ですが実はグランヴァンという言葉は、格付けでもカテゴリでも認証機関が定めた規定でもありません。
生産者が自由に使用することができる言葉のため、中には高品質ではないワインのラベルに“Grand Vin”と記載されていることもあります。
特に、ボルドーワインにこの言葉が多く記載されていますが、「格付け1級ワイン」とは大きく異なりますので、グランヴァンという言葉だけを頼りにワインを探す事はおすすめ出来かねるのです。
そこで、ここでは真にグランヴァンと呼ぶに相応しい、以下のワインについて詳しく紹介させていただきたいと思います。
・「ボルドー」の格付け1級シャトー
・「ブルゴーニュ」のグラン・クリュ
・シャンパーニュ地方のグラン・クリュ格付けのブドウを使用した「高級シャンパーニュ」
グランヴァンの特徴をひと言で表現するのは難しいのですが、やはりその言葉のとおり「偉大なワイン」と言えるかどうかが重要な点になってくるでしょう。
味の特徴
前述した「真にグランヴァンと呼べるワイン」の味わいの特徴ですが、全体的に非常にバランスが整っているということに尽きるでしょう。赤ワインであれば、複雑性のある風味がありながら、酸も穏やかでキツ過ぎるということはなく、渋みもまろやかで、ベルベットのようなクオリティのものが多い印象です。
もちろん、これらは「品種、醸造法、熟成期間」によって変わります。
ですが少なくとも「果実味、発酵由来の香り、樽由来の香り、渋みや酸のどれかが異様に突出している」というような、バランスの崩れたワインはありません。
白ワインのグランヴァンについても、非常にクリーンな味わいであることは前提ですが、「果実の香り、火打石の香り、ナッツ、ハチミツ、アンズ、白桃、キノコ、白トリュフ」など、数多くの香りの要素を感じることができます。
ものによっては「オイリー」だったり「トマトの缶詰」「マッチ」などさまざまな風味を感じられるものもあるでしょう。
赤ワインのような酸に丸みがあるものもありますが、白ワインの熟成に欠かすことができないしっかりとした酸を残しているものが多く、そういった白では引き締まった緊張感のある味わいを楽しめます。
まとめると、グランヴァンと呼べるクオリティのワインは、一般的なカジュアルワインと比べて「香りの要素が多く複雑性に富んでいながら、繊細でエレガント」であり、「骨格のしっかりとした味わい」があります。
普通のワインでは味わえない、ワンランクもツーランクの上の品質を楽しめるワインこそが、グランヴァンだと言えるでしょう。
ボルドーのグランヴァン
まず、ボルドーの「メドック地区」と「サンテミリオン地区」の格付け1級ワインは、間違いなくグランヴァンと呼んでいいでしょう。ボルドーの主なワイン産地は左岸と右岸に分かれており、中でもメドック地区は左岸を代表する銘醸地です。
左岸のメドック地区には、「サン・テステフ」「ポイヤック」「サン・ジュリアン」「マルゴー」といった世界的にも有名な村が点在しています。
この地に位置するシャトーの多くが、格付け5級から1級を獲得しており、まさに世界で最も有名なワイン産地と言っても過言ではありません。
右岸のサンテミリオン地区もまた、有名なワイン産地として知られています。
サンテミリオン地区では「プルミエ・グランクリュ・クラッセ」「グラン・クリュ・クラッセ」の二つの格付けがあります。
中でも「プルミエ・グランクリュ・クラッセ」は、特に優れたワインを選ぶ格付けとなっており、そこからさらにA級・B級へと細分化されています。
「プルミエ・グランクリュ・クラッセA」はサンテミリオン最高峰のワインとなりますので、グランヴァンと呼ぶに相応しい品質であることは間違いないでしょう。
このように、ボルドー地区の由緒ある格付けにおいて高い評価をされたワインはすべてグランヴァンといっても過言ではありません。
ですが、その中でも下記の「ボルドー五大シャトー」こそ、まさにグランヴァンの代表格と言えるでしょう。
・「シャトー・ラトゥール」
安定した味わいのワインを生み出すシャトーと知られており、力強く熟成向きの味わいが特徴的。
・「シャトー・ラフィット・ロスチャイルド」
非常に気品のあるエレガントな味わい。
・「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」
力強さもありながら、繊細さとエレガントさも兼ね備えたバランスの良い味わいが特徴的。
・「シャトー・マルゴー」
五大シャトーの中でもっとも女性的とされていて、非常に丸みのあるエレガントでふくよかな味わいが楽しめるワイン。
・「シャトー・オー・ブリオン」
ボディが厚くタイトな印象が特徴的。
これらのワインはどれも「カベルネ・ソーヴィニヨン」を使用しています。
基本は「カシス、ブラックベリー、ダークチェリー」といった香りですが、ブレンドの比率やそれぞれのシャトーによって味わいの特徴は変わっていきます。
凝縮した果実味と厚みを感じさせる力強さを持ちつつ、エレガントでしなやか。さらに、緻密な渋みと酸も楽しめるでしょう。
ブルゴーニュのグランヴァン
ブルゴーニュ地方では、「AOCグラン・クリュ」をはじめ「AOCプルミエ・クリュ」のカテゴリに属する「高価で長期熟成されたワイン」が、グランヴァンと呼ばれています。もしくは「プルミエ・クリュ」や「グラン・クリュ」などの「最高の区画から収穫されたブドウを使用したワイン」と言ったほうがいいかもしれません。
特に、「コートドール」と呼ばれる産地のワインはとても素晴らしく、世界最高峰の赤と白のワインの大産地として有名です。
では「ブルゴーニュのグランヴァン」には、どのような特徴があるのでしょうか。
まず赤ワインですが、基本的に「ピノ・ノワール」から造られており、「ラズベリー、イチゴ、スミレ」といった風味がベース。
熟成を経て、「落ち葉、紅茶、キノコ、鉛筆の芯、プラム」など複雑性があらわれます。
高価格帯の赤ワインになると、色合いがやや枯れた複雑で旨味が凝縮した哲学的な味わいのものが多い傾向です。
一方、白ワインは「シャルドネ」のみを使っているものが多く、樽が使用されています。
「スイカズラなどの白い花、トロピカルフルーツ、ナッツ、柑橘、白桃、果実のコンポート」など、甘い風味を一瞬感じるでしょう。
石灰質土壌がもたらす火打石に、やや硫黄を感じさせる還元的なタッチもあります。
さらにその奥には、樽由来のポリフェノールやミネラル感と引き締まった酸が、複雑な風味をしっかりとまとめておりバランスの良い味わいが特徴です。
このように、ブルゴーニュのグランヴァンは一般的なワインと比較すると、「より複雑で奥行きのある哲学的な味わい」だと言えるでしょう。