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事実、ワイン醸造に於いて使用される大部分の酵母(人工のもの、天然のもの両方)は低温発酵には不適なタイプが多いのが現状です。仮に発酵が進んだとしても、満足のいく味わいにならなかったり、アルコール度がワインとして一般的な水準に達しなかったり、と満足な結果が得られない状況でした。
仮に、もし10度以下の低温下で完璧なワイン醸造のプロセスを進めることができれば、その白ワインは画期的な商品となるはずである、とマーティ氏は漠然と考えていました。
しかし、彼の知る限り、ワイン醸造の分野では低温に耐えつつアルコール度を標準的な13度前後まで上げられ、かつ高品質なワインを造ることができる酵母がなく、このアイディアは空想、絵には描けても実在しない「キメラ」であると考え、それ以上の探求はしていませんでした。
そして日本酒の作り方について説明をうけたとき、マーティ氏は心の底から驚いたのでした。それは、日本酒造りが、これまで彼が知っていたあらゆる可能性の範囲外にあったためです。
発酵温度は5度以下で進む段階があるという事、また蒸留などのプロセスを経るわけでもなく、酵母の力のみでアルコール度20度近辺、ワインでは到達できない度数まで到達できること、などなど。彼のイメージをはるかに超える世界を知ったことで、かつて漠然と思い描いていた、低温発酵ワインの製品化というプロジェクトが、突如具現化してきたのでした。
日本酒の醸造についてもっとデータをみたい、比較して検証したい、と考えるようになったマーティ氏。しかし、果実から造るワインと、お米から作る日本酒では異なる点も多く、外国人のマーティ氏にとって困難を伴いましたが、彼は熱心に学び続けました。
その彼の熱意にこたえてくれたのが、「獺祭」で有名な旭酒造の桜井博志社長(現在は会長)でした。「獺祭」を飲み感銘を受けていたマーティ氏は、この申し出をとても喜びました。桜井社長から多くのアドバイスを受け、自身のプロジェクトの骨子となる醸造プランを造ることができたのです。この時は醸造プロセスの情報だけでなく、多くの数値データまで見せていただき、日本酒酵母を応用した際の様々な疑問点が次々と解決していくようでした。また、桜井氏がかつてチャレンジした、ワイン酵母での日本酒造りにまつわるエピソードを聞くこともでき、非常に盛り上がった一夜でした。その時の助言から、多くの酵母の中でも比較的安定していて低温発酵に向いている7号酵母(真澄酵母)を使うという案が定まりました。
「ソーヴィニョン・ブラン種本来の香りは、温度上昇で揮発しやすい性質を持っている。 低温発酵をすることで、ソーヴィニョン・ブラン種の白ワインをよりアロマティックに 仕上がることができるのでは、と考えた」
発酵は常に10度以下で行い、一時は5度という、ワインではおよそ考えられない低温下で発酵を行います。その分、通常のワイン造りに比べとても長くかかりました。他のワインが発酵を終えても、この日本酒酵母のタンクだけは未完了でした。既に海外へ出る予定が入っていたマーティ氏は、泣く泣く経過の観察をスタッフにゆだね、チリを発ちました。
アメリカ、ヨーロッパ、中国、日本・・・と回る旅程の中、仕上がりの知らせを聞いたのは、奇しくも東京へ滞在していた時でした。セラーで定期チェックを行っていたスタッフから、「発酵が完了した」と知らせを受けたのです。帰国して興奮しながらそのワインをテイスティングしたマーティ氏。そこには、想像していた以上に、全く新しいソーヴィニョン・ブランのワインが誕生していたのでした。出来立てのころは一般的に言われるハーブの香り、夏草の香り、といった青い香りは少なく、白桃や白い花を思わせる芳醇な香り、そして、日本で飲んだ大吟醸酒の中に見出した、ローズペダルのアロマが感じられました。味わいもユニークでした。
「切れのある酸、シャープな辛口」というワインが多いソーヴィニョン・ブランですが、むしろその対極にあるような、ボリューム感のある、クリーミーで厚みのある味わいでした。この味わいは、日本酒酵母の影響が強く出たおかげではないか、とマーティ氏は考えています。
こうして、マーティ氏が長い間心に留めていたひそかなプロジェクトが実現したのでした。日本酒の存在を知ってから取り組み始め、実に7年にわたる多くの困難を乗り越えて、ようやく完成したのです。
