な味わいを楽しむことができます。
グルナッシュ
「グルナッシュ」は、スペインからもたらされているブドウ品種であり、スペインでは「ガルナッチャ」という名前で呼ばれています。南部ローヌの主要品種で、乾燥に強いため地中海性気候の南部ローヌのテロワール(土壌や気候など栽培地域の特徴)に合っていると考えられています。
さまざまなスタイルのワインを造るグルナッシュは、ベリーや熟したジャム、甘い果実の香りが特徴的です。
アルコール度数が高めのワインをつくり、渋みが強過ぎない丸みのある味わいとなるため、フルボディながら飲みやすい赤ワインとなる傾向にあります。
ヴィオニエ
北部ローヌの主要品種であることはもちろん、ローヌ全体を代表する白ブドウ品種が「ヴィオニエ」です。しっかりとした日照量が必要な品種であり、急斜面が多い北部ローヌで特に良い品質のヴィオニエが収穫できることで知られています。
香りが豊かで、リンゴや熟した果実、トロピカルフルーツを思わせるようなアロマティックなワインが多いです。
厚みのある風味で、余韻が長いため飲み応えもあります。
北部ローヌの「AOCコンドリュー」や「AOCシャトー・グリエ」のヴィオニエが特に有名です。
マルサンヌ
「マルサンヌ」は、北部ローヌでブレンド用として栽培されている品種です。ローヌ渓谷北部原産とされており、ローヌ地方だけでなく、プロヴァンスやラングッドッグでも栽培されています。
小石混じりの熱をもった土壌を好み、しっかりとした厚みと力強さのある白ワインに仕上がるのが特徴です。
白桃や柑橘のアロマ、ジャスミンのニュアンスを感じさせる複雑な味わいを生み出します。
酸は強過ぎず、華やかなニュアンスを求めて、ブレンド用として使用されることも多い品種です。
ルーサンヌ
マルサンヌと同様に、北部ローヌなどでブレンド用として使用されている白ブドウ品種が「ルーサンヌ」です。マルサンヌよりも熟す期間が早く、味わいや香りが繊細な白ワインを生み出します。
洋ナシやアプリコットなどの果実、花の香りで華やかさが特徴的です。
味わいのバランスが良くなることから、マルサンヌと多くブレンドされています。