基本的に「自然な状態でブドウを栽培、醸造を経て造られたワイン」とされていて、生産者たちは「その国や土地の味わいを大切にしたい」と考えながら、ナチュラルな味わいになるよう心掛けて造っています。
しかし、自然派ワインとひと口に言っても、実は完璧な定義は存在していません。
「ヴァン・ナチュール」「ビオワイン」「オーガニックワイン」など、さまざまな呼ばれ方がありますが、どう造られたらそれらに該当するのかは曖昧です。
このことについては、ワイン業界全体の問題になっています。
とはいえ、難しいことを考えていてもワイン選びは進みません。
自然派ワインを選ぶ際は「天然酵母で発酵させて、亜硫酸(ありゅうさん)という物質が極少量か、無添加で造られたワイン」という基準で判断すると良いでしょう。
また、ワインに使用するブドウの栽培環境が「オーガニック栽培」「リュット・レゾネ(減農薬)」「ビオディナミ」の場合、オーガニックワインと呼ばれることがあります。
そのため、ワイン選びの際にブドウの栽培環境を確認しておくと分かりやすいかもしれません。
ちなみに、EUではオーガニックワインの認証を得るための規定が存在しており、それらをクリアしたワインのボトルには「ユーロリーフ」というマークのシールが貼られています。
そのほか、「テラ・ヴィティス」「デメテル、エコセール」「AB(Agriculture Biologique)」「ISO14001」など、厳しい規定の認証を取得しているワインも、自然派ワインと呼んでいいでしょう。
このように、自然派ワインは「どこまでが自然派ワインなのか?」という線引きがとても難しいカテゴリのワインです。
そのため上に書いたように、「生産者のワイン造りのスタイル」や「認証を受けているか否か」で判断していくと選びやすくなるでしょう。
味の特徴
自然派ワインはひと言で表すのが難しいほど、さまざまな味わいを持っています。その理由のひとつに、自然派ワインの生産者たちは「その品種の味の特徴を出す」ことよりも「その土地の味わいを出すこと」を心掛けているからです。
つまり、自然派ワインのカテゴリにある「カベルネ・ソーヴィニヨン」であっても、そのワインがフランスのボルドーなのかオレゴン州なのか、それから生産者が誰なのかによって全く味わいの特徴が変わるのです。
ただ、一般的には「できるだけ亜硫酸を使わず、清澄や濾過をしないピュアな味わい」を目指して造られます。そのため、色合いがやや淡く、香りはチャーミングで「ピュアな果実感」「発酵由来のヨーグルト」「アカシア」などを感じられるのです。
渋みや酸なども穏やかで、すっと喉奥を通り抜けていくほど繊細。柔らかな“水”のような美しい味わいも魅力と言えるでしょう。
また、白ワインの場合は果皮を一緒に漬込んでオレンジ色に醸す「オレンジワイン」が多く見られます。オレンジワインは「白い花やコンポートのような甘い香り」と「ほのかな果皮由来の渋み」が特徴の、力強さと繊細さを兼ね備えた上品な印象のワインです。
以前まで自然派ワインは、硫黄のような香りが強かったり、「セメダイン、腐敗臭、酸化したバター、獣肉、強烈な酸」など、悪い印象を与える味わいのものがいくつか見受けられました。
そういったワインを飲んだ方の中には、「自然派ワインが苦手」だと思っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、近年の生産者たちは、ブドウ栽培からワイン醸造にいたるまで徹底した管理のもとで自然派ワインを造っています。
そのため、以前のような劣化した風味ではなく、ピュアで個性的かつ洗練された味わいを生み出すことに成功しているのです。
中には、一般的なワインと遜色のない、品種個性を出すワインを生み出す生産者もいます。
アロマホイールや教科書に掲載されているような“定番の味”ではなく、さまざまな香りや味わいが体験できると評判です。
これこそ、自然派ワインを選ぶ楽しさと言えるでしょう。