ソーヴィニヨン・ブランの柑橘のアロマを楽しみ、その果実味を味わい、そして口内に長く留まる吟醸の香りに酔いしれる。この作品は、グローバル品種のひとつであるソーヴィニヨン・ブランの特徴を生かしながらも、日本酒の酵母による例外的な長期低温発酵がもたらした柔らかさを併せ持っている。
口に含んだ瞬間に感じるテクスチャーは、ワインというより日本酒のそれで、なおかつ舌の上に残るアフターにも不思議な吟醸香が感受できる。この斬新なワインは、あらゆる和食にマリアージュするだろう。ワインと合わせるのが難しい鮨や刺身、そしてもちろん家庭料理にも。和食だけでなく、魚のカルパッチョなどにも合うに違いない。
パスカル・マーティ氏の情熱、その作品に共感した亜樹直氏は、今回このワインの名称、ラベルデザインのコンセプト立案にも名乗り出てくれました。
漫画、神の雫の主人公がワインを口にしてイメージを描き出す、あの光景そのままに、美しい詩が書き下ろされ、この静謐なイメージをもとに、今回の「ぎんの雫」が生まれたのです。
ぎんとは、吟醸のぎんと、ワインの表現に使われる銀世界のイメージを二重に表しています。もう一つの名称である goutte d'argent とは、ぎんの雫を銀の雫 としたときのフランス語での直訳です。
詩の静謐でピュアなイメージを表現するために、控えめに輝く特殊な紙が採用されました。ラベル上部はチリの自然を象徴する、アンデス山脈の稜線を模してカットされます。また、ラベルの左右には、チリの国土の境界線を意味するラインが描かれています。その線は、ちょうどワイン産地として知られるセントラル・ヴァレーを中心とした地域を含み、左側は太平洋側、右側にはアンデス山脈川のラインを、それぞれ表現しています。ラベル上部には日本語で「ぎんの雫」と書かれ、その下には滴の中に「雫」の漢字 をかたどった意匠が、日本古来の紋のようにラベルにアクセントを与えます。そのシンボルの下には、フランス語で「GOUTTE D’ARGENT」という銘とともに、フランス原産のブドウ品種「Sauvignon Blanc」と、本商品の特徴である「Sake yeast fermented」という文字が記されています。
仕上がったラベルを見たマーティ氏は、とても満足げな表情でした。
「このラベルを見て私はとても驚き、また感謝しました。まず、無駄なものがない簡素な美しさに驚き、同時にこの名前を見て、私がボルドーで最初に作った白ワインをふと思い出しました。それはシャトー・ムートン・ロートシルトで生まれたAile d'Argent (エール・ダルジャン)です。私の節目となる大切なワイン二つが、偶然にも似通った名前になったことをとても嬉しく思います。」
明るいレモンイエローの色調。まずグラスからすがすがしいハーブ、夏ミカン、スダチ、レモンといった柑橘のアロマ、続いてエルダーフラワーやハイビスカス、ローズペタル、ヒヤシンスのブーケ、リンゴや白桃を思わせる甘みのある香りが奥に僅かに感じられる。 口に含むと非常に緻密なテクスチュア。丸みのある綺麗な酸味が、うまみを伴いながらジワリと口の中に広がっていく。余韻が非常に長く、柑橘や花のアロマをとどめたまま、ワインはすっと体になじむようにのどを流れる。 魚介類だけでなく、野菜料理などとも相性が良い。 実際に合わせたところ、野菜料理全般、刺身や貝などを含む魚介料理全般とも相性が良かった。和食全般とは非常に相性がよく、日本酒感覚で万能使いできる。また、白ワインにしてはとてもボリュームがあるタイプで、意外な所では羊肉とも相性が良い。ハーブを用いて、香りの強い食材を調理したようなエスニック料理とも楽しめる、懐の深い、使い勝手のよいタイプ。
五大シャトー「ムートン」、カリフォルニアの「オーパス・ワン」の後に、チリを代表するプレミアムワインの「アルマヴィーヴァ」を手掛けた時、彼はチリの類まれなテロワールを知りました。しかし、現状の大規模生産では、そのポテンシャルを引き出すだけのワイン造りが出来ない事にも気づいていました。彼の胸の内には、自身のワイナリーを造りたいという思いが芽生えたのもこの頃です。
2003年、アルマヴィーヴァでの自身の役割を果たした、との思いから、彼は自身のワイナリー設立に向け、動き始めます。コンサルタントとして世界中を回りつつ、ワイナリー設立準備を進めました。
「あのムートン、オーパス・ワン、アルマヴィーヴァを手掛けたパスカル・マーティ氏が新ブランドを立ち上げる」
噂を耳にし、ワイン業界内外で彼の夢に共感した人が続出しました。例えば「ロード・オブ・ザ・リング」で有名な映画会社ニューライン・シネマ(現ワーナーグループ)のマイケル・リン氏や、元バロン・フィリップ・ロッチルド社の社長で、現在アメリカで輸入会社を経営するオリヴィエ・ルブレ氏もバックアップを申し出ました。
多くの人々の夢も乗せて、2008年、満を持してマーティ氏自らのワイナリー「ディオニソス・ワインズ」を設立。2013年、ヴィニャ・マーティと自身の名を冠したワイナリーへと変更、生涯をかけたプロジェクトとしての意気込みを表現するに至ります。
カサ・デル・セロとは、直訳すれば「山に佇む小屋」ですが、ここではマーティ氏の自宅兼醸造所を指します。チリ最高峰のワインの一つ「クロ・デ・ファ」を生む畑が広がり、目の前にはコラソン・デル・インディオと呼ばれる大岩を抱いたアンデス山脈がそびえる名勝地。そこに建つパスカル・マーティ氏の住処が、ラベルに描かれています。
ヴィニャ・マーティの入り口となるこのレンジに自身の自宅兼醸造所をあしらったのは、「多くの人に飲まれる最も低い価格のワインのクオリティこそが、ワイン造りで最も難しいが、最も大切である」という考えによるもの。その自負あっての選択です。
一際目を引くシンプルなラベル、この「LOVE」シリーズは、ヴィニャ・マーティの中で最も親しみやすいアッサンブラージュ(ブレンド)ワインです。
ムートン、オーパス・ワン、アルマヴィーヴァ。世界最高峰のワインを手掛けるプレッシャーから離れ、自由にワイン造りができるようになった時、彼はまず自分のワインをもっと多くの人たちに飲んでほしいと考えました。LOVE という世界で普遍的な名前をあしらったこのワインで、日々の暮らしの中のワンシーンに花を添えてほしい、喜びを味わってほしい、そんな願いから生まれたのがこのワインでした。
新世界の土地で育ったブドウと、旧世界の伝統的醸造法のハイブリッドともいえるワイン。
寒暖差が強く、乾燥した土地に自根栽培で育つブドウは、野趣溢れる味わいでどれも個性的な特徴を持ちますが、そのブドウを伝統的な醸造法を用いて、時にフランスから取り寄せたフレンチオーク樽を使いながら、融合させ生み出された、ヴィニャ・マーティのレゼルヴァクラス。
堅牢なボディと、品種の個性を捉えた芳醇な味わい。品質を追い求めた伝統製法が生み出すハンドクラフトワイン。
マリポーザ・アレグレのコンセプトは、テロワールを際立たせ、その土壌・ブドウ品種の個性を引き出す伝統的ワイン造りを行うことです。フランスではフィロキセラ禍により、ほぼ途絶えてしまった自根のブドウが、チリにはまだ存在します。パスカル・マーティ氏のフランス式伝統製法と、チリの優れたテロワールを結びつけたマリポーザ・アレグレは、まさにハンドクラフト的なワインと言えます。個々の畑、ブドウ、年によってもその状態に合わせて最適な醸造方法をとることでワインには、そのテロワールの個性が生き生きと反映されます。伝統的な手作業のおかげで、オートメーションでは得られない、複雑さ、凝縮味を感じることができるでしょう。
雄大なアンデスの伝承に捧げるボルドー伝統のアッサンブラージュが生み出す。
コラゾン・デル・インディオは、プレミアム・ブレンデッド・ワインに位置付けられる上位キュヴェです。ヴィニャ・マーティのセラーからアンデス山脈を見上げると、その稜線は、ちょうど人が仰向けに寝たようなシルエットを描きます。頭、額、鼻、あご・・・そしてちょうど胸元の付近に、ハート型の大岩が見えます。この岩は、夕日を受けたときに燃えるように照り返すので、昔から住む現地の人々は、この岩を「コラソン・デル・インディオ」、「インディオの心臓(ハート)」と呼びます。この岩には、現地のインディオに伝わる伝説があります。
カラクは、ヴィニャ・マーティのプレミアムレンジの中では比較的新しいワインで、2012年がファーストヴィンテージです。
アイコンワイン「クロ・デ・ファ」を造る際、マーティ氏は選別した原酒をアッサンブラージュしますが、その後数回テイスティングを行います。この過程で、惜しくもファーストワイン「クロ・デ・ファ」のレベルに達しないと判断された樽のものが、カラクとして販売されます。
モノ・セパージュ最高峰ワイン。
SERシリーズは、醸造家パスカル・マーティ氏が、個々のブドウ品種に最も適したテロワールで栽培されたブドウを使い、単一品種ワインの最高峰として手掛けるワインです。ブドウ品種はそれぞれ適した地に植えられ最高のクオリティを発揮します。
その果実から生み出されたワイン「SER」は、チリと言う枠を超え、個々のブドウ品種のもつパフォーマンスを最大限味わうことができる、珠玉のモノ・セパージュワインシリーズです。
唯一無二の個性を持つ最上級キュヴェ。
ヴィニャ・マーティの畑の中でも、最も素晴らしいテロワールを持つ、アルト・マイポのDOピルケにある、「クロ・デ・ファ」から生まれます。
清酒7号酵母の力で新境地を開いた革新的白ワイン。
ムートン、オーパス・ワン醸造家パスカル・マーティ氏の構想から7年以上。あの「獺祭」生みの親、旭酒造の桜井博志氏、そして「神の雫」でフランスの芸術文化勲章を受けた原作者の亜樹直氏協力のもと、完成した世界初の試み。
「パレットに赤の素材を並べたところを想像してください。赤、と一口にいっても、本当に多様な種類があるでしょう。ワインも同じです。同じ土壌は一つとしてありません。たとえカベルネ100%でも、この樽と、その隣の樽の味は異なるのです。様々な原酒を素材として、1本の作品として仕上げるのが醸造家の役割です。単一品種100%のワインが世界で流行していますが、たとえモノ・セパージュのワインであっても、そこに醸造家が関わらなければ決して優れたワインにはならないのです。」
ヴィニャ・マーティでは、それぞれの適地を見出した上でブドウ栽培を行います。カベルネならば水はけがよい土壌、メルロであれば冷涼な空気と粘土質土壌。
1997年からアルマヴィーヴァを手掛けるために、彼はまず徹底してチリの土壌調査を行いました。この経験があるからこそ、彼はチリのテロワールを最もよく知る人物の一人なのです。
チリの特徴に合わせた畑仕事ができるのも、マーティ氏ならではです。
ヴィニャ・マーティでは、それぞれの土地の特徴、つまりフランス語でいう「テロワール」にあわせて、ブドウ品種を栽培しています。フランスでは長い伝統の中で、自然にその土地に合うブドウが受け継がれてきました。対して、ブドウ栽培の歴史が浅いチリでは、人々は、好みだったり、商業的な意図に合わせ、思い思いにブドウ品種を選ぶ事が少なくありません。
残念ながら、土壌との相性を無視してしまうと良い結果を得ることはできない、という事は周知の事実です。つまり、チリでは、いまだその秀逸なポテンシャルを活かしきれていない部分が存在するのです。
ヴィニャ・マーティでは、チリのテロワールを深く理解するマーティ氏の知見に基づきブドウ栽培がおこなわれています。ワイン造りにおいても、各畑の個性を引き出すという点にこだわります。大きなタンクで大量生産するのではなく、畑ごと異なるタンク・樽でワインを造り、それを最終的にアッサンブラージュ(ブレンド)することで、バランスの取れた、上質なワインを造ります。
|| 商品名
|| テイスティングコメント
事実、ワイン醸造に於いて使用される大部分の酵母(人工のもの、天然のもの両方)は低温発酵には不適なタイプが多いのが現状です。仮に発酵が進んだとしても、満足のいく味わいにならなかったり、アルコール度がワインとして一般的な水準に達しなかったり、と満足な結果が得られない状況でした。
仮に、もし10度以下の低温下で完璧なワイン醸造のプロセスを進めることができれば、その白ワインは画期的な商品となるはずである、とマーティ氏は漠然と考えていました。
しかし、彼の知る限り、ワイン醸造の分野では低温に耐えつつアルコール度を標準的な13度前後まで上げられ、かつ高品質なワインを造ることができる酵母がなく、このアイディアは空想、絵には描けても実在しない「キメラ」であると考え、それ以上の探求はしていませんでした。
そして日本酒の作り方について説明をうけたとき、マーティ氏は心の底から驚いたのでした。それは、日本酒造りが、これまで彼が知っていたあらゆる可能性の範囲外にあったためです。
発酵温度は5度以下で進む段階があるという事、また蒸留などのプロセスを経るわけでもなく、酵母の力のみでアルコール度20度近辺、ワインでは到達できない度数まで到達できること、などなど。彼のイメージをはるかに超える世界を知ったことで、かつて漠然と思い描いていた、低温発酵ワインの製品化というプロジェクトが、突如具現化してきたのでした。
日本酒の醸造についてもっとデータをみたい、比較して検証したい、と考えるようになったマーティ氏。しかし、果実から造るワインと、お米から作る日本酒では異なる点も多く、外国人のマーティ氏にとって困難を伴いましたが、彼は熱心に学び続けました。
その彼の熱意にこたえてくれたのが、「獺祭」で有名な旭酒造の桜井博志社長(現在は会長)でした。「獺祭」を飲み感銘を受けていたマーティ氏は、この申し出をとても喜びました。桜井社長から多くのアドバイスを受け、自身のプロジェクトの骨子となる醸造プランを造ることができたのです。この時は醸造プロセスの情報だけでなく、多くの数値データまで見せていただき、日本酒酵母を応用した際の様々な疑問点が次々と解決していくようでした。また、桜井氏がかつてチャレンジした、ワイン酵母での日本酒造りにまつわるエピソードを聞くこともでき、非常に盛り上がった一夜でした。その時の助言から、多くの酵母の中でも比較的安定していて低温発酵に向いている7号酵母(真澄酵母)を使うという案が定まりました。
「ソーヴィニョン・ブラン種本来の香りは、温度上昇で揮発しやすい性質を持っている。 低温発酵をすることで、ソーヴィニョン・ブラン種の白ワインをよりアロマティックに 仕上がることができるのでは、と考えた」
発酵は常に10度以下で行い、一時は5度という、ワインではおよそ考えられない低温下で発酵を行います。その分、通常のワイン造りに比べとても長くかかりました。他のワインが発酵を終えても、この日本酒酵母のタンクだけは未完了でした。既に海外へ出る予定が入っていたマーティ氏は、泣く泣く経過の観察をスタッフにゆだね、チリを発ちました。
アメリカ、ヨーロッパ、中国、日本・・・と回る旅程の中、仕上がりの知らせを聞いたのは、奇しくも東京へ滞在していた時でした。セラーで定期チェックを行っていたスタッフから、「発酵が完了した」と知らせを受けたのです。帰国して興奮しながらそのワインをテイスティングしたマーティ氏。そこには、想像していた以上に、全く新しいソーヴィニョン・ブランのワインが誕生していたのでした。出来立てのころは一般的に言われるハーブの香り、夏草の香り、といった青い香りは少なく、白桃や白い花を思わせる芳醇な香り、そして、日本で飲んだ大吟醸酒の中に見出した、ローズペダルのアロマが感じられました。味わいもユニークでした。
「切れのある酸、シャープな辛口」というワインが多いソーヴィニョン・ブランですが、むしろその対極にあるような、ボリューム感のある、クリーミーで厚みのある味わいでした。この味わいは、日本酒酵母の影響が強く出たおかげではないか、とマーティ氏は考えています。
こうして、マーティ氏が長い間心に留めていたひそかなプロジェクトが実現したのでした。日本酒の存在を知ってから取り組み始め、実に7年にわたる多くの困難を乗り越えて、ようやく完成したのです。
ソーヴィニヨン・ブランの柑橘のアロマを楽しみ、その果実味を味わい、そして口内に長く留まる吟醸の香りに酔いしれる。この作品は、グローバル品種のひとつであるソーヴィニヨン・ブランの特徴を生かしながらも、日本酒の酵母による例外的な長期低温発酵がもたらした柔らかさを併せ持っている。
口に含んだ瞬間に感じるテクスチャーは、ワインというより日本酒のそれで、なおかつ舌の上に残るアフターにも不思議な吟醸香が感受できる。この斬新なワインは、あらゆる和食にマリアージュするだろう。ワインと合わせるのが難しい鮨や刺身、そしてもちろん家庭料理にも。和食だけでなく、魚のカルパッチョなどにも合うに違いない。
パスカル・マーティ氏の情熱、その作品に共感した亜樹直氏は、今回このワインの名称、ラベルデザインのコンセプト立案にも名乗り出てくれました。
漫画、神の雫の主人公がワインを口にしてイメージを描き出す、あの光景そのままに、美しい詩が書き下ろされ、この静謐なイメージをもとに、今回の「ぎんの雫」が生まれたのです。
ぎんとは、吟醸のぎんと、ワインの表現に使われる銀世界のイメージを二重に表しています。もう一つの名称である goutte d'argent とは、ぎんの雫を銀の雫 としたときのフランス語での直訳です。
詩の静謐でピュアなイメージを表現するために、控えめに輝く特殊な紙が採用されました。ラベル上部はチリの自然を象徴する、アンデス山脈の稜線を模してカットされます。また、ラベルの左右には、チリの国土の境界線を意味するラインが描かれています。その線は、ちょうどワイン産地として知られるセントラル・ヴァレーを中心とした地域を含み、左側は太平洋側、右側にはアンデス山脈川のラインを、それぞれ表現しています。ラベル上部には日本語で「ぎんの雫」と書かれ、その下には滴の中に「雫」の漢字 をかたどった意匠が、日本古来の紋のようにラベルにアクセントを与えます。そのシンボルの下には、フランス語で「GOUTTE D’ARGENT」という銘とともに、フランス原産のブドウ品種「Sauvignon Blanc」と、本商品の特徴である「Sake yeast fermented」という文字が記されています。
仕上がったラベルを見たマーティ氏は、とても満足げな表情でした。
「このラベルを見て私はとても驚き、また感謝しました。まず、無駄なものがない簡素な美しさに驚き、同時にこの名前を見て、私がボルドーで最初に作った白ワインをふと思い出しました。それはシャトー・ムートン・ロートシルトで生まれたAile d'Argent (エール・ダルジャン)です。私の節目となる大切なワイン二つが、偶然にも似通った名前になったことをとても嬉しく思います。」
明るいレモンイエローの色調。まずグラスからすがすがしいハーブ、夏ミカン、スダチ、レモンといった柑橘のアロマ、続いてエルダーフラワーやハイビスカス、ローズペタル、ヒヤシンスのブーケ、リンゴや白桃を思わせる甘みのある香りが奥に僅かに感じられる。 口に含むと非常に緻密なテクスチュア。丸みのある綺麗な酸味が、うまみを伴いながらジワリと口の中に広がっていく。余韻が非常に長く、柑橘や花のアロマをとどめたまま、ワインはすっと体になじむようにのどを流れる。 魚介類だけでなく、野菜料理などとも相性が良い。 実際に合わせたところ、野菜料理全般、刺身や貝などを含む魚介料理全般とも相性が良かった。和食全般とは非常に相性がよく、日本酒感覚で万能使いできる。また、白ワインにしてはとてもボリュームがあるタイプで、意外な所では羊肉とも相性が良い。ハーブを用いて、香りの強い食材を調理したようなエスニック料理とも楽しめる、懐の深い、使い勝手のよいタイプ。
五大シャトー「ムートン」、カリフォルニアの「オーパス・ワン」の後に、チリを代表するプレミアムワインの「アルマヴィーヴァ」を手掛けた時、彼はチリの類まれなテロワールを知りました。しかし、現状の大規模生産では、そのポテンシャルを引き出すだけのワイン造りが出来ない事にも気づいていました。彼の胸の内には、自身のワイナリーを造りたいという思いが芽生えたのもこの頃です。
2003年、アルマヴィーヴァでの自身の役割を果たした、との思いから、彼は自身のワイナリー設立に向け、動き始めます。コンサルタントとして世界中を回りつつ、ワイナリー設立準備を進めました。
「あのムートン、オーパス・ワン、アルマヴィーヴァを手掛けたパスカル・マーティ氏が新ブランドを立ち上げる」
噂を耳にし、ワイン業界内外で彼の夢に共感した人が続出しました。例えば「ロード・オブ・ザ・リング」で有名な映画会社ニューライン・シネマ(現ワーナーグループ)のマイケル・リン氏や、元バロン・フィリップ・ロッチルド社の社長で、現在アメリカで輸入会社を経営するオリヴィエ・ルブレ氏もバックアップを申し出ました。
多くの人々の夢も乗せて、2008年、満を持してマーティ氏自らのワイナリー「ディオニソス・ワインズ」を設立。2013年、ヴィニャ・マーティと自身の名を冠したワイナリーへと変更、生涯をかけたプロジェクトとしての意気込みを表現するに至ります。
カサ・デル・セロとは、直訳すれば「山に佇む小屋」ですが、ここではマーティ氏の自宅兼醸造所を指します。チリ最高峰のワインの一つ「クロ・デ・ファ」を生む畑が広がり、目の前にはコラソン・デル・インディオと呼ばれる大岩を抱いたアンデス山脈がそびえる名勝地。そこに建つパスカル・マーティ氏の住処が、ラベルに描かれています。
ヴィニャ・マーティの入り口となるこのレンジに自身の自宅兼醸造所をあしらったのは、「多くの人に飲まれる最も低い価格のワインのクオリティこそが、ワイン造りで最も難しいが、最も大切である」という考えによるもの。その自負あっての選択です。
一際目を引くシンプルなラベル、この「LOVE」シリーズは、ヴィニャ・マーティの中で最も親しみやすいアッサンブラージュ(ブレンド)ワインです。
ムートン、オーパス・ワン、アルマヴィーヴァ。世界最高峰のワインを手掛けるプレッシャーから離れ、自由にワイン造りができるようになった時、彼はまず自分のワインをもっと多くの人たちに飲んでほしいと考えました。LOVE という世界で普遍的な名前をあしらったこのワインで、日々の暮らしの中のワンシーンに花を添えてほしい、喜びを味わってほしい、そんな願いから生まれたのがこのワインでした。
新世界の土地で育ったブドウと、旧世界の伝統的醸造法のハイブリッドともいえるワイン。
寒暖差が強く、乾燥した土地に自根栽培で育つブドウは、野趣溢れる味わいでどれも個性的な特徴を持ちますが、そのブドウを伝統的な醸造法を用いて、時にフランスから取り寄せたフレンチオーク樽を使いながら、融合させ生み出された、ヴィニャ・マーティのレゼルヴァクラス。
堅牢なボディと、品種の個性を捉えた芳醇な味わい。品質を追い求めた伝統製法が生み出すハンドクラフトワイン。
マリポーザ・アレグレのコンセプトは、テロワールを際立たせ、その土壌・ブドウ品種の個性を引き出す伝統的ワイン造りを行うことです。フランスではフィロキセラ禍により、ほぼ途絶えてしまった自根のブドウが、チリにはまだ存在します。パスカル・マーティ氏のフランス式伝統製法と、チリの優れたテロワールを結びつけたマリポーザ・アレグレは、まさにハンドクラフト的なワインと言えます。個々の畑、ブドウ、年によってもその状態に合わせて最適な醸造方法をとることでワインには、そのテロワールの個性が生き生きと反映されます。伝統的な手作業のおかげで、オートメーションでは得られない、複雑さ、凝縮味を感じることができるでしょう。
雄大なアンデスの伝承に捧げるボルドー伝統のアッサンブラージュが生み出す。
コラゾン・デル・インディオは、プレミアム・ブレンデッド・ワインに位置付けられる上位キュヴェです。ヴィニャ・マーティのセラーからアンデス山脈を見上げると、その稜線は、ちょうど人が仰向けに寝たようなシルエットを描きます。頭、額、鼻、あご・・・そしてちょうど胸元の付近に、ハート型の大岩が見えます。この岩は、夕日を受けたときに燃えるように照り返すので、昔から住む現地の人々は、この岩を「コラソン・デル・インディオ」、「インディオの心臓(ハート)」と呼びます。この岩には、現地のインディオに伝わる伝説があります。
カラクは、ヴィニャ・マーティのプレミアムレンジの中では比較的新しいワインで、2012年がファーストヴィンテージです。
アイコンワイン「クロ・デ・ファ」を造る際、マーティ氏は選別した原酒をアッサンブラージュしますが、その後数回テイスティングを行います。この過程で、惜しくもファーストワイン「クロ・デ・ファ」のレベルに達しないと判断された樽のものが、カラクとして販売されます。
モノ・セパージュ最高峰ワイン。
SERシリーズは、醸造家パスカル・マーティ氏が、個々のブドウ品種に最も適したテロワールで栽培されたブドウを使い、単一品種ワインの最高峰として手掛けるワインです。ブドウ品種はそれぞれ適した地に植えられ最高のクオリティを発揮します。
その果実から生み出されたワイン「SER」は、チリと言う枠を超え、個々のブドウ品種のもつパフォーマンスを最大限味わうことができる、珠玉のモノ・セパージュワインシリーズです。
唯一無二の個性を持つ最上級キュヴェ。
ヴィニャ・マーティの畑の中でも、最も素晴らしいテロワールを持つ、アルト・マイポのDOピルケにある、「クロ・デ・ファ」から生まれます。
清酒7号酵母の力で新境地を開いた革新的白ワイン。
ムートン、オーパス・ワン醸造家パスカル・マーティ氏の構想から7年以上。あの「獺祭」生みの親、旭酒造の桜井博志氏、そして「神の雫」でフランスの芸術文化勲章を受けた原作者の亜樹直氏協力のもと、完成した世界初の試み。
「パレットに赤の素材を並べたところを想像してください。赤、と一口にいっても、本当に多様な種類があるでしょう。ワインも同じです。同じ土壌は一つとしてありません。たとえカベルネ100%でも、この樽と、その隣の樽の味は異なるのです。様々な原酒を素材として、1本の作品として仕上げるのが醸造家の役割です。単一品種100%のワインが世界で流行していますが、たとえモノ・セパージュのワインであっても、そこに醸造家が関わらなければ決して優れたワインにはならないのです。」
ヴィニャ・マーティでは、それぞれの適地を見出した上でブドウ栽培を行います。カベルネならば水はけがよい土壌、メルロであれば冷涼な空気と粘土質土壌。
1997年からアルマヴィーヴァを手掛けるために、彼はまず徹底してチリの土壌調査を行いました。この経験があるからこそ、彼はチリのテロワールを最もよく知る人物の一人なのです。
チリの特徴に合わせた畑仕事ができるのも、マーティ氏ならではです。
ヴィニャ・マーティでは、それぞれの土地の特徴、つまりフランス語でいう「テロワール」にあわせて、ブドウ品種を栽培しています。フランスでは長い伝統の中で、自然にその土地に合うブドウが受け継がれてきました。対して、ブドウ栽培の歴史が浅いチリでは、人々は、好みだったり、商業的な意図に合わせ、思い思いにブドウ品種を選ぶ事が少なくありません。
残念ながら、土壌との相性を無視してしまうと良い結果を得ることはできない、という事は周知の事実です。つまり、チリでは、いまだその秀逸なポテンシャルを活かしきれていない部分が存在するのです。
ヴィニャ・マーティでは、チリのテロワールを深く理解するマーティ氏の知見に基づきブドウ栽培がおこなわれています。ワイン造りにおいても、各畑の個性を引き出すという点にこだわります。大きなタンクで大量生産するのではなく、畑ごと異なるタンク・樽でワインを造り、それを最終的にアッサンブラージュ(ブレンド)することで、バランスの取れた、上質なワインを造ります。
750mlサイズのお好みのワインを入れることが出来ます。
※ギフトボックスと一緒にワインを複数本、お買い求め頂いたは、どちらの商品をギフトボックスに入れるか、注文時に「備考欄」にてご連絡ください。
1本用
2本用
袋の色はクールグレーのみとなります。
ワイン1本、もしくは1本用ギフトボックスを入れることが出来ます。
「もっと気軽にワインを持ち運びたい」そんな皆様の声にお応えし、ワインショップソムリエロゴ入りワイン用袋をご用意しました。
1本用・2本用・3本用の3種取り揃えておりますので用途に合わせてお選びくださいませ。
ぎんの雫 グット・ダルジャン・ ソーヴィニョン・ブラン
ヴィニャ・マーティ
チリ
明るいレモンイエローの色調。まずグラスからすがすがしいハーブ、夏ミカン、スダチ、レモンといった柑橘のアロマ、続いてエルダーフラワーやハイビスカス、ローズペタル、ヒヤシンスのブーケ、リンゴや白桃を思わせる甘みのある香りが奥に僅かに感じられる。
口に含むと非常に緻密なテクスチュア。丸みのある綺麗な酸味が、うまみを伴いながらジワリと口の中に広がっていく。余韻が非常に長く、柑橘や花のアロマをとどめたまま、ワインはすっと体になじむようにのどを流れる。
魚介類だけでなく、野菜料理などとも相性が良い。
実際に合わせたところ、野菜料理全般、刺身や貝などを含む魚介料理全般とも相性が良かった。和食全般とは非常に相性がよく、日本酒感覚で万能使いできる。
また、白ワインにしてはとてもボリュームがあるタイプで、意外な所では羊肉とも相性が良い。ハーブを用いて、香りの強い食材を調理したようなエスニック料理とも楽しめる、懐の深い、使い勝手のよいタイプ。
ワイン名(原語) | ぎんの雫 グット・ダルジャン・ ソーヴィニョン・ブラン (GIN NO SHIZUKU GOUTTE D'ARGENT SAUVIGNON BLANC) |
生産者 | ヴィニャ・マーティ(VINA MARTY) |
原産国・地域 | チリ・レイダ・ヴァレー |
ヴィンテージ | 2020年 |
ぶどう品種(栽培比率) | ソーヴィニョン・ブラン |
タイプ | 白ワイン |
内容量 | 750ml |
ご注意 | 開封後は要冷蔵の上お早めにお飲みください。 |
保存方法 | 要冷蔵 18℃以下 |
未成年者の飲酒は法律で禁じられています。 | |
特徴: 日本酒の醸造に用いる清酒7号酵母を使用し、10度以下の超低温で発酵させ、ブドウ本来のアロマを十二分に表現した、新しいタイプのワイン。 |
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